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浮気の季節(阿部豊・日活1959年)

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 阿部豊監督というと戦時中、東宝で戦争映画を多く撮っていたイメージが強い。しかし、無声映画などは結構洒脱な作品が多かったようだ。ただし、それらの多くは現存していないものが多いので、確認できない。そして戦後の活動については、あまり注目していなかったのだが、1960年前後まで主に日活で喜劇やメロドラマなんかを撮っていたのが最近確認できた。これはその中の1本。
 
 CSのNECOで放映されたいたものだが、夭折のスターだった赤木圭一郎が唯一出演したコメディなのだそうである。赤木と喜劇はなかなか結びつかない。当然彼が主演ではなく、ベテランの益田喜頓が中心のホームコメディ作品である。3人の娘と暮らす定年前の人事課長が主人公。そこの会社の社長は、かなりのワンマンで思い込みの激しい人物。人を表面的に見て、評価を下すような男である。ここらあたりは、お家騒動で揺れる某社の会長を想起させる。赤木はそのワンマン社長のドラ息子という設定。最後は全て丸く収まるという定石通りだが、勢いのある当時の世相を覗けて面白い。今や再開発で変貌著しい渋谷駅のハチ公交差点あたりの界隈もタイトルバックに出てきて、それを観るだけでもいい。

モントゥーによるベルリオーズ:劇的交響曲「ロミオとジュリエット」

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【演奏】
レジーナ・レズニック(コントラルト)
アンドレ・タープ(テノール)
デイヴィッド・ウォード(バス)
ロンドン交響楽団合唱団
ロンドン交響楽団
ピエール・モントゥー(指揮)

【録音】
1962年6月 ロンドン、ウォルサムストウ・アッセンブリーホール

 

ベルリオーズを得意とした巨匠が87歳で成し遂げた唯一の『ロメオとジュリエット』全曲が久々の復活!

晩年のモントゥーがウエストミンスター・レーベルに残した「第九」と並ぶ重要音源である「ロメオとジュリエット」全曲が、国内盤で久々のリリース! 1997年以来の再発となります。モントゥーの没後50年であった2014年に、DECCA、PHILIPSに残されたステレオ音源を「第九」と共にタワー限定企画盤として発売いたしましたが、この「ロメオとジュリエット」は含まれておりませんでした。今回、タワー限定企画盤「ウエストミンスター・レーベル名盤選」Vol.1のひとつとして満を持して再発売いたします。
ベルリオーズの真髄をここまで語り尽くせる指揮者は現代でも少ないのではないでしょうか。モントゥーが残したフランス音楽の音源は、50年以上経った今でも重要な演奏ばかりです。モントゥーによる力みのない自然体の音楽は、例え曲想が強い場面においても、決して緊張が強すぎて音楽が流れないことはありません。逆に弛緩する場面も皆無のため、ベルリオーズの長大な作品においても、その類まれな音楽がすんなり耳に入ってくる効果を生んでいると言えます。このような組み立てを行うモントゥーは現代においても注目すべき存在です。没後50年経っても熱心なファンが多いことも頷けます。音楽的にもスポイルされることがないウエストミンスター・レーベルの録音もモントゥーの特筆を良く捉えており、合唱を含むこの重厚な作品の価値をより高めています。尚、マスター音源は海外のOIBP盤ではなく、国内のマスターを使用しております。 (発売元コメント)

 
 もう20年も前に店頭で目にした盤ではあった。しかし、当時は高価であり、かつ、この手の大仰な作品を聴く根性もなかった。しかし、他の指揮者の演奏をその後に聴きだしてから、この録音は気になっていた。今回久々に再発売、しかもプライスダウンしてもので、手にしてみた。
 
 演奏自体は誠に立派であり、ベルリオーズの音楽が改めてフランス音楽だったと気づかされる。指揮者によっては力づくでやってしまって、独特のニュアンスが吹っ飛んでしまうものもあった。そこへ行くとモントゥーは微妙なニュアンスも生かして、力強いところも大いに盛り上げるのである。ただ、録音の状態がやや怪しげである。経年劣化を起こしているようで残念である。

