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コルンゴルト/ブリテン:ヴァイオリン協奏曲~ヴィルデ・フラング

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①コルンゴルド:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35
②ブリテン:ヴァイオリン協奏曲 作品15
ヴィルデ・フラング(V) ジェイムズガフィガン指揮 フランクフルト放送交響楽団

 全くヴァイオリニストのことは知らずにただ収録されている作品に興味が湧いたので購入した盤。①はハイフェッツを始め、その時代のヴィルトーゾが取り上げてきたもの。コルンゴルドが音楽を提供したハリウッドの映画作品から転用された素材で構成されたもの。冒頭は「乞食王子」のタイトルバックで始まる。とにかく華やいだ音楽ではる。ムターに師事したこの若い女流奏者はいともたやすく弾きこなす。②の方は初演の奏者がたやすく弾いたのが気に入らずに改訂した作品ということで有名。ブリテンの性格の悪さみたいものを反映したいわくつきの作品。これも難なくこの奏者は弾くのはやはり時代の進歩とみるべきか。

プッチーニ:『三部作』(コヴェントガーデン)

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歌劇《外套》
ミケーレ:ルーチョ・ガッロ
ジョルジェッタ:エファ=マリア・ウェストブローク
ルイージ:アレクサンドルス・アントネンコ

歌劇《修道女アンジェリカ》
アンジェリカ:エルモネラ・ヤオ
公爵夫人:アンナ・ラーション

歌劇《ジャンニ・スキッキ》
ジャンニ・スキッキ:ルーチョ・ガッロ
リヌッチョ:フランチェスコ・デムーロ
ラウレッタ:エカテリーナ・シューリナ

演出:リチャード・ジョーンズ
指揮:アントニオ・パッパーノ/コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団・合唱団

収録:2011年9月12日 ロイヤル・オペラハウスにおけるライヴ収録

>英国ロイヤル・オペラの2011/12年シーズン・オープニングを飾ったプッチーニの『三部作』。音楽監督アントニオ・パッパーノが、ガッロ、ウェストブローク、ヤオ、そして新鋭デムーロといった豪華かつ実力溢れる歌手陣を率いて、この上なく充実した演奏を聴かせました。機知に富み、ブラックな味付けが利いた2007年のプロダクション《ジャンニ・スキッキ》に他の2作が加わり、リチャード・ジョーンズ演出の独創性溢れる『三部作』がここに完結!
(日本コロムビア)

 映画風に表現すれば、3つのオムニバスものである。劇的で陰惨な「外套」、悲劇的だがどこか敬虔な雰囲気の「修道女アンジェリカ」、喜劇仕立ての「ジャンニ・スキッキ」。しかもオリジナルの舞台構成は次第に時代を遡っている構成でもある。でもこのプロダクションは現代化しているためにそうした時代の推移は犠牲になっている。
残念ながら歌手陣は未知の人たちばかり。しかし、実力者揃いであることは鑑賞すれば、わかる。 

ランゴー:音楽劇『アンチキリスト』

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● ランゴー:音楽劇『アンチキリスト』

ルシファー/ステーン・ビリエル(バス・バリトン)
神秘の精/アンネ・マーグレーテ・ダール(ソプラノ)
偉大な言葉をしゃべる口/ポウル・エルミング(テノール)
神秘の声/ヘレーネ・ギェリス(メゾ・ソプラノ)
嘘つき/ジョニー・ファン・ホル(テノール)
スカーレットの魔物/ヨン・ケティルソン(テノール)
嫌悪/ヨン・ルンドグレン(バリトン)
偉大な娼婦/カミラ・ニールンド(ソプラノ)
デスポンデンシー/スサネ・レースマーク(メゾ・ソプラノ)
モルテン・スールバレ(語り:神の声)

トマス・ダウスゴー指揮デンマーク国立交響楽団・合唱団


作曲家ランゴーがこの「世界の終わり」についての歌劇を書こうと思い立ったのは、1921年、彼が弱冠27歳の時でした。若い作曲家は自身のメッセージを音楽で完璧に伝えることができると確信していたに違いありません。彼はそのために様々な資料を集め台本を書き「悪の視点によるキリストの受難曲」としての作品を書き上げたのです。しかしデンマーク王立劇場に提出されたこの作品は、「台本に曖昧性が高い」と拒否され、別の台本を調達することができるのなら上演を考慮しようと言われてしまいました。何度か書き直しをしたものの、その2年後に結局のところ劇場からは上演を拒否されてしまうのです。
1936年、ランゴーはこのオペラに再度手を加え、原曲のかなりの部分を省略し、最終的にはオペラではなく「オラトリオ」のような形に落ち着きました。各々の登場人物が一人ずつ登場し、彼らは決して一緒に歌うことはなく、あくまでも単独で主張します。ここに付けられた音楽はまるでリヒャルト・シュトラウスを思わせる重厚な後期ロマン派の響きを持つもので、全体的に不可思議な活気に満ちています。ダウスゴーをはじめとした名手たちによる演奏で、知られざる作品をぜひ味わってみてください。(DACAPO)

