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妻二人(大映東京1967年)

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妻二人
 
 パトリック・クェンテンという作家の原作を新藤兼人が翻案してシナリオを書いたものを増村保造監督が映画化したもの。
 
 「清く正しく」を理念とする女性雑誌を核ととした多角経営をやる社長一家の内実は、社是とは真反対の状態というのがまず背景にあるのがおもしろい。そして、元来小説家志望だった男が若い時に内縁関係だった女性と別れ、社長の長女の婿になるというところから始まる。偶然に元の愛人と再会、まだ彼と同じような男を養っていることを知る。その男は妻の妹に近づくが、姉は反対して別れさせようとするが、逆に脅迫されて、全ての関係者の運命が狂っていく。ミステリー風のメロドラマである。
 
 増村監督は若尾文子の魅力を十分に生かしながら、スピーディに物語を運ぶ。若尾に対抗して同い年の岡田茉莉子を起用して、対抗させるというのは豪勢な配役である。その二人の女性の間を右往左往する男が高橋幸治。大河ドラマ「太閤紀」の信長役でブレークして、まだその余勢がある時期。ここでも頼りない男ではなく、冷静な男性である。最後は社長である義父に反抗して新しい生活に入っていく。狡猾で悪の作家志望の男を伊藤孝雄、若尾の妹役を江波杏子、姉妹の父でワンマン社長を三島雅夫が扮している。社長が本当は乱脈なことをやっているから、コーポレート・ガバナンスが体をなしていないことがドラマで語られる。この会社がどうなるかまでは描かれてないが、今の世であれば、間違いなく破綻するだろう。

DBのストライキ

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 昔、国鉄の動労という組合が結構、先鋭的に活動していたが、ドイツでも長期ストライキが慣行されたという。この国には珍しいことだらしい。
 
 数年前にDBの列車に乗ったけれど、結構いい加減な対応で失望したことがある。ダブルブッキングだったのだが、乗る列車を間違えたと車掌がいい張り、同時に他の列車が発車していなかったのか、なんてとんでもないことを言う。結局、当初のルートが変更になったのと、二つの列車の接続連結の予定が変更が原因だったようである。いつもドイツに住んでいるわけではない旅行者だから、そんな事情に詳しい訳ないだろうと言ったら、珍しくすいませんとの返答だった。緻密なドイツ人のイメージがちょっと崩れた瞬間だった。

伊福部昭の芸術Vol.10

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伊福部昭
①管弦楽のための音詩「寒帯林」
②日本狂詩曲
③土俗的三連画
高関健指揮①東京交響楽団②③札幌交響楽団
 
 2014年は伊福部昭の生誕100周年。以前、9つのアルバムをキングレコードはリリースしていたが、新たに3つのアルバムが追加リリースされた。これはVol.10に相当するもの。
 
 まず①は長らくスコアが行方不明になっていた。1945年に旧満州の新京(長春)で初演されたものだから、無理もない。どうやら中国にあるらしいのだが、返却にはならない事情があるようだ。ただ、幸いにも写しが作曲者の遺品の中にあったので、蘇演できたらしい。既に他のレーベルでCDになっている。これは2種類目になる。さて、中身は冒頭からどこかで聴いたような音楽である。怪獣映画ではなく、普通の映画だったと思うがなかなか思い出せない。たぶん、「ビルマの竪琴」ではないかということに行き着いた。水島上等兵に現地の僧侶が諭す場面。「日本軍が来ようが、イギリス軍が来ようが、ビルマは、ビルマだ」という台詞があったシーン。何か人間が思いを巡らすシーンに使われていたように思う。また、「ゴジラ」のタイトルバックの音楽の原型のようなフレーズもある。これらは林務官をしていた経験で、満州の森林を見て、着想したものらしいが、故郷の北海道の森林も同時に思い浮かべていたのだろう。行方不明だから、機会がある度に映画の音楽にも使っていたのかもしれない。
 
 ②③については他の録音との比較になるが、②はやや重たい演奏になってしまっていて、ちょっと残念。③は管楽器殊にトランペットの音色がやや品位に欠けているように思われて、好みの演奏ではなかった。