訃報:レオナード・ニモイ

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レナード・ニモイLeonard Nimoy
 レオナード・ニモイが亡くなった。1931年生まれというから、日本でいえば先日亡くなった高倉健と同い年である。映画よりもテレビ映画で名をなした人というイメージが強い。SFものの「スター・トレック」のミスター・スポックが代表格。他に、「スパイ大作戦」でマーティン・ランドーの後を受けて、変装の名人のパリス役で2シーズンに渡ってレギュラーを務めている。他に「コンバット!」ではドイツ語が堪能な米兵役や「刑事コロンボ」で犯人の医師役でゲスト出演したのが記憶にある。一番古い映像は「アンタッチャブル」にギャングの一員として出たものであった。



泥だらけの純情(富本壮吉・ホリ企画制作1977年)

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 藤原審爾の小説の再映画化作品。1963年に中平康監督が日活で撮ったものが最初で、こちらは山口百恵と三浦友和共演のシリーズの1本。ここでは富本壮吉監督が担当している。

 普通アイドル映画というと可愛く明るくというイメージが強いのだが、この映画はかなり陰惨で後味が悪い。中平版はかなりきれいごとで終わっているが、こちらは暴力団の内部抗争がそのままになっている。山口も外交官の娘にしては、考え方がひどく幼稚に見えてデクに見える。むしろ、ここでは三浦友和の孤独な境涯がクローズアップされている。こちらの方が主人公といった趣である。ヒロインの乳母はおそろしいほどの拝金主義で、差別意識も極端だ。ここらあたりがかなり図式的になってしまっている。ここらがこの手の映画の限界かもしれない。ヒロインよりも石橋蓮司や内田良平の強面の面々の場面の方がそれらしくて面白い。

アナタハン(ジョセフ・フォン・スタインバーグ・大和プロ1953年)

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 「モロッコ」「嘆きの天使」といったマレーネ・ディートリヒ主演で有名だったジョセフ・フォン・スタインバーグ監督が日本で撮った珍作である。そして、これがこの監督の遺作となった。文献的にはかなり前から知ってはいたが、実際に観られるとは思っていなかった。

 出演俳優は全て日本人。知らない人もいるが、半分は脇役などで日本映画を支えた人たちである。唯一の女性でかつヒロインは後年、黒澤明監督作品でも活躍した根岸明美、新東宝のスターになった中山昭二。それに近藤宏は東宝や日活の作品によく出た人だった。バリバリのスターは出ていないが、ちゃんと日本語の台詞で芝居している。撮影は京都で行われていて、その旨の表示も出る。音楽は伊福部昭で特殊撮影は円谷英二が担当しているから、「ゴジラ」の組み合わせ。他に撮影は岡崎宏三も参加している。

 
 これだけ揃えば、さぞやと期待したが、その期待は見事に裏切られてしまった。演出が酷いのだ。晩年は落ち目とは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。これが最後の作品かと思うと、悲しくなってしまう。また、観た版は米国で上映したもののようで、監督自身の英語のナレーションが入るので、これが結構興を削ぐ。

怒りの海(東宝1944年)

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 1944年の6月に公開された今井正監督の戦前戦中の最後の作品となったもの。「軍艦の父」と言われた平賀譲の半生を描いたものである。映画は1921年(大正10年)から始まる。ワシントン条約で対英米の軍艦に対して6割の保有に制限される。せっかく建造した軍艦を沈めてしまうというところからだ。当時は戦争末期だから、当然アメリカやイギリスは悪者になる。彼らの勝手にされるという感じだ。同時に用兵部門との軋轢も描かれている。そのため、干されるのだが、今度は東大へ行って総長になって腕をふるう。だいたいそんな筋である。

 公開当時、当の平賀譲は1年前に亡くなったばかりで、封切当時の観客には生々しい素材だったろうと思われる。やはり軍の機密が壁になって、平賀博士の業績は詳細には描かれないでいる。東大に乗り込んで、リベラルな思想の持ち主の経済学部の河合栄治郎を休職させたりしているが、そうしたことも描かれていない。今見るとやはり当局の意向に沿ったものになっているは仕方がない。ただ、後年の今井作品同様に割と冷静に観察しているようなところも認められる。その分ヒステリックになってないのが救いである。