 わざわざ音楽劇との表記は何だろうか。歌劇ではないのか、と思ってしまうが、これは意外とオーケストラの役割が大きい。舞台上の搭乗人物は時より歌ったり語ったりはするが、パントマイム的な所作が多い。発売元のコメントにもあるようにオラトリオの部類になるのかもしれない。ランゴーは1893年の生まれというから、その時代にしては保守的な響きの音楽を形作る作曲家なのかなと思う。

 演奏は自国ものを演奏するという矜持もあって、充実している。指揮者とオケはニールセンなんかでもいい演奏を展開してくれた人たちだったかと思う。



シューリヒトのレーガー&悲劇的序曲 ボールトの大フーガ

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①ブラームス:悲劇的序曲
②レーガー:ヒラーの主題による変奏曲とフーガ
カール・シューリヒト指揮 ロンドン交響楽団
録音時期:1964年1月31日(ステレオ)
録音場所:ロンドン、ホーンシー・タウン・ホール
③ベートーヴェン:大フーガ 変ロ長調 Op.133
サー・エイドリアン・ボールト指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
録音時期:1968年8月19日(ステレオ)
録音場所:ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール
 
>ことし2007年に没後40周年を迎えるシューリヒトを記念して、BBC LEGENDSよりまたとないリリース。1963年以来客演指揮者を務めたロンドン響との貴重なライヴは、幅広いレパートリーを誇るなかでもその中心にあったドイツもの。
 シューリヒトは、師レーガーの作品を好んで取り上げていましたが、ヒラー変奏曲もまた「変奏曲の大家」レーガーの代表作で、同じく趣向を凝らした管弦楽法にその魅力があります。全曲40分近くの間、終始いつものように人格をそのまま投影したかのように高潔な音楽で満たされ、悲劇的序曲とともに巨匠の偉容を伝えています。
 カップリングは来年が没後25周年にあたる巨匠ボールトが振った大フーガの弦楽合奏版。かつてIntaglio盤(廃盤)で出ていた有名な演奏が音質改善を施されて嬉しい復活です。
(発売元によるコメント)
 
 BBCの放送音源のアーカイヴズのCD化なのだろう。ボールトによる大フーガは他のレーベルから出ていたらしいが、今回初めて知るもの。シューリヒトの2曲に比べてやや音は悪い。シューリヒトの方はボールトのものよりも4年古いのに、かなりいい音に聴こえる。
 
 まず、このアルバムの一番の眼目はレーガーの変奏曲。彼はいろいろな人の作品を主題にした変奏曲を書いているが、このヒラーによるものはあまり録音もないし、演奏される頻度も高くないのではないか。オーケストラの編成はかなり大きいようである。最初の主題から似てもにつかないものに変容されている風ではある。シューリヒトにとってはレーガーは師匠筋の人というからその薫陶をそのままに指揮しているのだろうか。他の指揮者のものも聴いてみたい。実は他に2種の録音を見つけてあるので、そちらにも挑戦したいと思っている。

『エレクトラ』全曲 クプファー演出、アバド&ウィーン国立歌劇場

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R.シュトラウス:楽劇「エレクトラ」
エヴァ・マルトン(エレクトラ)
ブリギッテ・ファスベンダー(クリテムネストラ)
シェリル・ステューダー(クリソテミス)
ジェームス・キング(エギスト)
フランツ・グルントヘーバー(オレスト)
クラウディオ・アバド指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
演出:ハリー・クプファー  装置:ハンス・シャーファーノッホ 衣装・ラインハルト・ハインリヒ
照明:ロベルト・シュタングル

 まだ、元気溌剌の頃のアバドの姿が見られる映像である。1989年の公演だそうで、音楽もかなり迫力あるものになっていた。ジェイムズ・レヴァインのMETの映像も手許にあるのだが、こちらの方が響きに芯があるように思えた。時間の関係で終わって拍手とカーテンコールのシーンは早送りしたが、どうもブーイングも盛大だったらしい。それほど、問題作だったのかもしれない。英語字幕で少し歌詞の理解がいい加減なのだが、金管の咆哮などは凄いな思った。

悪魔の囁き(内川清一郎・新東宝1955年)

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 新東宝の映画というとどこかエログロのイメージが強い。本作はあまりエロはないが、どことなく不気味なテイストがいい。後のテレビで展開されたサスペンスものの魁みたいな感じである。無線で人を操っていろいろな犯罪をやるというところが目新しい。サイバーテロみたいなところ。また、電車の窓からものを投げるという設定は黒澤明監督の「天国と地獄」の先鞭を行っている。ただ、どこかサスペンスとしては中途半端で真犯人がわかり、最後は自滅するのだが、誘拐された幼稚園児たちはどうなっているのか、また犯人の手下たちはどうなのか、さっぱりわからないまま終わってしまっている。そこらもう少し整理すると良かったと思う。

