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ズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニック/ブラームス:交響曲&協奏曲全集

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ブラームス:
[CD1]交響曲第1番ハ短調Op.68,
[CD2]交響曲第2番ニ長調Op.73,
[CD3]交響曲第3番ヘ長調Op.90, ハイドンの主題による変奏曲Op.56a,
[CD4]交響曲第4番ホ短調Op.98,
[CD5]ピアノ協奏曲第1番ニ短調Op.15,
[CD6]ピアノ協奏曲第2番変ロ長調Op.83,
[CD7]ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77,
[CD8]ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調Op.102, 大学祝典序曲Op.80

【演奏】
ズービン・メータ(指揮) ニューヨーク・フィルハーモニック,
ダニエル・バレンボイム(ピアノ:CD5&6),
アイザック・スターン(ヴァイオリン:CD7),
ピンカス・ズカーマン(ヴァイオリン:CD8),
リン・ハレル(チェロ:CD8)

【録音】
1978~1982年、ニューヨーク

 ズービン・メータがNYPの音楽監督時代に米コロムビアに入れたブラームスの全集である。アナログ録音の末期のものだが、驚くことに4つの交響曲はこれが初めてCDとして発売されたものという。しかも第1番に至ってはLPの発売はなく、カセットテープのみ販売というからもっと驚く。発売元の説明では、同じような時期にVPOを振ってデッカに録音して発売が先行していて、契約上の関係でLPは発売されなかったという。全てビジネス上での問題ではある。協奏曲の方は単独でもカタログでは見かけるもの。

 さて、どんな解釈か。インパクトはあまりないが、第4番は他の指揮者に比べてポルタメントを強調したりするし、第1番はテンポをやや動かすようなところがあるが、これらがそんなに効果は上がってないように思える。ブラームスの交響曲は競合の多い分野だが、どちらかというと地味な存在。したがってCBSもCDにはなかなかしにくかったのかもしれない。第1番は件のデッカ盤と比べてみるのも一興であろうが、残念ながら持っていない。

カール・ベーム/ R.シュトラウス:管弦楽曲集

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CD1
・アルプス交響曲 Op.64 [51:55]
シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1957年9月、ドレスデン(モノラル)

・交響詩『ドン・ファン』Op.20 [17:00]
シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1957年9月、ドレスデン(モノラル)

・歌劇『ばらの騎士』Op.59~「第三幕のワルツ」 [07:47]
ベルリン・フィルハーモニー
録音:1963年4月、ベルリン(ステレオ)

CD2
・交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』Op.30 [34:47]
ベルリン・フィルハーモニー
録音:1958年4月、ベルリン(ステレオ)

・祝典前奏曲 Op.61 [12:50]
ベルリン・フィルハーモニー
ヴォルフガング・マイヤー(org)
録音:1963年4月、ベルリン(ステレオ)

・交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』Op.28 [15:00]
ベルリン・フィルハーモニー
録音:1963年4月、ベルリン(ステレオ)

・楽劇『サロメ』Op.54~「7枚のヴェールの踊り」 [09:38]
ベルリン・フィルハーモニー
録音:1963年4月、ベルリン(ステレオ)

CD3
・交響詩『英雄の生涯』Op.40 [41:43]
シュターツカペレ・ドレスデン
エーリッヒ・ミュールバッハ(vn)
録音:1957年2月、ドレスデン(モノラル)

・交響詩『死と変容』Op.24 [22:15]
シュターツカペレ・ドレスデン
録音:1972年8月、ザルツブルク(ステレオ)
ザルツブルグ音楽祭におけるライヴ録音

 久しぶりに渋谷のタワーレコードを覘いてみた。最近は店舗でCDを買う機会は少なくなった。あてがあって入店したわけではなかったが、物色中に見出したものである。しかも\1,500-程度の値がついていたので購入してみた。ベームは作曲者に可愛がられていた指揮者でまたこの作曲家の作品を得意としていた。だから遅まきながら聴いてみることにしてみた。むろん他のVPOとの録音も聴いたことはあるものの、これらは少し古い録音であったことは買った後にわかった。ドレスデンとのモノラルはBPOとのステレオ録音と比較すると流石に古さを感じる。

 CD2の交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』は映画「2001年宇宙への旅」の冒頭に使われたものだろうか。それはともかく今回これを手にしたのは「祝典前奏曲」という珍しい作品があったことと「7つのヴェールの踊り」があったからだ。後者は飛行機のクラシック音楽の中に流れていた演奏であった。

 

ガードナー:ヤナーチェク管弦楽曲集Vol.3~グラゴル・ミサ他

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収録情報
ヤナーチェク:
1. グラゴル・ミサ JW III/9
2. アダージョ JW VI/5
3. アヴェ・マリア JW II/14
4. 天にいますわれらの父よ JW IV/29

 サラ・ヤクビアク(ソプラノ:1,3)
 スーザン・ビックリー(メゾ・ソプラノ:1)
 スチュアート・スケルトン(テノール:1,4)
 ガボール・ブレッツ(バス:1)
 トーマス・トロッター(オルガン:1)
 ベルゲン・フィルハーモニー合唱団(1)
 コレギウム・ムジクム合唱団(1)
 エドヴァルド・グリーグ合唱団(1,3,4)
 ベルゲン大聖堂合唱団(3,4)
 エドワード・ガードナー指揮 ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団
 
 録音時期:2015年8月17-20日
 録音場所:ノルウェー、ベルゲン、グリーグホール&ベルゲン大聖堂
 録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
 
 ガードナーの3番目のヤナーチェクのアルバム。今回は声楽を伴う作品が多く収録されている。これも前項のベームのR.シュトラウスと一緒に購入した。もっともこちらはブログ仲間の方のご紹介があったのを思い出して店頭で見出したもの。
 