白線秘密地帯(石井輝男・新東宝1958年)

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 石井輝男監督の新東宝時代の刑事アクションものである。これは宇津井健が刑事に扮して、風俗営業に絡む犯罪を暴くものだ。敵役には天知茂が扮するが、当時はこうした卑劣漢の役が多かったようだ。もっと時代が下って、大映や東映の作品を経て、テレビでこの人は二枚目の役をやるようになる。また、チンピラ役で菅原文太が出演しているが、これが映画デビューということになる。その相棒役は大友純。同時期なら中川信夫監督の「東海道四谷怪談」での按摩宅悦が有名だが、こちらは戦前からのキャリアのあるベテラン。この人はNHKの「おかあさんといっしょに」に出ていたのを思い出す。視聴者の子供が書いた絵を任意に押えてそこから物語に発展するという番組だった。内容に比べ、クセのある顔がアンマッチで記憶に残っていた。

 この映画は文献的には71分の長さということになっているが、今観られるのは60分弱のもののようだ。損傷の激しい部分があって、その部分はカットされてしまったとある。残念なことだが、それでも犯罪映画の魅力は減っていないのは石井監督の手腕であろう。
(C)国際放映

思春の泉(改題:草を刈る娘)(中川信夫・新東宝1953年)

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(C)国際放映
 これは宇津井健の映画デビュー映画である。この人が亡くなった折に、その一場面がニュースに使われていた。現存のプリントは「草を刈る娘」になっている。リバイバル時に変えられたそうだが、石坂洋次郎の原作と同名にしたというもの。しかし、新東宝は改題されたものが極めて多い。経営破綻後、テレビ放映用に権利を売却しただけでなく、改題したりカットしたりとあまり保存状態はよくないようだ。

 宇津井健は俳優座養成所出身で、まだデビュー前に黒澤明監督の「七人の侍」に同僚の仲代達矢らと通行人の役で出たとされる。これは「七人の侍」に出たシーンの撮影が本作よりも前だったということも考えられる。

 農村の青春ものだが、宇津井の師匠格の俳優座ベテラン(東野英治郎、千田是也、小沢栄、松本克平)が大勢出演していて、やや左翼独立プロ的な感じもするのだが、中川信夫監督はそつなくまとめているという印象だ。

マズア/NYPによるブラームスBOX

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【収録情報】
ブラームス:
DISC1
① 交響曲第1番ハ短調 Op.68 [45:42]
② 悲劇的序曲 Op.81 [13:13]
DISC2
①交響曲第2番ニ長調 Op.73 [40:01]
②大学祝典序曲 Op.80 [09:38]
DISC3
① 交響曲第3番ヘ長調 Op.90 [35:14]
②ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a [19:12]
DISC4
①交響曲第4番ホ短調 Op.98 [42:31]
②運命の歌 Op.54 [15:08]
DISC5
ドイツ・レクィエム Op.45 [60:18]
クルト・マズア指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
ウェストミンスター交響合唱団
シルヴィア・マクネアー(ソプラノ)、ホーカン・ハーゲゴール(バリトン)
録音時期:1992~1995年
録音場所:ニューヨーク、エイヴリー・フィッシャー・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
原盤:Teldec

 今やレコード業界も再編成されて、元のレーベルがわからなくなってしまった。これらは、「テルデック」のレーベルで国内盤も出ていた。第2番だったか、音が左右誤って収録されていたとの指摘もあったのを覚えている。初出当時は、同じ曲をいくつもの演奏で所持するのはもういいと思い始めていた。むろん経済的な理由や物理的な理由もあった。ところが、こうした全集ものになっても、提示価格を見たら2,000円を切っている。初出当時では考えられないことだ。おまけにBOXといってもこじんまりまとまっている。そういうことで聴いてみることとした。

 クルト・マズアはあまり面白みがないと仲間内では今一つの評価だが、壁崩壊前のゲヴァントハウスは良きにつけ悪しきにつけ、昔通りを固守してきたオケというイメージで、そこでは如何ともしがたいものがあったのではないかと見ていた。それがドイツが統一されるや、アメリカの名門のNYPのシェフに就任して、何か解き放たれた感じで音楽を作っていた。これはブラームス以外のいくつかの録音でそう感じていた。今更ブラームスの交響曲全集は他の指揮者のものが棚に並んでいるので、ずっと躊躇してきた。上記のような諸条件を鑑み、聴いて見る気になったのだ。