 内川清一郎監督はかつて溝口健二監督が「西鶴一代女」を撮った時に助監督としてついていた人。あまりに溝口監督が無理難題を言うので、ついに切れて週刊誌に暴露するといって、途中で東京へ帰ってしまうというくだりが新藤兼人監督の「ある映画監督」の中に出てくる。溝口監督の狼狽ぶりがかなり強い印象に残るのだが、ご本人の監督作品はこれが初めて観る。なかなか凝った映像を見せてくれるし、演出もオーソドックスな感じはした。
(C)国際放映

シマノフスキ:歌劇「ロジェ王」(コヴェントガーデン公演映像)

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【演奏】
ロジェ王:シチリア国王…マリウシュ・クヴィエチェン(バリトン)
ロクサーナ:ロジェ王の妻…ジョージア・ジャーマン(ソプラノ)
エドリシ:ロジェ王の側近の賢者…キム・ベグリー(テノール)
羊飼い:美しい若者…セミール・ピルギュ(テノール)
大司教…アラン・ユーイング(バス)
女助祭…アグネス・ツヴィエルコ(アルト)
コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団(合唱指揮…レナート・バルサドンナ)
アントニオ・パッパーノ(指揮)
カスパー・ホルテン(演出)
ステフェン・アールフィング(デザイン)
ジョン・クラーク(照明)
ルーク・ホールズ(ヴィデオ・デザイン)
キャシー・マーストン(コレオグラフィ)
ジョン・ロイド・デイヴィス(ドラマトゥルギー)

【収録】
2015年5月1日 コヴェントガーデン王立劇場 ライヴ収録
>異教徒の新しい教えが民衆に広まることを懸念したロジェ王と、その側近の賢者エドリシ。王は教えを広めているという正体不明の羊飼いと会うことにします。しかし、その美しい姿に魅了されてしまったのが王の妻ロクサーナ。一度は辞去した羊飼いが再度宮殿にやってきたとき、ロクサーナをはじめ、宮殿内の全ての人々は自制を失い、やがては彼を追って姿を消してしまうのです。妻を探し求めるロジェ王の前に現れたのは豊穣と狂乱の神ディオニューソスでした。そう、謎の羊飼いはディオニューソスは姿を変えていたのです。最後は神の誘惑に打ち勝ったロジェ王ですが……。12世紀のシチリアに実在した王ルッジェーロ2世をモデルにしたこのオペラ、この中で描かれているのは「異文化、異教の侵入」と、それに踊らされる人々の姿。そして反抗する君主の姿です。本来の幕切れは、全ての人が姿を消し、ロジェ王と側近エドリシのみの2人が残されることになっていますが、ホルテンの演出では、ほんの少しだけ救いが残されています。シマノフスキ(1882-1937)の音楽は神秘的で美しく、第2幕の狂乱の場では恐ろしいまでの官能的な響きを聴くことができます。パッパーノはスコアを丹念に読み解き、この複雑な音を丁寧に拾っていきます。ロジェ王を歌うクヴィエチェンはこの役を当たり役にしている人で、ここでも余裕の歌唱を聴かせます。ロクサーナ役のジャーマンはこれがロイヤル・オペラへのデビュー作となります。衣装、装置はシンプルですが、余分なものがないだけに一層神秘的な雰囲気が際立つ名演です。
ナクソス・ジャパン~発売元コメント~

 サイモン・ラトルが指揮したCDは手許にあるが、歌詞もなかったように思った。今回は日本語の字幕がついているのはありがたい。異教徒の教えに翻弄される為政者、ロジェ王の話だが、こうした宗教が絡むとキリスト教徒でない身にとっては、理解しがたい部分がかなりあるようだ。キリスト教の基本的なものを持っていることが前提というのが、クラシック音楽にはあってそこをどう縮めてゆけるかが、課題なのかもしれない。 

ベルリン・フィル創立70周年記念演奏会

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【曲目】
ベートーヴェン:大フーガ 変ロ長調
オネゲル:交響的運動第3番
シューベルト:交響曲第8番ロ短調D.759『未完成』
ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
【演奏】
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
【録音】
1952年2月10日、ベルリン、ティタニア・パラスト(モノラル)
使用音源:独フルトヴェングラー協会(Original Archive of RBB)

>スペクトラム・サウンドで人気のある伝説の指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラー・シリーズの第6弾が登場。今回はベルリン・フィル創立70周年記念演奏会をおさめた注目の内容。この復刻は聴き手に迫るすごい音質で驚きのリアルさです。
~キングインターナショナル~

 これらは他のレーベルで違うカップリングで出ていたものだが、一日のコンサートを集約した形のアルバム。フルトヴェングラー協会の音源を独自に復刻させたものというのが売りのようだ。