 メインの「グラゴル・ミサ」は既にバーンスタインやマッケラスなどの録音を持っていたので、新味はないがそれでも同曲の新しい録音で期待したのはもちろんだが、フィルアップの曲は未知のものばかりで、どちらかというとそれに惹かれた。2曲目は管弦楽のみの作品。後半の2曲は変則編成で3曲目はヴァイオリンとピアノなどのアンサンブルが伴奏、4曲目はハープとオルガンの伴奏というユニークなもの。ただ、これらはいずれも「グラゴリ・ミサ」ほどエキゾティックな雰囲気は希薄だった。
 
 なお、アルバムを開くと作曲者とオットー・クレンペラーの2ショット写真が記載されていた。1927年撮影とある。つまりヤナーチェクの死の前年だ。クレンペラーは現代曲をよく取り上げていたそうだが、ヤナーチェクも取り上げていたのだろうか。少なくとも録音としてはあまり遺してくれなかったように思う。

ビルマの竪琴(日活1956年作品)

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 市川崑監督というとまず挙げられるのが本作かもしれない。初見は小学校の頃、NHK総合での放映だった。当時は日活マークを他の映像に差し替えてタイトルから本来の映像になるという扱い。あくまで特定の会社名を出さないというルールをNHKが厳格に守っていたような感じではあった。最近はオリジナルのままの放映にはなっている。高校を卒業して上京したら、割と容易に映画館で観ることができた。名画座でも結構上映頻度は多かった。映画館での初見は「日本映画名作祭」とかいう企画が丸の内松竹であった時だったと思う。
 
 さて、今この作品が観られるのは総集版と呼ばれるもの。初公開は前後篇に分かれていたらしい。ただ、何かの関係で海外ロケ部分が間に合わず、市川監督としては不本意な形だったとは文献にあったような記憶がある。改めて編集して海外ロケの部分も挿入してできたのが今の版らしい。もの売りの婆さん(北林谷栄)の主人役の沢村国太郎はクレジット表記のみで画面に登場しないのはそういう経緯が影響しているのではと思っている。初公開版は残っていないだろうかと最近思うことしきりである。
 
 内容は全くのフィクションで、ビルマにはあのような竪琴はないとの指摘もある。よくみるとややご都合主義できれいごとに終始してなくもない。原作も読んでみたが、映画ほど感動しなかった。またカラー化したセルフ・リメイク版も観てはいるが、やはりこの日活版の足元にも及ばない。何故、ここまで名作とされるのだろうか。一つには俳優陣自身の戦争体験がこの当時はまだ生々しかったことがある。そして、この映画にはビルマ僧(中村栄二)による主人公への説教めいた台詞が全てを物語っているように思う。これは原作にはなかったような気がする。その台詞とは「日本が来ようが、イギリス来ようが、ビルマはビルマだ」といった趣旨。他国がやってきて自分らの国に何をするかという意味と悠久の大地に何をごぜりあっているのかという意味の双方に取れた。水島は結局説教に身が入らず、この僧侶の衣服を盗むのである。それが次第に罪の意識と重なりついには帰れなくなってしまう。また死んだ兵隊が持っていた子供との写真のショットなど戦争の空しさも十分に伝わった。市川監督自身の考えが十分に詰まった作品かもしれない。それに伊福部昭の重い音楽が流れる。「ゴジラ」での祈りの音楽のような音楽も効果的だった。

Mravinsky Conducts Shostakovich

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『ムラヴィンスキー・コンダクツ・ショスタコーヴィチ』

【曲目】
ショスタコーヴィチ(1906-1975):
交響曲第5番ニ短調 Op.47(1937)
交響曲第8番ハ短調 Op.65(1943)
交響曲第12番ニ短調「1917年」Op.112(1961)

【演奏】
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
エフゲニー・ムラヴィンスキー(指揮)
収録:1973年、モノラル(第5番)/1982年、ステレオ(第8番)/1984年、モノラル(第12番)

 エフゲニー・ムラヴィンスキーの指揮姿が見られるということで、手に入れた。既にCDなどでは所持しているのだが、動く巨匠の姿を見てみたいという思いからだ。旧ソ連が製作した映像で何とも画質はよくないし、音声も途切れる箇所もある。しかも驚くことに第12番のみがコンサートの実況なのに対して、あとの2曲は映像用のセッションかもしくはリハーサルの様子といった感じだ。第5番は上着もつけずに指揮している。空の客席と舞台を対比するシーンもあったりする。ユニークな映像だが、ムラヴィンスキーは決して取り乱さず、クールに指揮してゆく。他の指揮者が興奮して表情をあらわにするであろうという箇所も淡々と振っている。これが彼のスタイルなのだと思った。将に貴重な映像だと思う。

イン・リハーサル&パフォーマンス

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イン・リハーサル&パフォーマンス〜ショルティ、カルロス・クライバー、ラインスドルフ、チェリビダッケ、ノイマン、フリッチャイ、ジュリーニ、ベーム


収録情報】

エピソード1:ゲオルグ・ショルティ
● ワーグナー:『タンホイザー』序曲
(リハーサル1、リハーサル2:約43分、演奏:約15分)

南ドイツ放送交響楽団(SWRシュトゥットガルト放送交響楽団)
ゲオルグ・ショルティ(指揮)
収録:1966年

ゲオルグ・ショルティ[1912-1997]とシュトゥットガルト放送交響楽団による、ワーグナー『タンホイザー』序曲のリハーサルと本番の映像集。ショルティを代表する歴史的録音となった『ニーベルングの指環』を録音した直後で、大変エネルギッシュな姿をみせています。ショルティが思い描く音楽をどう楽団員たちに伝え、形にしていくかという過程が興味深く映し出されています。