 予想通りというか堅固な音楽を作っている。やや特徴には乏しいが安定感はある。いくぶん遅めのテンポで交響曲はまとめている。あまり強烈なアクセントもなく、耳には優しい感じがした。5枚目のドイツ・レクイエムはその遅めのテンポが効果をあげている。いつくしんで演奏しているふうがいい。「運命の歌」ともどもややコーラスは厚みに欠けるのが惜しい。

アラン・ギルバート/NYPによるニールセン:第5番&第6番

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交響曲第5番、第6番『素朴な交響曲』 ギルバート&ニューヨーク・フィル
ニールセン:
● 交響曲第5番 Op.50, FS.97 (1920-1922)
● 交響曲第6番『素朴な交響曲』 FS.116 (1924-1925)
アラン・ギルバート指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
録音時期:2014年10月1-3日
録音場所:ニューヨーク、リンカーン・センター、エイヴリー・フィッシャー・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
SACD Hybrid  CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD SURROUND

 今年はニールセンの生誕150年の当たり年である。その当たり年にアラン・ギルバートはニールセンの交響曲を全て録音してリリースした。収録したのもデンマークの「Dacapo」というレーベル。ニールセンは故国の誇りとたいへん尊敬されているようだ。ギルバート以前ではバーンスタインが第1番と第6番以外の4曲を振って、録音している。

 さて、第5番は小太鼓の活躍が目立つ作品である。ユニークな作風である。小太鼓の他にも打楽器が大いに活躍する。この曲はコンドラシンのもので初めて知ったが、その演奏がかなりアクセントの鋭いものだった。それに比べたらずいぶんおとなしい感じがした。第6番は再び形式通り4楽章に戻った作品だが、どうも第1番同様に印象が薄い作品ではある。


LPOによるRVW:第4番&第8番

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交響曲第8番、第4番 ユロフスキー、R.ウィッグルスワース、ロンドン・フィル
● ヴォーン・ウィリアムズ
①交響曲第4番ヘ短調    ライアン・ウィッグルスワース指揮

 録音時期:2013年5月1日
録音場所:ロイヤル・フェスティヴァル・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

②交響曲第8番ニ短調    ウラディミール・ユロフスキー指揮

 録音時期:2008年9月24日
録音場所:ロイヤル・フェスティヴァル・ホール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

 これはロンドン・フィルの自主製作盤。既にいろいろな指揮者のもとで、ヴォーン=ウィリアムズの交響曲を数多く演奏してきたオーケストラである。エキスパートと自他ともに認めているところである。

 今回は二人の1970年代生まれの比較的若い指揮者によるもの。第4番の方は荒れ狂った音楽が特徴で、ここでは若い分勢いがよく感じる。金管のフーガも楽器のそれぞれ際立って聴こえて、よく分離している。最新の録音らしいと思った。第8番はややテンポが遅く感じた。管楽器だけのスケルツォももう少しユーモアが感じられたらと思った。

 

ドレスデンによるR.シュトラウス生誕150年コンサート

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『リヒャルト・シュトラウス生誕150年記念コンサート』

● リーム:厳粛な歌(管弦楽のための)
● R.シュトラウス:4つの最後の歌 AV.150
● R.シュトラウス:あおい AV.304(リーム編曲による管弦楽伴奏版)
● R.シュトラウス:アルプス交響曲 op.64
クリスチャン・ティーレマン指揮 ドレスデン国立管弦楽団
アニア・ハルテロス(ソプラノ)
収録時期:2014年6月9日
収録場所:ドレスデン、ゼンパーオーパー(ライヴ)
 
 2014年はR.シュトラウスの生誕150周年の当たり年。作曲家と所縁の深いドレスデンが取り上げたのは、上掲の曲。ことにメインはこのオーケストラが初演し、献呈までされた作品。ウィンドマシーンなども使い、かなり大規模な編成を要する作品でもある。また、ここでは4つの最後の歌にリームが編曲した「あおい」が2番目に挿入されている。最後の作品であり、ピアノの伴奏をリームがオーケストレーションしたもので、作曲家の最後の「白鳥の歌」も織り込むという意欲的な取り組み。
 