 この組み合わせはまさに重量級で、70周年記念のコンサートにふさわしい内容だ。中でもフルトヴェングラーによるオネゲルというのが珍しい。しかも3曲ある交響的断章の内、一番演奏頻度の少ない第3番というのも注目である。第1番は「パシフィック2.3.1.」、第2番は「ラグビー」という標題があるが、これはタイトルがない。このコンサートで一番編成の大きい曲でもある。それをこの巨匠がどう指揮するのか。やはりアインザッツが曖昧なのか、多少音に濁りはあるものの、堂々たる演奏ではある。この時点でオネゲルはまだ存命だったはずである。
実はこのアルバムはこのオネゲルが眼目であった。モノラルにしては音が良く、手に入れて良かったと思った。ただし、現物のCDの表示は「3楽章の交響曲」という誤った表記になっているのはいただけない。
 
 このアルバムは2枚組で、後半のシューベルトとブラームスは2枚目に収録されている。こちらは同じ演奏会の録音とは思われない程、モノラルにしては鮮明な音になっている。どちらもDGから出ていたし、ブラームスはフランスのターラからも出ているが、既出のものよりは鮮明な感じを受ける。観客の咳払いなどのノイズも聴こえる。またDG盤にはない終演後の拍手まで入っている。ベルリンの聴衆は余韻までしっかり聴いているようで、拍手までに数秒の間がある。きっと指揮者が完全に腕を下すのを待っていたのではなかろうか。どこかの国のように真っ先に拍手しようとする人はいないのだろう。幾分音に広がり感もあるようにも思うのは気のせいだろうか。

レーガー:変奏曲とフーガ(2曲)

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レーガー:モーツアルトの主題による変奏とフーガ Op. 132/ヒラーの主題による変奏とフーガ Op. 100(ニュージーランド響/フランツ・パウル・デッカー)
レーガー
①モーツアルトの主題による変奏とフーガ 
②ヒラーの主題による変奏とフーガ 
フランツ=パウル・デッカー指揮 ニュージーランド交響楽団
 
 これはAmazonのサイトで中古品で見出したもの。これも②に着眼したものである。①はモーツァルトの第11番のピアノ・ソナタの第1楽章がテーマ。所謂「トルコ行進曲付」と呼ばれる作品だが、その有名なマーチではなく、第1楽章のかわいらしいメロディがテーマ。音楽の性格上、編成も軽めのようでトロンボーン&テューバのような重量級の音を出す楽器は外されている。これは変奏の状態も割とわかりやすい。また彼の変奏曲とフーガの中では人気のあるものではないかと思う。
 
 さて、肝心のヒラーの主題の方は、先日聴いたシューリヒトの録音に比べたら新しいし、これちらはデジタル録音であるために一層充実した音で楽しめる。ヨハン・アダム・ヒラーの「収穫の花嫁」というオペラからの主題ということだが、残念ながらこの作曲家やオペラを知らないので、余計に馴染みがない。ただ編成が大きいのが魅力ではあるように感じた。やはり主題そのものが馴染みがあるかどうかで人気も決まるのかもしれない。

プッチーニ『ボエーム』全曲 サンフランシスコ歌劇場

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プッチーニ『ボエーム』全曲
ザンベッロ演出、セヴェリーニ&サンフランシスコ歌劇場
フレーニ、パヴァロッティ、他(1988)


『ボエーム』といえば、1972年にパヴァロッティとフレーニが録音した名盤が有名ですが、この映像はそれから16年を経た実際の舞台での彼らの共演をライウ収録したものです。年齢を重ねて歌の味わいが増した二人による注目の映像作品です。(HMV)

【収録情報】
● プッチーニ:歌劇『ボエーム』全曲

 ミミ:ミレッラ・フレーニ
 ロドルフォ:ルチアーノ・パヴァロッティ
 ムゼッタ:サンドラ・パチェッティ
 マルチェッロ:ジーノ・キリコ
 コッリーネ:ニコライ・ギャウロフ
 ショナール:スティーヴン・ディクソン
 ベノワ/アルチンドロ:イタロ・ターヨ、他
 サンフランシスコ歌劇場管弦楽団&合唱団
 ティツィアーノ・セヴェリーニ(指揮)

 演出:フランチェスカ・ザンベッロ
 装置:テイヴィッド・ミッチェル
 衣裳:ジェンヌ・バットン、ピーター・J.ホール
 映像監督:ブライアン・ラージ
 収録:1988年、サンフランシスコ歌劇場(ライヴ)

  少し古い映像ながら、かつてのイタリア・オペラのスターの二人が共演した公演の様子が見られるのは、貴重である。カラヤンとBPOと共演したCDはあるが、これは実際の舞台上での所作も見られるからだ。二人とも40代前半の油ののりきった頃だから尚更だ。まだ、妙な現代化されていない舞台で、ほぼ設定通りのものであるのも懐かしい感じがする。数年前にベルリンで生で接した妙な舞台と格段の差があると思った。

