実の38年ぶりにスクリーンで観た。今年の「午前十時の映画祭」の1本に加えられて観ることができた。こういう作品もデジタル化されたのかと驚くと同時に喜ばしい。
台詞なし、字幕も少なめというかなり実験的な映画ではある。淡々と進むのだが、後半に長男が急病で亡くなってしまう辺りは、山場だろう。自給自足だが、地主に作物を納めて地代に替えているのはわかる。しかし、この夫婦が何故こんな生活をしているのかは、一切説明はない。単なる変わり者なのか、しかし、そうでもなさそうだ。本土ではテレビなどが売られていて、ブラウン管に映るものを子供たちは不思議そうに眺めたりする。兄弟が捕まえた鯛を町で売って、買い物したりカレーライスを食堂で取ったりするのはやはり嬉しそうである。子供も両親を理解して、寄り添い手伝ったりする姿は何か懐かしいものを覚える。
キャストは4人。他は地元の劇団や素人を配して、低予算で仕上げて、興行も良かったという。倒産寸前の近代映画協会を立て直しのきっかけを作った作品である。