 やや硬い感じはするが、まずはオーソドックスな演奏である。音だけなく演奏の様子も見られ、特殊楽器の多用も視覚的にわかるのが、映像ソフトのいいところである。
 

リャプノフ:交響曲第1番他

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リャプノフ:交響曲第1番、ピアノ協奏曲第2番ほか/シェリー(p)、シナイスキー(指揮)、BBCフィルハーモニック
リャプノフ
①交響曲第1番ロ短調作品12
②ピアノ協奏曲第2番ホ長調作品38
③ポロネーズ 作品16
ヴァシリー・シナイスキー指揮 BBCフィルハモニー管弦楽団
②ハワード・シェリー(Pf)
 
 このところスヴェトラーノフづいてしまって、いろいろ検索していたらまず第2番にヒット、それでは第1番で検索したら出てきた盤。スヴェトラーノフの指揮ではなかったが、あまり他にこれといったものがないので、これにした、という感じのものだ。
 
 ロシアの香りのする作品なのだが、カリンニコフほど強くはない。むしろチャイコフスキーの路線に近い。逆に言えば、ややユニークさには欠けるものがある。しかし、聴くと楽しい感じなのはチャイコフスキーにありがちな憂鬱な雰囲気を感じないからだろうか。まだ、この人の作品は殆ど知らないような状態。白紙の状態で聴いた最初の感想である。
 
 指揮者はロシアの人。オケはイギリスの団体だが、コンマスはロシア人らしい名前の人だから、ロシアものには手馴れているのかもしれない。ピアノはRVWなどの録音でも登場した「CHANDOS」専属のハワード・シェリー。協奏曲は一筆書きで休みなしで一気に演奏するというもの。

東京駅を通過する東北線や常磐線列車

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東京~上野ラインを扱ったJR東日本のサイト。

そもそもかつては、東北線や常磐線の列車が東京を通過して品川方面まで運行する列車は存在していた。今回のように高架ではなく、現在新幹線が通っている線がかつては在来線と路線として利用され、蒸気機関車牽引の通勤列車が新橋あたりを走行している写真も見たことがあるし、品川駅に待機している東京経由で秋田方面に運行する臨時夜行列車を電車から実際に目にしたことも。何となく新幹線開通で浮かれているが、在来線も充実して欲しいと思う。

不信のとき(大映東京1968年)

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不信のとき

 今井正監督は東映を経て、2本ほど大映で作品を撮っている。この「不信のとき」は2本目にあたる。大映得意の風俗ものだが、ここでも半ば冷めた目で登場人物を観察しているふうだ。しかもかなり意地悪くみているような感じがする。どの人物にも感情移入していない今井作品独特のものだ。社会的な矛盾を指摘するようなところはかなり後退しているが、会社の派閥争いとか、男性が女性をどうみているかも、今となっては昔といった感じではある。映画のクレジットには原作者とならんで「日本経済新聞」と出ていたから、文化欄に連載されたものであろう。

 さて、この映画は田宮二郎が大映の永田雅一社長に馘首を言い渡されたきっかけになった作品である。俳優名の序列について、不平を漏らしたところ、役者ふぜいが口を出すことでないとの理由で解雇になってしまった。今にして思えば、高給取りのスターをどうやって、縁を切るかということに躍起になっていたのかもしれない。しかし、そうやって放逐したは良いが、看板スター・雷蔵の死などで会社が傾いていったのである。なかなか厳しい現実ではある。

砂糖菓子が壊れるとき(大映東京1967年)

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砂糖菓子が壊れるとき

 前作「仇討ち」から3年の沈黙をおいて、撮ったのが本作である。封建時代の社会矛盾という堅いテーマから一転現代の風俗ものである。曽野綾子がアメリカの女優マリリン・モンローの死にインスピレーションされて作った小説の映画化。華やかなスターの世界の裏面を描いた風俗ものだが、周囲に理解されない女性の悲しみみたいなものが本筋だが、あまりそれがうまく伝わってこない。周囲に翻弄されるヒロインはかわいそうな人物だが、己をしっかり持っていないから自業自得みたいなふうにも映ってしまう。いや、今井監督はそういうことに力点を置いていたのかもしれない。だから、たいへん突き放した描き方だから、あまり共感も呼ばないものになってしまっているのは、残念に思う。