ティーレマン/SKD ブルックナー:交響曲第9番

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【曲目】
ブルックナー:交響曲第9番ニ短調(原典版)

【演奏】
クリスティアン・ティーレマン(指揮)
シュターツカペレ・ドレスデン

【収録】
2015年5月24日 バーデン=バーデン祝祭劇場(ライヴ)
 
 比較的新しい映像ということになろうか。ドレスデン国立管弦楽団が本拠を離れて西のバーデン=バーデンの劇場で公演した様子だ。指揮者にしろ、オーケストラにしろ、慣れたブルックナーだとは思うが、正攻法に挑んだ演奏かとは思う。ティーレマンはテンポをあまり揺らさないのがいい。弦楽器の配置は旧並びのようで1stヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、2ndヴァイオリンとヴァイオリンが向かいあっている。コントラバスは下手の奥に配置である。ブルックナーの交響曲はホルンが多いし、下の4パートはワグネル・テューバとの持ち替えが要求されている。打楽器はティンパニだけながら、相当数の楽員が載っている光景は壮観でもある。木管も3本ずつだ。
 
 最近は第4楽章を補完する演奏もあるが、やはりこの3楽章制の方が余韻が残っていい。それはシューベルトの「未完成」も言えることで、作曲者以外の者が忖度してつけた音楽はどうしても蛇足になってしまうと思う。作曲者本人は完成しないのは不本意かもしれないが、そこが「神」の思し召しかもしれないと最近思うようになった。

ヤン・ヴァンデルロースト:スパルタクス 他

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【曲目】
1.交響詩「スパルタクス」(1988)
2.交響詩「モンタニャールの詩」(1997)
3シンフォニエッタ~水都のスケッチ(2004)
<第1楽章:水都に着いて/第2楽章:剣舞/第3楽章:河畔の夕暮れ/第4楽章:未来に向かって>

【演奏】
フィルハーモニック・ウインズ大阪
ヤン・ヴァンデルロースト(指揮)

【録音】
2012年9月23日 大阪 いずみホール…1, 2014年9月23日 大阪 いずみホール…3, 2011年9月25日 大東市立 文化ホール(サーティホール)…2
>「フィルハーモニック・ウインズ大阪=オオサカン」
日本初のNPO法人のプロフェッショナル吹奏楽団「フィルハーモニック・ウインズ大阪=オオサカン」。結成以来、吹奏楽の新たな可能性を追求し、レパートリーの拡充を図ってきた彼らたちのNAXOSへのアルバム第2弾は、お待ちかね「スパルタクス」をはじめとしたヴァンデルローストの作品集です。交響詩「スパルタクス」は"レスピーギへのオマージュ"とスコアに記されているとおり、古代ローマの剣闘士スパルタクスの活躍がレスピーギを思わせる鮮やかな色彩で描かれている作品で、吹奏楽ファンだけでなく、全ての音楽ファンから賞賛されているものです。1997年に初演された「モンタニャールの詩」は、モンブランの山並みを望む自然の描写と、歴史上の史実を自由に交えた幻想的な作品です。ちなみに「モンタニャール」とはフランス語の「山」という意味。そして、注目は2014年の「ヴァンデルロースト首席客演指揮者就任記念演奏会」で演奏された「シンフォニエッタ~水都のスケッチ」で、こちらはもともと「大阪市音楽団発足80周年」のためにヴァンデルローストが作曲したものですが、演奏楽団がオオサカンに変わることで曲の表情も驚くほどに変化しています。~発売元コメント~
 
 ヤン・ヴァンデルローストは1956年生まれのベルギーの作曲家。名前からしてフランス系ではなくフランドル系でオランダ人に近い。吹奏楽に関わり合いのある人の間では有名な作曲家である。学生時代はトロンボーンも専攻していたというから管楽器への造詣は深い。もちろん、吹奏楽ばかりでなく管弦楽作品も書いているが、私は聴いたことがない。
 
 このアルバムは指揮者とバンドが共演した2枚目という。1枚目は今のところスルーしてしまっているが、今回は比較的有名な「スパルタカス」と最新作の「水都のスケッチ」が入っているのが目を惹いた。発売元コメントにあるように大阪市音楽団のためのものだが、例の市長に翻弄されて経営が苦しい。一方でこの吹奏楽団はNPO法人で大阪市音楽団とは運営方法も全く違う団体で、勢いはこちらの方がいいのかもしれない。オオサカンというニックネイムを持つバンドは珍しい。水都は大阪のことだろう。こうした大阪を表した作品は戦前の貴志康一以来かもしれない。

バレンボイム2014年「ベルリン・フェストターゲ」~歌劇「タンホイザー」

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【曲目】
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」