エピソード2:カルロス・クライバー
● J.シュトラウス2世:『こうもり』序曲
(演奏:8分、リハーサル:34分)
● ウェーバー:『魔弾の射手』序曲(演奏:10分、リハーサル:46分)

南ドイツ放送交響楽団(SWRシュトゥットガルト放送交響楽団)
カルロス・クライバー(指揮)
収録:1970年、シュトゥットガルト、ヴィラ・ベルク

カルロス・クライバー[1930-2004]、39歳の時の練習風景と本番演奏。即興的に見える本番での指揮が、実は緻密なリハーサルで作られていたことが明かされた貴重な記録。このリハーサル映像を見れば、一見感覚的に見えるクライバーの指揮ぶりが、実は細部のニュアンス表出のための有効かつ計算された仕草であること、その即興的と言いたくなる演奏の鮮度が、リズムと細部への徹底的な、完全主義的とも言えるこだわりに支えられたものであることがよく分かります。

エピソード3:エーリヒ・ラインスドルフ
● シューマン:交響曲第4番ニ短調(1841年初稿)
● ワーグナー:『パルジファル』より前奏曲、間奏曲


SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)
収録:1989年、カールスルーエ、ブラームスザール(ライヴ)

ウィーンのユダヤ人一家に生まれたエーリヒ・ラインスドルフ[1912-1993]。ヒトラー率いるナチス・ドイツ政権によるユダヤ人迫害により、それまでの順調なキャリアを捨てて、1937年アメリカへ亡命、その後アメリカに帰化し、メトロポリタン歌劇場やボストン交響楽団等で活躍、アメリカにおけるドイツ音楽のスペシャリストとして重要な役割を果たした指揮者となりました。
この映像は、彼の得意とするワーグナー、シューマンのコンサート映像と「リハーサルの鬼」といわれたラインスドルフの厳格なる要求が飛び交うリハーサル風景を収めた映像集。リハーサルと本番を比べ、なんとも言えない緊張感が作り出す素晴らしい演奏を観ると、ラインスドルフの厳格すぎるといわれたリハーサルも納得できます。

エピソード4:セルジウ・チェリビダッケ
● R.シュトラウス:交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯』


南ドイツ放送交響楽団(SWRシュトゥットガルト放送交響楽団)
セルジウ・チェリビダッケ(指揮)
収録:1965年1月

現在もカリスマ的人気を誇るセルジウ・チェリビダッケ[1912-1996]。厳しいリハーサルと重厚な音楽作りで知られている彼の52歳の時のリハーサル映像。モノクロ映像ながらチェリビダッケがまだ体を激しく動かしていた頃のリハーサルということで大変興味深い内容。壮年期のチェリビダッケがとにかく派手な動きで活気に満ちたリハーサルを行っています。チェリビダッケは入念なリハーサルが有名ですが、時折不機嫌な表情で、細部まで徹底的に突き詰める厳密なリハーサル風景は、チェリビダッケの音楽の一端を知る貴重な映像です。

エピソード5:ヴァーツラフ・ノイマン
● スメタナ:『売られた花嫁』序曲
● ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番


南ドイツ放送交響楽団(SWRシュトゥットガルト放送交響楽団)
ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)
収録:1968年2月

チェコを代表する指揮者ヴァーツラフ・ノイマン[1920-1995]。十八番のスメタナ『売られた花嫁』序曲とベートーヴェン『レオノーレ』序曲第3番を収録。冗談を交え団員を褒めつつ、的確な指示で作品への理解を深め、オケとともに音楽を共有し作り上げていく様が映し出されています。

エピソード6:フェレンツ・フリッチャイ
● スメタナ:交響詩『モルダウ』


南ドイツ放送交響楽団(SWRシュトゥットガルト放送交響楽団)
フェレンツ・フリッチャイ(指揮)
収録:1960年

フェレンツ・フリッチャイ[1914-1963]の46歳の貴重な映像。1963年に白血病のため48歳で惜しくも亡くなった、ハンガリーを代表する名指揮者。当時の追悼番組を商品化したもの。フリッチャイの指示で、みるみる音楽が生き生きしていくリハーサルが収められています。リハーサルの合間には、自らの病を知りながら発せられる音楽への情熱と生きることの素晴らしさは感動的です。

エピソード7:カルロ・マリア・ジュリーニ
● ブルックナー:交響曲第9番ニ短調(ノヴァーク版)


SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮)
収録:1996年

カルロ・マリア・ジュリーニ[1914-2005] がシュトゥットガルト放送交響楽団に客演し、得意のブルックナーの交響曲第9番を指揮した際の映像。1996年といえば最愛の夫人が亡くなった翌年、そして2年後にはジュリーニは指揮活動から引退した時期。特にリハーサル映像では、具体的な指示で充実した見ごたえのある内容が収録されています。

エピソード8:カール・ベーム
● ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 op.92
● ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調 op.95『新世界より』


ウィーン交響楽団(ベートーヴェン)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(ドヴォルザーク)
カール・ベーム(指揮)
収録:1960年代(ベートーヴェン)、1970年代後半(ドヴォルザーク)

巨匠カール・ベーム[1894-1981] がUNITELに残した映像。晩年にウィーン・フィルを指揮した堂々たるドヴォルザーク『新世界』と、1960年代にウィーン交響楽団を指揮したパワフルなベートーヴェン第7番の映像というすごい組み合わせです。ベートーヴェンはリハーサル風景付き。

 内容をそのまま転載したのだが、これらは単独でも発売されているようだ。BDにはこれらが1枚に収録されていてなんと全部で750分(12時間50分)との表示がある。全て通して観ると半日以上かかるというものだが、このように集約されるとコスト的にも助かる。