シュニトケ:交響曲第3番 ユロフスキー&ベルリン放送交響楽団

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交響曲第3番 ユロフスキー&ベルリン放送交響楽団

収録情報】
● シュニトケ:交響曲第3番 (1981)
  ウラディミール・ユロフスキー指揮 ベルリン放送交響楽団

 ユロフスキーというとオペラの映像ものくらいしか接していなかった。オペラ以外のアルバムということで、ロシアの現代作曲家シュニトケの作品が目に入った。初めて聴く作品だが、どちらかというと保守的な響きのある作品であったし、ドイツやオーストリアの過去の作曲家の作品を引用したようなところもあって、驚いたりしたものだ。

 重々しい金管のコラールやオルガンの響がある一方でエレキギターみたいな楽器の音も聴こえて、何か混然とした作品で面白いと思った。妙な不協和音もないので、たいへん聴きやすい音楽ではあった。

『バラキレフ、リャプノフ:管弦楽作品集』スヴェトラーノフ

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ミリー・バラキレフ(1837-1911):
 交響曲第1番ハ長調/交響詩「ロシア」/3つのロシアの歌による序曲
 交響曲第2番ニ短調/交響詩「ボヘミアにて」
 スペインの行進曲の主題による序曲
 シェイクスピアの悲劇のための音楽「リア王」/交響詩「タマーラ」
 組曲ロ短調/ショパンの4つの小品による組曲ニ短調
 東洋的幻想曲「イスラメイ」
セルゲイ・リャプノフ(1859-1924):
 交響詩「ジェラソヴァ・ヴォラ」
 交響曲第1番ロ短調/東洋的交響詩「ハシシ」
 交響曲第2番変ロ短調/ロシアの主題による荘厳序曲
【演奏】
エフゲニー・スヴェトラーノフ(指揮)
ソヴィエト/ロシア国立交響楽団
【録音】
1971-1993年
from Evgeny Svetlanov's Archives

 
 これらはかつてメロディアから出ていた音源と思われる。しかし、手にしたものは「 Svetlanov Foundation」というところかのリリースのものだった。
 
 二人の作曲家は師弟関係みたいなところもあって、中にはバラキレフが死の床で管弦楽編曲を依頼したものまである。共通するのは野趣があって、素材的にはたいへん魅力的なものが多いのだが、構成や展開が少し洗練性に欠けて、印象を弱めているところがある。バラキレフの作品の中にはチャイコフスキーが使った素材と同じものが出てくるものがあるが、逆にチャイコフスキーの構成力の素晴らしさを知ったようなしだいだ。
 
 ここらが親しまれていない原因だと考察する。

100万人の娘たち(五所平之助・松竹大船1963年)

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 CSの衛星劇場で「蔵出し映画」のコーナーがあって、その1本として放映されていた。この作品はフィルムセンターに所蔵されているが、16mmでの所蔵とあった。どうも1963年の作品ながら、まともな形で残っていないのではと危惧していたが、この度の放映は極めて良好な状態のプリントでやってくれて、安堵したものである。
 
 宮崎県の観光バスガイドを主人公に据えたご当地ものの映画である。大船得意の「小市民映画」の系譜の作品。五所監督だから、その辺りは手馴れたものだろうが、逆をいうと新味に乏しいということであろう。日本初のトーキー作品を手がけ、戦前は才気煥発な監督だったのに、この時期になる少し古めかしい作品ばかりが並んでいるのは残念に思ってしまう。
 