【演奏】
ルネ・パーぺ(テューリンゲン領主ヘルマン:バス)
ペーター・ザイフェルト(タンホイザー:テノール)
ペーテル・マッティ(ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ:バリトン)
マリーナ・プルデンスカヤ(ヴェーヌス:メゾソプラノ)
アン・ペーテルセン(エリーザベト:ソプラノ)
ピーター・ソン(ワルター・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ:テノール)
トビアス・シャーベル(ビテロルフ:バリトン)
ユルゲン・ザッハー(ハインリヒ:テノール)
ヤン・マルティニーク(ラインマル:バス)
ソニア・グラネ(牧童:ソプラノ)

シュターツカペレ・ベルリン ダニエル・バレンボイム(指揮)
ベルリン国立歌劇場合唱団 マルティン・ライト(合唱指揮)
舞台監督・振付:サシャ・ヴァルツ
衣装:ベルント・スコジック
舞台美術:ピア・マイア・シュリーヴァー、サシャ・ヴァルツ
照明:デイヴィッド・フィン
ドラマツルギー:ジェンス・シュロス、ヨッヘン・サンディグ
【収録】
2014年4月/シラー劇場(ベルリン)
 
>2014年ベルリン国立歌劇場の復活祭音楽祭「フェストターゲ」で行われたサシャ・ヴァルツの新演出、ダニエル・バレンボイム指揮による「タンホイザー」。サシャ・ヴァルツはポスト・ピナ・バウシュとして世界的に注目されているドイツの女性振付師。ダンサーを導入し、ビジュアルアートと音楽が舞台上で融合したスタイリッシュな演出となっています。バレンボイムの説得力、そして作品への深い造詣、ドラマティックに音楽を掘り下げていくバレンボイムの手腕に脱帽。歌手陣もペーター・ザイフェルト、ルネ・パーぺなど申し分ない布陣で、合唱、歌手、オケ、演出が一体となり、圧倒的な集中力と気迫で聴かせます。
キングインターナショナル
 
 ベルリン国立歌劇場がどんな「タンホイザー」をやるのかが興味があった。ドイツの歌劇場なのでドレスデン版の使用かなと思ったら、これはあっさり違ってパリ版使用だった。かつてはMETのみがこの版で上演していて本家の欧州ではドレスデン版でやっているとか解説にあったが、バレエの見せ場のあるパリ版に主流は移っているようだ。演出が振付師なので余計にそうなのかもしれない。また、本来は中世の中部テューリンゲン地方が舞台なのに、現代化になっていて20世紀初頭あたりの風俗に替えられている。やはり歌手たちは竪琴を持って、中世風の衣装でやってもらいたいのだが、頭が固いのだろうか。風俗と台詞の内容が全くそぐわないと思うのだが。
 
 このオペラは非基督教である土俗的な宗教への嫌悪みたいなものと、カトリックの無慈悲な権威主義みたいなものが綯交ぜになった内容。かなり宗教的なものなので、そういったことに疎いとピンとこない。土俗宗教の権化がギリシャ神話に出てこるヴィーナスとなるとなおのこと、混乱してしまう。一方で一度穢れた者はよほどの奇跡でもない限り救われないというのも残酷な話だ。主人公の「ローマ語り」での法皇の様子は、無慈悲で上から目線すぎるような冷酷なものに感じる。もっともタンホイザーもかなり軽率な奴には違いない。
 
 この歌劇場は今もベルリンの西地区にあるシラー劇場を使っている。本拠地は解体されたまま工事が停滞していると聞く。原因は行政の混乱なのだそうだ。ウンター・デンリデンのベルリンの中心地の一角がぽっかり穴の開いた状態はちょっとさびしい。
 
 

マリア・カラス~ハンブルク・コンサート 1959&1962

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1959.5.5
①スポンティーニ:歌劇「ヴェスタの巫女」より 無慈悲な女神よ
②ヴェルディ:歌劇「マクベス」より 勝利の日に
③ロッシーニ:歌劇「セヴィリャの理髪師」より 今の歌声は
④ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」より 世のむなさしを知る神
⑤ベルリーニ:歌劇「海賊」より ああ、目の前にかかる雲を
指揮:ニコラ・レッシーニ
1962.3.16
⑥マスネ:歌劇「ル・シッド」より あの恐ろしい決闘のおあかげで
⑦グノー:歌劇「ミレイユ」序曲
⑧ビゼー:歌劇「カルメン」~前奏曲、ハバネラ、第3幕への間奏曲、セギディーリャ
⑨ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
⑩ヴェルディ:歌劇「エルナーニ」より 夜のとばりがおりたのに
⑪ロッシーニ:歌劇「チェネレントラ」より 悲しみと涙のうちに生まれて
⑫ヴェルディ:歌劇「ドン・カルロ」より むごい運命よ
指揮:ジョルジュ・プレートル
管弦楽:北ドイツ放送交響楽団 場所:ムジークハレ、ハンブルク

