【収録情報】
・ブリテン:歌劇『ヴェニスに死す』全曲
グスタフ・フォン・アッシェンバッハ:マーリン・ミラー(テノール)
旅人、ほか:スコット・ヘンドリックス(バリトン)
タジオ:アレクサンドル・リガ
ヤシュウ:ダニロ・パルミレリ
苺売り、新聞売り:サブリナ・ヴィアネッロ(ソプラノ)
物乞い女:ジュリー・メロー(メゾ・ソプラノ)
荷物運び/ガラス造り:マルコ・ヴォレリ(バリトン)
ブルーノ・バルトレッティ指揮 ヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場管弦楽団・合唱団
演出・装置・衣装:ピエール・ルイージ・ピッツィ 振付:ゲオルゲ・イアンク
収録時期:2008年6月
収録場所:ヴェネツィア、フェニーチェ歌劇場(ライヴ)
(発売元コメント)
生誕100年を記念して、ブリテンの傑作『ヴェニスに死す』をブルーレイで。このトーマス・マン原作の『ヴェニスに死す』は、どうしても映画の強烈なイメージに支配されがちですが、このブリテンのオペラは、また違った視点からこの作品を俯瞰しています。深い知識と儚い美、無邪気さと罪悪感。これらを対照的に扱うことで、老いに差し掛かった小説家の切ない心境を描き出そうと試みられ、若き美の象徴であるタジオは、歌ではなく踊りのみで表現されます。
この演奏は物語の舞台であるヴェニス、フェニーチェ劇場で収録されたもので、アッシェンバッハが「夢を抱いてやってきた」風光明媚な街は、わざと頽廃的で暗い街に変更され、妖しく怠惰な人々ばかりが現れます。ブリテンは多くの出演者を用いることはせず、主役のアッシェンバッハと、タジオ以外は、ほとんどの役を一人のバリトンに背負わせたのです。
ここでアッシェンバッハを歌うのはアメリカのテノール、マーリン・ミラー。ブリテンを得意とする彼らしく、イメージ通りの歌唱が光っています。そしてバリトンは、こちらもアメリカのスコット・ヘンドリックス。まさに七変化と言える多彩な歌を聴かせます。タジオ役のリガのセクシーな肉体もたまりません。指揮は収録当時82歳のバルトレッティ。すっきりと纏めた音楽の中に一振りの腐臭が漂います。(DYNAMIC)
この原作は読んだこともあるし、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画作品も何回か観ている。映画では、マンがモデルとした主人公を本来の作曲家マーラーのような人物にしている。しかし、ブリテンは流石にそうせず、創作に行き詰まった小説家ということにしている。
映画でもコミュニケーションが取るのが難しそうなポーランド貴族の一家の人物は台詞はなかったが、オペラではバレエダンサーがやるようになっている。
さて、音楽は音響的な扱いのようで、打楽器のソロがやたら目立つ。アジアのガムランのような断片も聴こえる。オーケストラの編成は小規模なようだ。管楽器はテューバ1本以外は2本ずつ(トロンボーンも)であり、弦楽器の人数も少ないようだ。ピットには合唱団も入っているのには驚いた。メロディが滔々と流れることを期待すると肩透かしを喰らう。