 上記のように名だたる巨匠のリハが観られるのはたいへん参考になる。どのように演奏すべきかが楽器をやるものにも参考になる。また結構細かい指示を出して練習をつける。次第に形をなしていって、最後に本番の模様が出て完成したものの披露となる。ただ、ベームによるドヴォルザークは本番のみの収録。精力的に動くショルティ、神経質ながら細かい指示を出すクライバー、話好きなノイマン、具体的な指示を明確に出すフリッチャイなど。中でもチェリビダッケはやはり厳しい。楽員を締め上げる感じ。音声はノイマンとフリッチャイのみモノラルで他はステレオ収録。画面はモノクロとカラーとがあるが、1970年まであたりはモノクロ映像。日本語字幕はなく英語字幕で鑑賞だが、何となくわかる。ノイマン、チェリビダッケ、フリッチャイ、ショルティも母国語でないのに達者なドイツ語を喋っている。まあ彼らの出発点はドイツ語圏なのだから、当たり前かもしれない。



バルビローリ~ブラームス交響曲全集&管弦楽曲集

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CD1①交響曲第1番ハ短調作品68
   ②悲劇的序曲
   ③大学祝典序曲
CD2①交響曲第2番ニ長調作品73
   ②交響曲第3番ヘ長調作品90
CD3①交響曲第4番ホ短調作品98
   ②ハイドンの主題による変奏曲作品56a
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 買うまいと思っていても、ついつい手を出してしまった感があった。先日、メータ&NYPの全集を入手したばかりというのにだ。しかも店頭の価格が2,000円を切った価格はまさしく誘惑一杯だった。ただ店頭では韓国製のCDもあって、こちらは国内盤並に高かった。よくみると組み合わせが少し異なるようだし、組数も1枚多かった。

 さて、中味を聴くと幾分遅めのテンポ、それに流石VPOがうまくついていているという感じだ。ただ、そのテンポをどう感じるかで好みは分かれるのだろうなとも思った。あえて好みを言わせてもらえるなら、もう少し流れがあった方が良かった。他にはやや音をテヌート気味に演奏させるやり方もこの人の特徴なのかなとも思った。聴いていると彼が初演したヴォーン=ウィリアムズの交響曲第8番の第2楽章のトランペット・ソロのことを思い出した。やはりテヌートを強調させる吹奏をさせていたのである。

 中のライナーノートにはバルビローリはブラームスを振るべく生まれてきたと書いてあった。少し面くらったが、エルガーなどの交響曲をよくやるというのは、ブラームスの交響曲にも親近性を持っていたということで納得はできた。




マイアベーア:歌劇「アフリカの女」

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【演奏】
セリカ…シャーリー・ヴァーレット(ソプラノ)
ヴァスコ・ダ・ガマ…プラシド・ドミンゴ(テノール)
イネス…ルート・アン・スヴェンソン(ソプラノ)
ネルスコ…ジュスティーノ・ディアス(バリトン)
ドン・ペドロ…ミヒャエル・デヴリン(バス)
ドン・ディエゴ…フィリップ・スキナー(バス)他
サンフランシスコ歌劇場管弦楽団&合唱団、バレエ団
マウリツィオ・アレーナ(指揮)
ルトフィ・マンソーリ(演出)
ヴォルフラム・スカリッキ(装置)
アムレイ・スカリッキ(衣装)
トマス・J=ムン(照明)
【収録】
1988年 サンフランシスコ歌劇場ライヴ収録

 実店舗で見かけたのがきっかけ。ただ通販の方が多少安いと判断、これが正解だった。しかも同じタワーレコードでの比較だった。

 音楽自体はさほど難しいものではなく、親しみやすい。また、主人公が世界史の教科書でもおなじみの人というのもいい。帯解説ではこれがマイヤベーア最後のオペラだそうで、主人公の名前の題名を予定していたものの、初演前に亡くなってしまい勝手にカットされて題名も変えられて定着したのが今の姿なのだそうだ。しかし、全部で5幕もあって、これで十分。「おおパラダイス」というテノールのアリアだけが有名でそうそう上演もされないみたいだ。

 管弦楽は壮大でしっかりしていて、ロッシーニなどよりも重い響きがする。シューマンが徹底的に批判したのと、ナチスがユダヤ人がゆえに演奏を禁じたりしたので、忘れられた存在になってしまっている。

アバドとBPOの最後の共演コンサート

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ベルリン・フィルが作ったアバドの「メモリアル・アルバム」
アバド最後の客演コンサート&貴重なドキュメンタリー映像

ベルリン・フィル・レコーディングスが、クラウディオ・アバドの三回忌を記念して、新タイトル「クラウディオ・アバド~ザ・ラスト・コンサート」を発売します。これは、2013年5月にアバドがベルリン・フィルに最後に客演した際の演奏を収めたもので、メンデルスゾーン『真夏の夜の夢』(序曲および6曲)、ベルリオーズ:幻想交響曲がCD、BDビデオ&オーディオ、ハイレゾ・ダウンロードのマルチ・フォーマットで収録されています。
今回のコンセプトは、ベルリン・フィル団員のアバドへの思い出が詰まった「アルバム」。装丁は卒業アルバムを連想させる布張りハードカバーで、ブックレットにはプライベートを含む様々な写真が散りばめられています。その多くが、これまでに非公開だったもの。さらにBDビデオには、ベルリン・フィル首席指揮者就任時の最初の1年を追ったドキュメンタリーが収録されています(1991年制作/20年以上前にドイツ・グラモフォンからVHSおよびLDでリリースされて以来の復刻)。


