この映画はジョン・フォード監督晩年の作品。巷間の評判はあまり芳しくはない。少々説明的で構成に不満を覚えるものの、フォード監督の歴史観というか、そういうものを披歴してくれてたいへん興味深い作品であると思う。
まず、先住民(かつてはアメリカ・インディアンと呼ばれていたが、今は使われていない)が敵役で白人がヒーローという図式は本作では完全に崩れている。先住民は白人から裏切られて失望している。差別蔑視も強く感じている。これはまず本当のことであろう。
一方、白人も一枚岩かというとそうではない。まず古参の曹長はポーランドの移民で、母国でコサックに酷い目にあわされている。彼は先住民の境遇がある程度理解できている。「コサックではない、あんなふうになりたくない」と何回も言う。また最後に出てくる砦の司令官はドイツ系でプロシアでも職業軍人であった人。興奮するとドイツ語を発する。逆に命令に忠実すぎて融通がきかない。そう白人も英語を母国語とするアングロ系ばかりではなく、いろいろと混ざったりしているのである。
アメリカの悩みを西部劇に体現させてくれた。したがって、ここでは颯爽としたジョン・ウェインのようなガンマンは登場しない。リチャード・ウィードマークの主人公はいつも悩みが深いように見える。どうもここらが西部劇でも地味になってしまって、逆に恥部を見せつけられたような気分になるのかもしれない。これがやがて、「ソルジャー・ブルー」といったもっとリアルで激しいものに変容していくのだと理解している。
いや1964年というとイタリア製の西部劇が出てきて、きれいごとばかりの本家よりももっと迫真なものになっていた。ちょうど転換点だったのだろうと思う。