 パリ、ロンドンのリサイタル映像とともに現存しているハンブルク公演の映像。二つの公演を抱き合わせたものになっている。場所とオケは同じようだ。画質は黒くなっていて劣化が見られるが、音はモノラル音声を加工した擬似ステレオで聴きやすくなっている。こういう演目だから、カラスのアップばかりで、映像的にはあまり面白くはないが、どんな表情で歌唱しているかを知ることができるのが貴重だ。

 なお、後半に収録されている1962年の方はオケだけの演奏もあって、オーケストラ奏者たちの様子も目にすることができるし、プレートルの若い頃の指揮ぶりも堪能できる。

マリア・カラス/パリ・デビュー1958~歌に生き、恋に生き

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(曲目)
①ベルリーニ:歌劇「ノルマ」第1幕より      
マリア・カラス(S:ノルマ)、ジャック・マルス(B:オロヴェーゾ)
②ヴェルディ:歌劇「トロヴァトーレ」第4幕より
マリア・カラス(S:レオノーラ)、アルベール・ランス(T:マンリーコ)
③ロッシーニ:歌劇「セヴィリャの理髪師」より 今の歌声は
④プッチーニ:歌劇「トスカ」第2幕
マリア・カラス(S:トスカ)、アルベール・ランス(T:ガヴァラドッシ)、ティト・ゴッピ(Br:スカルピア)、ルイ・リアラン(T:スポレッタ)、ジャン=ポール・ウルトー(B:シャルローネ)
ジョルジュ・セバスチャン指揮 パリ・オペラ座管弦楽団・合唱団
1958.12.19 国立歌劇場、パリ(ライヴ)

 これはもう一つ残りのパリ公演の映像。1958年のテレビ映像なので、何とも画質は心もとないが、音声は修復されて擬似ステレオの加工がなされていて、改善されているようだ。こちらは前半は演奏会形式で後半メインの「トスカ」だけは衣裳をつけて本格的な上演形式で公演している。これはロンドンと同じ。オーケストラは最初からピットに入っている。曲の始めにフランス語の解説が入る。

 字幕は英語しか頼るものはないが、今回ハンブルクと同様に日本語の解説書がついている。これがパリ・デビューというのは少々意外ではある。既にイタリアではかなりの実績を積んでいるのに何故かと思ってしまう。もうここの頃になるとやや盛りを過ぎた頃ではないかと思うとやや残念。また、完全なオペラ公演の映像がないのも惜しまれる。音だけでなく映像を見ると、役になりきっているというセラフィンの言葉がやや理解できる。やはりこうしたオペラというものは音だけでなく視覚的なアプローチは重要な要素だと思う。

戦時下のフルトヴェングラーによるベートーヴェン

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ベートーヴェン
①交響曲第4番変ロ長調作品60
②交響曲第5番ハ短調作品67
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1943.6.27-30 旧フィルハーモニー、ベルリン(ライヴ)

 旧ソ連から出てきた録音でメロディアのLPが初出という録音である。上のジャケットとは違い「ドリームライフ」のSACDで聴いてみた。ハイブリッド仕様なので通常のものではなくSACDの方を活用してみた。通常の方を少し聴いたら古い録音の典型で頼りなかったがSACDの方は見違えるほどの音質になっている。基本はモノラルだが、少し立体感のあるような録音である。会場は空襲で焼けおちる前の古いフィルハーモニーだ。今はその跡地とわかるようになっているのみで、誰も見向きもせず、ひっそりとした場所になっている。が、音響はかなり良かったのではなかろうか。

 1943年というとドイツの敗色がそろそろ出てきた頃だ。ベルリンへの空襲も始まっている。その間隙をついてのコンサートだから、演奏する方も聴く方も一期一会という感じだろう。厳しい環境下だから、巨匠の解釈も厳しい感じがする。第5番は歓喜の感じなのだが、ここでは何か悲劇を覚悟で進むというった感じか。

ストコフスキー編曲集

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【曲目】
(1)ワーグナー:ヴォータンの別れ~「ワルキューレ」より
(2)同:魔の炎の音楽~「ワルキューレ」より
(3)ショパン:マズルカ イ短調Op.17の4
(4)同:前奏曲ニ短調Op.28の24
(5)同:ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64の2
(6)キャニング:ジャスティン・モーガンの讃美歌による幻想曲