「アバドは妖精の世界を見ることができる」と評された演奏はもちろんのこと、このドキュメンタリーが、実に示唆に富んでいます。ベルリンの壁が崩壊した1989年に首席指揮者となった彼が、楽団にカラヤン時代とまったく違う空気を送り込んだことが、生々しく伝わってくる内容です。現在の視点から観ると、彼が音楽および人生の上で目標としたことが、後にすべて実現したことが分かり、深い感動を覚えます。
同時に、2014年にベルリン・フィル団員がアバドの思い出を語った映像も収録。ここでは、彼(不器用なリハーサルをしたことで有名)が稽古中にわざとカオスを引き起こすことで、団員がお互いに音を聴くように仕向け、「オケによる室内楽」を実現させた、という驚くべき新説が提示されています。
総じてベルリン・フィルのアバドの思い出が、演奏音声、演奏会映像、写真、ドキュメンタリーのすべてで多角的に凝縮されており、「アルバム」の名に相応しい内容となっています。アバド・ファン、アバド時代のベルリン・フィルに関心を持つリスナーには、絶対に見逃せないタイトルと言えるでしょう。(キングインターナショナル)


 これは2013年5月のベルリン・フィルの演奏会に登場したクラディオ・アバドの指揮姿を収めたもの。この人が亡くなったのが2014年1月20日であるから、死が目前だった時期である。いつか、大病を患って復帰後に振ったヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」の映像ソフトを持っているが、痛々しい姿だった。いつ訃報が入るのかと心配するほどだった。この映像を観ても健康状態はあまりよくないように見えた。しかし、何度も演奏されつくした曲目なのに、新たな魅力を感じさせるのはやはり只者では人だったと思い知らされる。ややテヌート気味に音を鳴らせている。また、最新の録音の威力でベルリオーズの幻想交響曲のラストでなる2本のテューバの動きも鮮明に聴こえてくる。このBOXはメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」とベルリオーズの幻想交響曲の2つ。多分、ポスト・ベートーヴェンの同時代の二人の作品を並べて、当時の音楽状況をコンサートで披歴するというようなテーマだったのだろう。普段はこの二人の接点を考えたことはない向きは多い。でも僅か5歳の年齢の開きしかなく、互いの作品についての評価もしているのである。若いメンデルスゾーンのいささか対応が子どもっぽいのが面白い。裕福な坊ちゃん育ちで、ベルリオーズとは反りはあわないのは、この自分にも想像できる。

 さて、CDはそれぞれ1枚に1曲収録。あとBDには映像なしのAudioと映像ヴィデオの両方が収録されている。音だけの方は拍手も入っておらず、本番ではなくゲネプロの演奏も入っているのかもしれない。一方映像はコンマスが登場してチュウニングするところから始まり、観客の拍手もしっかり入っている。コンマスは樫本大進ではなかったが、ヴィオラの第一席は日本人奏者の清水直子という人が座っていた。

ベルク:歌劇『ヴォツェック』全曲 クラウディオ・アバド

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収録情報】
● ベルク:歌劇『ヴォツェック』全曲

 ヴォツエック/フランツ・グルントヘーバー(バリトン)
 マリー/ヒルデガルト・ベーレンス(ソプラノ)
 鼓手長/ワルター・ラファイナー(テノール)
 アンドレス/フィリップ・ラングリッジ(テノール)
 大尉/ハインツ・ツェドニク(テノール)
 医師/オーゲ・ハウグランド(バス)、他
 ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団
 クラウディオ・アバド(指揮)

 演出:アドルフ・ドレーゼン
 装置・衣装:ヘルベルト・カップルミュラー

 収録時期:1987年
 収録場所:ウィーン国立歌劇場(ライヴ)

  これはかつてLDでリリースされたものかと思う。当時は10,000円以上もしたので、手をだしかねたものだった。そしていつのまにか廃盤になり、DVDにもなかなかならなkったが、幸い廉価なBDが出ていたので手にしたもの。ただし、日本語字幕はない。30年近くも前の映像なので映像自体の劣化はいたしかたないだろう。

 さて、直前に鑑賞したベルリン・フィルとのラスト・コンサートでのアバドとは異なり54歳のアバドで若々しい。ウィーン国立歌劇場で活躍した頃なので張り切っている姿が見える。ベルクの難しいスコアを破綻なく演奏するオーケストラも流石だ。VPOの母体だけはある。マリーに扮したベーレンスも素晴らしい。この人も今は亡い。日本で亡くなったのを思い出した。話自体は、倒錯的で愉快な内容ではない。よほど気を引き締めないと鑑賞できない作品だが、こうしたいい演奏で鑑賞したいものだ。

マスカーニ:カヴァレリア・ルスティカーナ、レオンカヴァッロ:道化師 ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン、カウフマン

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収録情報】
● マスカーニ:歌劇『カヴァレリア・ルスティカーナ』全曲

ヨナス・カウフマン(トゥリッドゥ)
リュドミラ・モナスティルスカ(サントゥッツァ)
ステファニア・トツィスカ(ルチア)
アンブロージョ・マエストリ(アルフィオ)
アンナリーザ・ストロッパ(ローラ)

● レオンカヴァッロ:歌劇『道化師』全曲

ヨナス・カウフマン(カニオ)
マリア・アグレスタ(ネッダ)
ディミトリ・プラタニアス(トニオ)
タンセル・アクセイベク(ベッペ)
アレッシオ・アルドゥーニ(シルヴィオ)

ドレスデン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
クリスティアーン・ティーレマン(指揮)

演出:フィリップ・シュテルツェル
映像監督:ブライアン・ラージ

収録時期:2015年3月
収録場所:ザルツブルク祝祭大劇場(ライヴ)