 ただ、救いは登場人物に心の葛藤が描かれていることだろう。一人の男性を姉妹が慕ってしまい、悩む姿。一方は結婚にこぎつけるも病魔に襲われて亡くなってしまう。そんなところが劇的起伏があって、まだ見られる。それから女性の社会進出もまだほんの入口的な描写だが、付け加えられていて興味深い。ただし、本筋にとってつけたような印象で必ずしも成功とは言い難い。50年以上も経過してロケ地も変貌していよう。新婚旅行のメッカと言われていた時代だが、今はそんなことを言う人はいない。今は女優として活躍している野際陽子がまだアナウンサーとして活動していた姿が少し出てくる。NHKを辞めてフリーになった頃。そして、相手になっているのが藤原あき。この人の名前を出してもわからない人が多くなったが、NHKのクイズ番組の回答者として出演していた女性文化人の一人だった。オペラ歌手藤原義江の夫人だった。このシーンは第一線で女性が活躍している例としてヒロインが東京見学している時に出てくる。昭和の懐かしさは満載ではあるが、いずれも取ってつけたような印象は同じである。

マルティノン&シカゴ交響楽団 Complete REcordings

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【収録情報】
Disc1
● ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲(録音時期:1964年11月)
● ルーセル:『バッカスとアリアーヌ』第2組曲』(録音時期:1964年12月)

Disc2
● ヴァレーズ:『アルカナ』(録音時期:1966年3月)
● マルタン:7つの管楽器とティンパニ、弦楽器のための協奏曲(録音時期:1966年3月)*

Disc3
● ニールセン:交響曲第4番 Op.29『不滅』(録音時期:1966年10月、12月)*
● ニールセン:序曲『ヘリオス』 Op.17(録音時期:1966年10月、12月)*

Disc4
● ビゼー:『アルルの女』第1組曲、第2組曲(録音時期:1967年4月)
● マスネ:タイスの瞑想曲(録音時期:1966年12月)
● ラロ:歌劇『イスの女王』序曲(録音:1967年5月)*

Disc5
● バルトーク:組曲『中国の不思議な役人』 Op.19』(録音時期:1967年4月)
● ヒンデミット:『気高い幻想』(録音時期:1967年10月)

Disc6
● マルティノン:交響曲第4番『至高』(録音時期:1967年11月)*
● メニン:交響曲第7番『交響的変奏曲』(録音時期:1967年10月)*

Disc7
● ウェーバー:クラリネット協奏曲第1番へ短調 Op.73(録音時期:1967年5月、1968年5月)*
● ウェーバー:クラリネット協奏曲第2番変ホ長調 Op.74(録音時期:1967年5月、1968年5月)*
 ベニー・グッドマン(クラリネット)

Disc8
● ラヴェル:スペイン狂詩曲(録音時期:1968年4月、5月)
● ラヴェル:組曲『マ・メール・ロワ』(録音時期:1968年4月、5月)
● ラヴェル:序奏とアレグロ(録音時期:1968年4月、5月)

Disc9
● ビゼー:交響曲ハ長調(録音時期:1968年4月)
● メンデルスゾーン:『夏の夜の夢』~序曲、スケルツォ、夜想曲、結婚行進曲(録音時期:1967年7月)*

Disc10
● カサドシュ:ピアノ協奏曲 Op.37(録音時期:1969年6月)  *原盤:CBS
 ロベール・カサドシュ(ピアノ)
 フランス国立放送管弦楽団

● パガニーニ/フレデリック・ストック編:無窮動(録音時期:1966年3月)
● ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(録音時期:1967年5月)
● ラヴェル:ラ・ヴァルス(録音時期:1967年5月)
● ラヴェル:ボレロ(録音時期:1966年3月)
 
