「野火」や「レイテ戦記」で知られる大岡昇平の小説のドラマ化。放映当時、同時期に松竹で野村芳太郎監督が映画化していて、映画とテレビで競作になったことで話題になったものである。被害者の妹で被疑者の恋人である女性をどちらも大竹しのぶが扮していたのも、話題だった。
NHKドラマの方は、映画よりも弁護士の人となりが詳しく描かれていた。敏腕ではあるが、より人間的な親しみを感じたのはこちらの方だった。映画が裁判の行方や事件の真相の究明に主眼を置いていたのとは対照に、こちらは弁護士の考え方を克明に追うというスタンスだったように思う。それは丹波哲郎と若山富三郎の俳優の資質の違いもあると思う。