伊福部昭の芸術Vol.12~第4回伊福部昭音楽祭ライヴ

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伊福部昭
①日本狂詩曲(校訂版)
②シンフォニア・タカプーラ
③SF交響ファンタジー第1番(アンコール・バージョン)
和田薫指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 2014.7.13 東京オペラシティコンサートホール
 
 和田薫は伊福部の教え子の一人で、アレンジや作曲で活動している人だが、今回は楽譜の誤植などを訂正したクリティカル・エディションで、師匠の出世作を演奏している。高関版よりは、①などはかなりアグレッシヴな演奏のように聴こえた。もともとはヴァイオリンと打楽器のために構想したものらしい。コンクールの折、審査員の一人ルーセルが打楽器が多すぎて、他の楽器が聴こえないのではないかと指摘したという。しかし、伊福部の考え方は管弦楽器は付け足しで、打楽器が主体の音楽と伝え聴いて、喜んだといわれる。このエピソードは初めてしった。しかし、ご本人が自分の作品が聴かれるようになったのは、ロック音楽の流行と関連あると指摘していたのと何か符号するものを感じる。
 
 最後のSF交響ファンタジー第1番のアンコール・バージョンとは、約7分間に短縮したものである。冒頭と最後を接続したような構成だが、違和感のないのはファンタジーたる所以だろう。その最後のところはむちろん東宝の怪獣映画やSF映画につけられた音楽なのだが、戦時中の伊福部作品から転用らしきものが聴こえる。こうした映画が戦争体験に何か関連があるという示唆なのであろうと思う。

伊福部昭の芸術Vol.11

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伊福部昭
①ヴァイオリン協奏曲第2番    加藤知子(Vn)
②シンフォニア・タカプーラ
高関健指揮 札幌交響楽団   2014.5.30,31 札幌コンサートホール(ライヴ)
 
 これは先に記事にしたVol.10の②③とともに札幌交響楽団の第569回定期演奏会で演奏されたものである。
まず、①のヴァイオリン協奏曲第2番が極めて珍しい。第1番は協奏的狂詩曲として「ゴジラ」のタイトルバックの素材を包含する作品として有名だが、この作品は1978年にブルノで初演された作品だ。委嘱者の小林武史のソロ、ズデニェック・コシュラーの指揮だった。
 
 すべて切れ目なしに演奏される作品で、バックのオーケストラは伊福部節が全開である。映画音楽に使われた素材は殆どないが、聴きなれた伊福部作品に他ならない。譜面は見たことはないが、相当演奏は難しそうで、それがなかなか演奏頻度が低い原因になっているのではなかろうか。しかし、氏が若い頃活動していた札幌のオーケストラが演奏したことは喜ばしい。というのも、この曲のもう一つの音源も所持しているが、オーケストラは日本の団体ではなく、アルメニアのオーケストラだった。伊福部作品は外国のオケが演奏されると何か物足らないものがある。おとなしすぎたりで、掘り下げ浅い印象がが強い。初演時もどうだったのか。向こうの人には理解できない要素があるのかもしれない。
 
 

勝谷誠彦氏の講演:「地域活性化」?はぁ?

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 勝谷誠彦氏の講演があったので、行ってみた。最近はテレビ出演も少なくなり、専ら講演や執筆が中心の活動になっているようだ。それでも、サンテレビや福岡の放送局の番組など地方局の番組にはレギュラー出演しているようだ。氏は関西の制作の番組を降板させられたので、ちょっとした話題になったのだが、表向きの理由とは異なり、農協批判が災いになったと明かしていた。
 
 さて、演題が面白い。主催が商工会議所青年部の主催だが、主催者の意図を粉砕するような内容だった。変なコンサルは入っていないかという問いかけから、始まり、要は自分のうちの店が如何に儲かるかだろうと結論付ける。もっと本音で議論しないと、実態を知らない外部の者に任せたところで成功しないし、既得権益を持った連中と戦う覚悟がないとうまくいかないよというものだった。返す刀でテレビ、新聞などのメディアも自分の都合のいいことばかり言っていることを斟酌しないとだめだと言っていた。だいたい、新聞社が政治にかかわったり、新聞資本がテレビに関わるのも、日本独特。記者クラブの制度もしかり。
 