 この二つオペラは同時に上演されることが多いが、2015年ザルツブルク音楽祭でも例外ではなかったようだ。ただし、目を惹いたのは歌手陣ではなく指揮者とオーケストラだ。ティーレマンとドレスデンのアンサンブルがどんなイタリア・オペラを聴かせてくるのだろうという興味だ。ドイツの歌劇やブルックナーなどはイメージが結びつくが、こうした演目は年末年始のガラ・コンサートでオペラの一部を演奏されることはわかるが、ドイツの住人ならぬ身にとっては珍しく思える。しかもオーストリアへ遠征しての上演だ。本拠地ではイタリアものやフランスものそれにロシアものはやっているのかもしれないが、やはりピンとこない。

 予想通りやや重たい響きではある。イメージとしてはもっと軽くてもいいかなと思うが、そこが彼らのスタイルなのだろう。このアルバムの狙いヨナス・カウフマンではある。彼は両方の作品に登場するという活躍ぶり。後のカニオはどうしてもデル・モナコのイメージがあって、線は細くみえてしまう。トゥリドゥの方は良かった。舞台は本来の時代から現代に近い設定。30年代のイタリアといったところか。幕で情景を仕切ったり一部スクリーンにしてアングルを違えて見せるといった工夫があった。ただ、序曲や間奏曲にもパントマイムをやらせるのが流行りのようで、これは自分としてはどうかと思っている。映像監督がブライアン・ラージでアップ多用で舞台演出の味わいを減殺しているのは残念だった。

シューリヒトによるベートーヴェン交響曲全集

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収録曲】
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:交響曲全集
<DISC1>
1. 交響曲第1番 ハ長調 作品21
2. 交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」
<DISC2>
3. 交響曲第2番 ニ長調 作品36
4. 交響曲第7番 イ長調 作品92
<DISC3>
5. 交響曲第4番 変ロ長調 作品60
6. 交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」
<DISC4>
7. 交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
8. 交響曲第8番 ヘ長調 作品93
<DISC5>
9. 交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱」
<DISC6>
10. 交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱」 <ステレオ版>

【演奏】
ウィルマ・リップ(ソプラノ)、
マルガ・ヘフゲン(コントラルト)、
マレイ・ディッキー(テノール)、
ゴッドローブ・フリック(バス)
エリーザベト・ブラッスール合唱団(9,10)
パリ音楽院管弦楽団
カール・シューリヒト(指揮)

【録音】
1957年4月30日&5月6日(7)、1957年5月7,10日(8)、1957年6月11,12日(4)、1957年9月25,27-29日(6)、
1957年12月18,20,23日(2)、1958年5月27-29,31日(9,10)、1958年9月23,25,26日(5)、1958年9月26,27日(3)、
1958年9月27,29日(1)、 サル・ワグラム、パリ
旧EMI音源

 シューリヒトのベートーヴェンの交響曲全集の存在は前から知ってはいたが、この度初めて聴く。第9のみがステレオとは知っていたが、モノラル版もあったのは驚いた。同じ演奏をモノラルとステレオにしたのではなく、どうやら別テイクという。

 ステレオ普及直前のせいかモノラルでも透明感のあるすっきりした録音でききやすい。淡々と音楽を進めるこの巨匠に沿ったような録音といったらよいか。

ペッテション:交響曲第10番&第11番

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ペッテション:交響曲 第10番/同第11番
アラン・フランシス指揮 ハノーヴァー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

 マニアックなCPOレーベルの一つ。現代のシンフォニストの一人ペッテションの交響曲2曲。某通販で在庫あと一つということで衝動買いしてしまった。後で覘いてみると次回入荷不明とあったので、自分の中では「正解だった」と思ったものだ。

 いつものように爽快な曲調ではない。そしてどちらも単一楽章である。ただ、このデッィスクは楽譜にある練習番号でトラック付けをしているので、スコアやパート譜で研究するには便利になっている。まあしかし、この人の作品をやろうという物好きなアマチュア・オケはまず殆どないだろう。知らない人も多く、取り上げるとしたらかなりの冒険ということになる。

『カルメン』全曲 ザンベロ演出、カリーディス&コヴェント・ガーデン王立歌劇場

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【収録情報】
● ビゼー:歌劇『カルメン』全曲

カルメン:クリスティン・ライス
ドン・ホセ:ブライアン・イーメル
エスカミーリョ:アリス・アルギリス
ミカエラ:マイヤ・コヴァレヴスカ
モラレス:ダーウィッド・キンバーグ
スニガ:ニコラ・クルジャル
フラスキータ:エレナ・クサントウダキス
メルセデス:ポーラ・ムリヒー
コンスタンティノス・カリーディス指揮
 コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団・合唱団
演出:フランチェスカ・ザンベロ
再演演出:ダンカン・マックファルランド
デザイン:ターニャ・マッカリン
照明:パウレ・コンスタブル
コレオグラフィ:アルトゥール・パイタ
収録時期:2010年6月
収録場所:ロンドン、ロイヤル・オペラ・ハウス(ライヴ)
 
 変な現代化のないわかりやすい舞台だが、少し違うと感じるものがあった。そう管弦楽による3つの間奏曲がどれもカットされている。本来あるべきものがないというのが違和感の原因だった。始めから演奏していないのか、演奏したが映像上カットしたのか。後者だったら余計なことだ。そのことは確かめる術を持っていない。演出家や指揮者の考え方次第というのがオペラなのだろう。そういえばクライバーがウィーンでやったものは第4幕への間奏曲は曲順を替えて幕があがってから、舞踏曲に変えたりしていたし、最初の児童合唱も相当カットしていた。それでまた演目の味わいが変わるのが面白いといえば面白い。

この子の七つのお祝いに(松竹・角川春樹事務所1982年)