ジャン・マルティノン指揮 シカゴ交響楽団
カサドシュのみCBS盤。他全てRCA盤
 
【シカゴ時代のマルティノン】
シカゴ響音楽監督時代のマルティノンの音楽作りは「リズムとフレージングの絶妙な感覚で、オーケストラのテクスチャを見事に浮き上がらせる」と絶賛されました。マルティノンは5年間のシカゴ響在任中にRCAにLPにして9枚分の録音を行なっています。
 「精密さ、強度、広大さとリズミカルな覚醒感の組み合わせは、特にこの作曲家の官能的なサウンド~パレットに合う」と評されたラヴェルの主要オーケストラ曲、ルーセル『バッカスとアリアーヌ』やビゼー『アルルの女』などのフランス音楽に重点が置かれつつも、ジャズの巨匠ベニー・グッドマンとのウェーバーのクラリネット協奏曲、さらにはアメリカの作曲家ピーター・メニンの交響曲第7番のほか、マルタン、ヴァレーズ、ヒンデミット、バルトーク、そして自作の交響曲第4番『至高』に至る20世紀作品が数多く取り上げられているのが特徴で、マルティノンが当時シカゴ響で取り組んでいた幅広いレパートリーをうかがい知ることが出来ます。
 中でもニールセンの交響曲第4番『不滅』と『ヘリオス』序曲を収めたアルバムは、シカゴ響からスリリングで爆発的なエネルギーを引き出し、フィナーレにおけるティンパニの大胆な強調も含め、非常に明快な解釈で作品の真価を知らしめた最初の演奏といえるでしょう。
 マルティノンのシカゴ響時代は、彼にとって音楽的には生涯でも実り多き時代といえるもので、その充実ぶりはこれらRCAの録音に明確に反映されています。シカゴ響自体も、前任者ライナーのもとでむかえた黄金時代の輝きをそのまま踏襲しており、名手のそろった木管・金管、重厚でしかも精密なアンサンブルの弦楽パートなども健在です。
 録音面でも、当時のRCAが誇った「リビング・ステレオ」という見事に完成されたテクノロジーによって収録されており、その輝かしいサウンドは今聴いてもじゅうぶんな鮮度を保っています。

【ボックスの内容】
今回のボックスのディスク1~ディスク9は、マルティノンとシカゴ交響楽団とのRCAへのLP9枚分の録音が、初出時のカップリングとジャケット・デザインによって復刻されています。またディスク10には、マルティノンの離任後もしくは没後にようやく発売されたシカゴ響とのオーケストラ曲4曲(日本で世界初CD化された時は大きな話題となりました)、それに初めてCD化される、1969年にフランス国立放送管を指揮してコロンビアに録音したカサドシュのピアノ協奏曲第2番(ピアノは作曲者自身による)という超レア音源を収録しています。
 今までCDとして発売された音源については新たに24ビット・リマスタリングが施され、未CD化音源については、オリジナル・アナログ・マスターテープからの最新リミックス&24ビット・リマスタリングが行われており、音質的には申し分ありません。
(以上:販売元のコメント)
 
 ジャン・マルティノンの指揮する音楽をまともに聴くようになったは、EMIに入れたドビュッシーやラヴェルだった。だが、名前を知ったのは、カタログ冊子でシカゴ交響楽団を振って録音したレコードの掲載物からであった。だが、何故かこの時代とEMI盤のマルティノンが頭の中で結びつかなかった。たぶん、長らくカタログから殆ど姿を消していて、聴く機会がなかったというのが最大の原因だったと思う。そして、この人が在任中は必ずしも好評をファンから勝ち得てなかったということもあったと思う。これが全貌ということで、曲目を見ると、ドイツものはウェーバーやメンデルスゾーン、ヒンデミット以外は全くない。フランスものを中心に現代音楽もあるのだが、少し強面のするものが多い。自作やアメリカの諸作がそれだ。またニールセンなどもあまり思い入れをせずに淡々と速めのテンポで演奏していて、少々素っ気ない。
 
 このオーケストラはドイツものをよく演奏してきたのに、コンサートのプログラムからはかつての常連の曲は演奏されなかったらしい。ちょっと実験的な作品やつかみどころのないフランス音楽が多く演奏されたので、一般聴衆は困惑してソッポを向いたという。ただし玄人受けはしたという。ここにはモーツァルト、ベートーヴェンもブラームスもない。(あまりこの指揮者にそういうものは期待はしないのだが。)
 
 録音は初期のステレオながら、今聴いてもいい感じだ。紙ジャケットというのはあまり歓迎するところではないが、オリジナルのLPのデザインが復刻されている。カップリングもLPとほぼ同一になっているところが多いのかもしれない。ただし、ロベール・カサドシュとの共演は当時ライバルだったコロムビア盤だ。これはソニーの下に統合されたからであり、ちょっとここは違和感を覚えるが、珍しい曲なので得した気分にもなる。価格も手ごろであるのがうれしいが、やや投げ売り的にも見えて複雑な気分でもある。



 
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