 言っていることは過激な感じもするが、正論と思われることも多々あった。日本独特のメディアの在り方や既得権益保持者の壁など、まだまだ問題は多い。少子高齢化というが本来は別々の問題というのが氏の持論でもあるようだ。高齢化は自然現象。しかし少子というが、江戸時代は3000万人の人口だった。それを明治時代の富国強兵で産めよ増やせよで、子供を作らせた。年寄りのために子供を産めとは、もっとも下品な施策と切り捨てる。
 
 商工会議所青年部や青年会議所の連中が主張する「地域活性化」など、きれいごとを並べたまやかしと喝破したところが講演の趣旨だったと思う。

弁天小僧(大映京都1958年)

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 河竹黙阿弥の「青砥塙花虹彩画」、通称「白波五人男」の映画化。歌舞伎ではよく知られた演目だが、悪事の限りを尽くした弁天小僧菊之助が町娘の清純に打たれて、最後は商家の窮状を救う話である。その商家の主と娘は実は...。そういう伏線もありながらの、重厚なセットをバックに絢爛に伊藤大輔監督が捌く。伊藤監督得意の移動撮影や、監督のトレードマークの「御用提灯」も多く登場。テンポも小気味いい。これが東映に移ると、やたら力んだ作風になってしまったのは残念である。
 
 撮影の宮川一夫をはじめ、スタッフも一流そろい。その宮川が御用提灯のシーンの種明かしをしていた。実は同じエキストラを右に左に走らせて撮ったのだという。御用提灯を如何に多くあると印象付けるかは、スタッフの手腕だったのだろう。1958年と言えば、映画人口がピークに達した時代。そういう活気ある頃の作品である。

沓掛時次郎 遊侠一匹(加藤泰)(東映京都1966年)

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 最近はフィルムセンター所蔵作品を巡回して上映している企画が増えている。これは先に書いた「弁天小僧」同様にそういう機会でスクリーン上映で久々に鑑賞できた作品である。ただし、これが最後のフィルム上映による鑑賞になるかもしれない。最近、デジタル化が進行、昔の作品でもそういう措置がされれば、まだ鑑賞の機会もあろうが、そうでないとなかなか陽の眼を見ないことになる。
 
 さて、この作品は1966年の制作だから、東映が時代劇から侠客映画にシフトしてしまった時代となる。中村錦之助もこの年以降は東映を離れてしまう。そうした状況下の作品である。殺陣も血しぶきが飛び擬音が入るので、時代劇でもかつての東映のそれではない。ただ、人と人との情の細かい描写がこの作品の特長だろう。原作にない渥美清扮するヤクザや岡崎二朗扮する若者などは主人公に元のまっとうな生活に戻るように諭されるが、それらは主人公のアンティテーゼとして、深い印影を物語に与えているように思う。
 
 加藤泰監督の特徴であるローアングルの映像がこの作品は殊のほか目立つ。中には人物を仰角で捉えたりするので、余計そう思えるのかもしれない。

伊福部昭~生誕100周年コンサート

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①「銀嶺の果て」組曲
②「国鉄」組曲
③「ゴジラ」組曲
④「海底軍艦」組曲
⑤「地球防衛軍」組曲
⑥SF交響ファンタジー「ゴジラvsキングギドラ」(抜粋)
齊藤一郎指揮 オーケストラ・トリプティーク       
 
 これは伊福部昭生誕100周年を記念して、2014年の2月にすみだトリフォニー・ホールで行われたコンダートのライヴである。曲目は全て映画音楽のためのものでそれぞれ組曲として演奏されたもの。最後の曲はアンコールとして演奏されたもののようである。
 
 題名を見て、懐かしく思われる向きもあろうが、映画につける演奏のスコアを使っての演奏というのが、まず「売り」だったようだ。だが、そういうものがよく残っていたなというのが、まず驚きだ。一般的に映画会社は楽譜が用済みになれば、だいたい廃棄処分にしてしまう。日本はわからないが、権利関係のうるさいアメリカではまず焼却処分になる。他での再演を望まないし、映画に帰属するということで、他で勝手に演奏させないということがあったのかもしれない。だが、ここにある諸作の映画音楽は作曲家の手許にあったのだろうか。
 