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この子の七つのお祝いに_場面写真

 

この子の七つのお祝いに_場面写真
 
 少し増村保造監督の作品が観たくなって、大映時代を中心に観てきたが同社が経営破綻した後の作品はなかなか観る機会がなかった。この監督はテレビ映画も手掛けていて「ザ・ガードマン」の他、山口百恵の「赤いシリーズ」も監督していた。したがって、本作を観るとどこか2時間のテレビ・ドラマ風のようなテイストもある。しかし、これは女の情念の恐さを如実に描いた異色の作品である。謎を解くのは根津甚八扮する記者だが、強い印象を放つのは、岸田今日子の自殺した女性である。死してなお生者を操る情の恐さは凄い。多分に逆恨み的なところもあるが、同情すべき点も多々ある。戦争で人生を狂わされた人たちの悲劇でもある。
 
 これが増村監督の遺作となった。1957年に作った「くちづけ」から始まったフィルモグラフィもここで幕が下ろされた。往年のスピーディさはやや影をひそめてしまったが、描写の闊達なところは最期まで健在だったことを喜びたい。狂女役の岸田今日子は増村監督作品では常連的な俳優だった。芦田伸介とのペアは山本薩夫監督の「戦争と人間」以来ではなかろうか。スタッフの名前を見ると、ほぼ大映東京撮影所で仲間だった人たちが集まっている。小林節雄キャメラマンは多くの増村作品手掛けて名キャメラマンだった。

わらの犬(サム・ペキンパー・1971年)

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 このペキンパー作品をようやく観た。公開時に雑誌でその評論は読んだことはあるが、映画自体はこの度が初めて。ペキンパー作品に興味を覚え始めたからだ。宇宙工学関係の仕事をするアメリカの若い数学者が治安の悪い母国を離れて妻の故郷であるイギリスの片田舎に引っ越すところから始まる。だが、地元住民は一癖も二癖もある人物で中には傍若無人な酔っ払いや不良たちがのさばっている。どうも妻とはかつて関係があったようなことが示唆され、やがて騒動に発展していく。偏見や差別などが綯交ぜになって、主人公たちに襲いかかってくる。平和主義者の主人公もついに...。
 
 治安がいいはずのイギリスの田舎町は実はとんでもない地域だったという意外性やギャング団のような犯罪集団ではないが、犯罪者との境界線にいるような不良たちが登場するというペキンパーとしては少々違った人間関係が特徴のようだ。倒れる人間をスローモーションで見せるこの監督独特の描写はここでも健在。やるかやられるかになると本来の闘争本能を丸出しにする人間の姿は凄い。また妻が輪姦されるシーンは目をそむけたくなるほど不快なシーンだが、これも最後への伏線。冒頭の何に使うわからない罠の仕掛け道具同様に最後に繋がっている。カテゴリーとしてはアメリカ映画だかが、ロケやスタジオはイギリスであるし、キャメラマンもイギリスの人を起用している。「卒業」とはまるで違うダスティン・ホフマンの演技にもうなされる。

一粒の麦(大映東京1958年)

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 19583年9月14日に公開された作品。既に普及していたスコープ仕様を取らずにスタンダード画面で製作されたと吉村公三郎監督作品である。ただし、アグファ・カラーで撮られている。中味は福島県の中学生が東京方面を目指して集団就職する群像を描いたものだ。狂言廻しとして、就職担当の教師が登場する。

 東北の各県から大挙してやってきた「金の卵」の話はニュース映像や文献で知っていたが、その実態を垣間見せた異色作だ。吉村監督は女性主体の風俗映画などを多く手掛けた人だが、戦後は特に左翼的な視点から社会的な要素を加味した作品も多く発表していた。「夜の河」など風俗的な作品にもメーデーなどを描いたような作品もある。(小津監督から観客に砂を噛ませるようなことをするな、と怒られたという。)

 映画は郡山の駅に集団就職専用列車を待つ風景に始まり、都内某所に集められてそれぞれの雇い主に引き渡される様子が出る。まるで家畜の市場みたいで今だったら、考えられない光景ではある。そして、労働基準法など平気で破る工場主や経営破綻で職を失い、不本意な職場に身を落とすものがいたりとなかなか深刻な内容だ。ただ、必死に頑張るこうした人たちが日本の経済成長を間違いなく支えたのだ。それを思うと胸が熱くなる。

 この映画で生徒役になった俳優たちは子役主体の劇団の出身者が多いが、長じて役者として残ったのはほんの一部ということも如実に示している。それだけこうした芸能の世界は厳しいのだろう。この中で知っているのは松山英太郎しかいなかった。当時は前進座の所属。父君は同劇団の幹部、河原崎国太郎だ。多分厳しく仕込まれていたのではなろうか。

逃亡者(ジョン・フォード・1947年)

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 この題名を見ると、テレビの連続ドラマの方が頭に浮かぶ。しかし、逃亡者は医師ではなくカソリックの神父で、話は1930年代の中南米の某国が舞台。ジョン・フォード監督作品。最近BDがリリースされて、初めて知ったような体たらくだが、興味があったので手に取ってみた。

 まず、これはメキシコの政府と映画界がフォード監督らを招請したもので、キャメラマンは同地のガブリエル・フィゲロアを起用している。1930年代メキシコは独裁的な政治を強いていたようで、カソリックや酒を禁止していたというから驚く。そういう背景を知らないとなかなか入り込めない映画になっている。おまけにヘンリー・フォンダ扮する主人公の神父が優柔不断で煮え切らない男で、これがまた映画にテンポ感を落としているように思えた。慣れない地での戸惑いがフォード監督にはあったのだろうか。



