長与善郎の原作。かなり前に原作を読んだことがあるが、正直馴染めないものがあった。何故これらのキリスト教徒は頑なのか、信徒を裏切る神父はかくもあっさりと転向するのかが、わからなかったからだ。
この渋谷実監督作品はその存在を文献的には知っていた。少し前にCSの衛星劇場で放映されてBDにも落として録画したのだが、スクリーンでも観てみたいと思っていた。その機会はすぐに訪れた。阿佐ヶ谷ラピュタが香川京子特集の1本として上映、行けたのである。本当は鋳物師の青年(岡田英次)と信徒の娘モニカ(香川京子)の悲劇なのだろうが、どうも転向する神父(滝沢修)の存在が大きくなってしまった作品になってしまっている。物語からすれば敵役なのだが、良心の呵責にさいなまれ、その後も生き地獄を味わうであろう、この人物が主人公の座を奪ったような感じだ。ポルトガル人にしては日本語がうますぎるのだが、まあそこら辺は目をつむるにしても、修行したはずの神父が何故こうもあっさりと転んでしまうのか、そこらはこの映画を観ても得心がいかない。どこか、中途半端な印象で、この監督の作品にありがちな、欲求不満を覚えさせる結果にはなってしまっている。