 そして、実際聴いてみると、やはり映画のサウンドトラックに収録されたものとは若干異なって聴こえるのだ。録音状態がいちばん大きな差異要因だが、それだけでない。抜けがよすぎるというか、洗練しすぎて聴こえる。もっと泥臭い方が好みなのだが、あまりそうではない。オリジナルの音源よりは遥かに演奏者の技量はこちらの方が上だろう。だが、おとなしいのである。①などはもっとピアノが派手にグリッサンドをしていたように記憶する。後であれは芥川也寸志が担当していたという。③などもこちらの方が正確に演奏しているようだが、何か物足らない。演奏者の共感の度合いがあるのかもしれない。このアルバムはそんなところが気になった。

ブリテン:歌劇「ヴェニスに死す」(イングリッシュ・オペラ)

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● ブリテン:歌劇『ヴェニスに死す』全曲

 グスタフ・フォン・アッシェンバッハ:ジョン・グラハム=ハール(テノール)
 旅人/老いた伊達男/ゴンドラこぎ/床屋/ホテル支配人/旅芸人/ディオニュソスの声:アンドリュー・ショア(バリトン)
 アポロの声:ティム・ミード(カウンターテノール)
 タジオ:サム・ツァルドヴァー(ダンサー)
 ポーランド人の母親:ローラ・キャルドウ(ダンサー)
 2人の娘たち:マイア・アンジェリーナ・マザー、シュリアーナ・シェフ(ダンサー)
 ヤシュー:マルチオ・テイシェリア(ダンサー)、他
 イングリッシュ・ナショナル・オペラ合唱団(合唱指揮:ポール・ブロウ)
 イングリッシュ・ナショナル・オペラ管弦楽団
 エドワード・ガードナー(指揮)

 演出:デボラ・ワーナー
 装置・デザイン:トム・パイ
 衣装:クロエ・オボレンスキー
 照明:ジーン・カルマン
 振付:キム・ブランドストラップ
 映像監督:ロス・マッギボン

 収録時期:2013年6月18、21、24日
 収録場所:ロンドン・コロシアム(ライヴ)
 
 現在、シャンドスが売り出し中にエドワード・ガードナーがブリテンのオペラを振った映像ということが、気になって入手したもの。既に、バルトレッティがフェニーチェのアンサンブルを振った映像が手許にあるが、盛んに20世紀の作品を入れるガードナーの振るオペラはどうかということだ。
 
 このトマス・マンの小説は何と言ってもルキノ・ヴィスレィ監督の映画の影響が絶大なのだが、ここでは原作通り作曲家ではなく、小説家として主人公は登場する。ただ、明るい南国イタリアを舞台にしながら、暗い話で一向に弾まないのは、ブリテンの付けた音楽によるところ大ではなかろうか。舞台の照明も光を落したような感じで色彩感を押えているように見える。話の展開上、重要な役柄なのに、黙役が多い。ここではバレエダンサーが扮していてバレエで表現するようになっているので、オペラ・バレエと言った趣である。

ウォルトン:バレエ音楽「審問」/組曲「賢いおとめたち」(ロンドン・フィル/トムソン)

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ウォルトン
①バレエ音楽「審問」
②バレエ音楽「賢い乙女たち」~J.S.バッハの音楽のオーケストレーションによる組曲
ブライデン・トムソン指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
 
 イギリス音楽といっても、ディ-リアスやRVWといった人たちの音楽とは肌合いが異なる。むしろ、後輩のブリテンに近いような感じもするが、年代的に映画音楽を多く手掛けた人でもあった。サー・ロレンス・オリビエが主演監督したシェークスピア3部作などはその代表格である。①の方は映画音楽のようなノリではある。最近は、英文のライナーノートも億劫で読んでおらず、いかなる内容のバレエか、把握していない。こんなことではいけないとは思いつつも、音楽だけ聴いているようなところだ。真ん中にヴァリエーションがあって、そこでいろいろなキャラクターが出てくるだろうなくらいは想像している。全体的に派手めの音楽だが、聴き終えてなかなか印象に残りづらい。
 