パレストリーナ』全曲 スイトナー&シュターツカペレ・ベルリン

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【収録情報】
● プフィッツナー:歌劇『パレストリーナ』全曲
 ヘルマン・クリスティアン・ポルスター(Bs)
 ハンス=ヨアヒム・ケテルセン(Br)
 ペーター=ユルゲン・シュミット(Ten)
 フィリッツ・ヒュープナー(Bs)
 ジークフリート・ロレンツ(Br)
 ペーター・シュライアー (Ten)
 カローラ・ノセク(Sop)
 ローズマリー・ラング(MSop)
 オトマール・スイトナー指揮 ベルリン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
 
 廉価なので、購入してみた。ドイツのシャルプラッテンによる録音だが、ライセンス貸与でオランダのブリリアントからのリリース。ベルリンのショウシュピール・ハウスでのライヴという。1986年(第2幕のみ88根)というから壁崩壊直前の演奏ということになる。
 
 作曲のプフィッツナーは根っからの保守主義者でドイツの国粋主義の先鋭分子だった人物。だから共産圏だった旧東ドイツで取り上げるのは珍しいことかもしれないが、東西統一がすぐ迫っていたので、そこらは逆に思想的にも締め付けが緩んでいたということなのか。今は改修中でそのまま放置状態になっているベルリン国立歌劇場のすぐ前は衛兵交代が行われ、ドイツ共産党の首脳が演説したり、閲兵した場所だ。今行っても衛兵交代は廃止されてしまっているが、東独の中枢だった。その歌劇場が反動主義者の作品を取りあげていたというのは驚きを禁じ得ない。
 
 ブルーノ・ワルターの指揮でミュンヘンのバイエルン国立歌劇場で初演されたオペラだが、音だけで聴くと実はつらい。延々と精神主義みたいな言葉が続く。それにも拘わらずこれで4種類目のアルバムだ。ケンペがウィーンで指揮したモノラルのライヴ録音、クーベリックのDGへのセッション録音、そしてバイエルンでの映像ライヴと手許にあって、もはや屋上に屋を架す状態ではある。やや表現は他に比べておとなしい目に感じた。特に混乱の極みを示す第2幕はもっと暴れて欲しかった。そこがまたスィトナーの身上なのかもしれない。音だけだったら演奏会用に編集された3つの前奏曲で十分なのかもしれない。第3幕は不覚にも寝てしまった。
 
 

ストコフスキーによるシベリウス

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>ハイフェッツはシベリウスのヴァイオリン協奏曲を世界で初めてレコーディングしたヴァイオリニストとして知られています。ビーチャム指揮ロンドン・フィルと1935年11月26日におこなわれたその録音は現在でも広く聴かれている有名なものですが、実はその11か月前にもハイフェッツはシベリウスのヴァイオリン協奏曲をレコーディングしていたのですが、あるトラブルにより、ハイフェッツはその発売を認めなかったという経緯がありました。平林直哉著「クラシック名曲初演&初録音事典」から、その事情に関する部分を以下に引用します。

「...ハイフェッツがある箇所で独奏を効果的に響かせるために、伴奏のヴァイオリンは「もう少し柔らかく弾いて欲しい」とストコフスキーに注文を出した。しかしストコフスキーは、全体のバランスの決定は指揮者がなすものであり、このような申し出は越権行為だとし、これを退けた。そのため、最終的にハイフェッツはこの演奏の発売許可を出さなかったという。さらに、ハイフェッツはレコード会社に金属原盤の廃棄を要求したが、なぜかテスト・プレス盤は自ら保管していたのである。そのテスト盤はハイフェッツの死後スタンフォード大学のアーカイヴに所蔵され...」

こういった背景から、この録音はフィラデルフィア管自主制作CDに収められていただけだったので、今回のギルド・ヒストリカルからのリリースは歓迎されるところです。(HMV)
 
【収録情報】
シベリウス
①交響詩『フィンランディア』                   録音:1930年4月28日
②トゥオネラの白鳥                       録音:1929年5月2-3日
③ヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47              録音:1934年12月24日 ヤッシャ・ハイフェッツ(Vn)
④悲しきワルツ                          録音:1936年1月15日
⑤『嵐』より『子守歌』                      録音:1937年11月7日
⑥交響曲第7番ハ長調 Op.105                                  録音:1940年9月22日
レオポルド・ストコフスキー指揮 ①~⑥フィラデルフィア管弦楽団⑦全米ユース・オーケストラ
 
 アルバムの録音資料によるとフィラデルフィア管弦楽団とのものはRCA、最後の交響曲第7番のみCBSによる録音とある。上の販売者のコメントにあるように協奏曲はハイフェッツが販売にOKを出さなかったので、長らく聴けなかったもの。しかし、遺品からの発見でリリースされたもの。そうえいばフィラデルフィアの自主制作盤BOXにこの演奏が入っていたのを思い出した。その内、RCAから出るのかなと思っていたら、上述のような経緯があったのだ。ソリストと指揮者の「確執」はままあることだが、時としてこんなことが起きる。ストコフスキーは映画出演などをするタレント的指揮者かと思っていたら、案外専制君主的な人だったみたいな話は聞いたことがある。主張のはっきりした人だったのだろう。
 
 さて、復刻はピーター・レイノルズという人がやっていて、聴きやすい状態のもの。後は今はやらないような音の処理が面白い。①などはかなりテンポを動かしている。SP録音という制約もあったのかもしれない。最後の全米ユース・オーケストラというのはよくわからないが、当時の若手の演奏家を集めたものようだ。1940年から41年にかけて存在したようだ。多分、戦争に関係して解消されてしまったのではなかろうか、調べてみるとストコフスキーの指揮でベートーヴェンの第5番やブラームスの第1番などの録音が残っているようだ。
 
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