【演奏】
レオポルド・ストコフスキー(指揮)ヒューストン交響楽団

【録音】
1960年3月/ヒューストン
 
 ストコフスキーのトランスクリプションはバッハ作品が有名だが、もっと広範囲に及ぶ。このアルバムはバッハ以外のものが収録されている。あまりこうしたものはオリジナル古楽器の復活になって以来、あまり顧みられることがなくなっていたように思える。こういう形態は邪道といった考え方なのだろうか。ストコフスキー自身も公にするのではなく、オーケストラの練習用として編曲したということを何かで読んだことがある。コンサートに載せることを薦めたのはフィラデルフィア管弦楽団のメンバーたちだったそうだ。迷った挙句、試に演奏会でやったら好評だったという。バッハだけでなく、ショパンやラフマニノフのピアノ曲もオーケストレーションしていった。その一端をサヴァリッシュが所縁のフィラデルフィアを使って録音して、その面白さに興味を持ったが、肝心のご本人の指揮のものはモノラル録音が多い。これは高音質の数少ない録音のようだ。ただ金管がやけに軽く聴こえるのだが、殊にワーグナーなんかはもっと重いものがあるといいなと思った。

マルケヴィチによるリリー・ブーランジェ天才の世界

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【曲目】
リリー・ブーランジェ:
(1)深き淵より(詩篇130)
(2)詩篇24
(3)詩篇129
(4)古い仏教徒の祈り
(5)ピエ・イエス

【演奏】
オラリア・ドミンゲス(コントラルト)、レイモン・アマデ(Ten) (1)、
ミシェル・セネシャル(Ten) (2)(4)、ピエール・モレー(Br) (3)、
アラン・フォキュール(ボーイ・ソプラノ)(5)、
イーゴリ・マルケヴィチ(指揮)ラムルー管弦楽団、
エリザベート・ブラッスール合唱団

【録音】
1959年/サル・プレイエル(パリ)
 
 かつて世界の楽壇にナディア・ブーランジェという「ゴッド・マザー」がいた。彼女の教え子にはコープランド、ロイ・ハリスそれにここで指揮をしているイーゴリ・マルケヴィチらがいた。そして、彼女にはリリーという妹がいたが、わずか24歳で天に召されている。しかし、リリーはいくつかの作品を遺していた。ナディアにとっては身内であり、初期の教え子でもあったという。
 
 さて、ここに収められているのは殆どが初録音だったらしい。やっといい状態で録音できるだけの技術が揃ったということなのかもしれない。ここに展開される音楽は若い女性とは思えないほどの達者な筆致で、迫力もある音がする。もう少し長生きしていたらもっと多様な作品を生み出していたのではと惜しまれる。
 

四谷怪談 お岩の亡霊(森一生・大映京都1969年)

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四谷怪談 お岩の亡霊
 1969年6月28日に公開された作品。永田大映の末期の作品の一つで、映画会社も調子が悪くなると、エログロに走ってしまうのであろうか。

 本作では時代設定が元禄から江戸末期に変わっているし、人物配置も微妙に変わっている。佐藤慶扮する民谷伊右衛門は冷酷な悪役である。直助は本来なら徹底した悪役だが、本作ではやや影が薄い。凄みからすれば、新東宝の中川作品よりは少し遜色はあるのは否めない。

大東亜戦争と国際裁判(小森白・新東宝1959年作品)

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大東亜戦争と国際裁判.jpg
 資料によると1959年1月3日公開となっている。この日は各社正月映画として一斉に作品を封切っているが、本作品はもっと早く公開の予定が脚本の執筆の都合で年を越したとのことである。新東宝の俳優をほぼ全員使った上に新劇畑や外国人タレントも起用した大作になっている。最初に当時の社長・大蔵貢が「総指揮」という名目でクレジットされている。この段階で新東宝はかなり末期の頃になるが、際物企画を次々発表していた頃だ。これも他社が手を出さない「東京裁判」が題材で、どんな仰天内容かと観てみたら、意外とオ-ソドックスな内容であった。後年、東映が制作した「プライド」よりも客観的だし、映画的にはこちらに軍配を挙げたい感じではあった。ただ、裁判前の戦争過程の描写がやや長いのが難点だった。むしろ裁判から入って回想形式で挿入という手もあったのではと思った。ただ、わかりやすくしたいという製作者の意図は十分伝わってきた。
 
 出演者の中には公募による素人が演じている役もある。吉田茂とか重光葵などがそれだそうで、よく似た人を起用したらしい。一方、どうしても外国人役があるのだが、キーナン検事は実際よりしょぼい感じがして、ヒステリックな演技になっていたのはいただけない。キーナンが日露戦争から説き起こしている部分があるが、それはソ連の検事がやったことで、連合国側でも顰蹙を買ったというが、そういったことは簡略化されていた。元満州国皇帝・溥儀が登場したのは良かったと思う。実は偽証していたことは後年知られているが、清瀬弁護士に相当やり込められている場面があった。一方、ウェッブ裁判長は地味。本当はソ連同様に強硬で天皇を有罪にしようと躍起になっていたのだが、そういうことは出て来ないのは物足りなかった。アラカンの東條は抑えた演技だったように思う。廣田弘毅役は民藝の清水将夫が扮していた。そういえば1976年のテレビ朝日のドラマで同僚の滝沢修がこの役をやっていたなと妙なことを思い出した。
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