 ②の方はバッハのカンタータやオルガン曲をオーケストレーションしているので、音楽だけでも楽しめる。殊に最後から2番目は「羊は安らかに草を食み」という有名な音楽。スココフスキーを始め、いろいろな指揮者や作曲家がバッハの曲を編曲しているが、ウォルトンは如何にということで楽しめる。フル編成の管弦楽を鳴らしてくれているのは自分としては好みでいい。
 
 これ以外にNAXOS盤があって、かなり前に購入している。その時に、価格と向こうはもう一つ小品が収録されていて、こちらは見送った記憶がある。だが、今になってブライデン・トムソンの指揮ということで俄かに、これも聴いてみようと思い立った。これでまた場所が狭くなってしまった。
 
 

ガードナー&ベルゲン・フィルによるヤナーチェク・シリーズ第1弾

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【収録情報】
ヤナーチェク:
● シンフォニエッタ JW VI/18
● カプリッチョ JW VII/12
● 組曲『利口な女狐の物語』 IW I/9(2008年マッケラス最終改訂版)
 ジャン=エフラム・バヴゼ(ピアノ)
 ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団
 エドワード・ガードナー(指揮)
 
 ガードナーがシャンドスに盛んに録音をしているが、どうもヤナーチェクをシリーズ化するようである。最初の「シンフォニエッタ」は録音が多いが、後は珍しい部類に入るのだろう。殊に真ん中の「カプリッチョ」は左手のピアノと管楽器のための作品。管楽器はフルート1、トランペット2、トロンボーン3、ユーフォニアム1という少し変わった編成である。ユーフォニアムはテューバでもいいようになっているようだが、どうもこちらの方が適しているように思う。演奏は難しそうだが、奏者はいとも簡単といった風情で演奏している。クーベリック盤もあるが、こちらの方が楽器の音色の分離が明確だ。

旗本退屈男 謎の南蛮太鼓(佐々木康)(東映京都1959年)

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 1959年1月9日に封切られた所謂、正月映画の一つであろう。今ではこの種の作品は殆ど製作されていないが、この当時はまだ人気を得ていたということであろう。
 
 東映の重役でもあった御大、市川右太衛門の十八番だが、謎解きはそれほど複雑ではなく、すぐにわかってしまうものだが、観客はそういうことよりも悪人を懲らしめる主水之介の立ち居振る舞いを楽しみ、その見栄を切るのを期待したに違いない。したがって、今観るとテンポがあわなかったり、御大の大仰な芝居に戸惑う人が多いと思う。

荒獅子判官(佐々木康)(東映京都1955年)

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荒獅子判官
 遠山の金さんというと、テレビでは盛んに製作され、放映されてきた。そのテレビが普及する前は片岡千恵蔵が戦前から当たり役の一つにしてきた。既に30年代の日活時代からあるから相当に古い。この作品ではまだ北町奉行にはなっておらず、作品の後半になって、将軍から遠山家の家督相続を許され、北町奉行に就任するいきさつが語られる。東映時代にはそうした頃のエピソードがかなりあって、それぞれの作品が時系列的に製作された訳ではない。
 
 何本か千恵蔵の金さんを観ていると、評定の場でもろ肌を脱ぐシーンはあるが、もったいをつけるのか、脱ぐのをためらうところがある。この作品でも刺青をしていることは、ほめられたことではない。以後、肌を見せてはならぬと将軍から釘をさされている。だから、この作品でも脱ぐのをためらうのである。また、悪人も同一人物とは気付かないのがミソになっている。テレビで中村梅之助などが評定の場で威勢よく脱ぐのを観てからのもので、最初は戸惑ったものである。
 
 共演は千原しのぶ、片岡栄二郎や進藤英太郎といった東映専属の馴染みの役者の他、入江たか子や佐々木孝丸が出ている。戦前の日活多摩川の名優だった小杉勇は当時東映専属であったようで、この作品を含めて結構東映時代劇に出演しているし、黒澤明監督作品の常連の渡辺篤も金さんのや退屈男のシリーズに出ていると改めて確認できる。
 

羽生選手の競技続行について

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 羽生選手が事故にあいながらも、競技を行い2位に入った。本来なら、良かったというべきだろうが、競技を強行したことについては賛否両論がある。練習中、中国選手と激しく衝突して、痛ましい姿で演技したのだが、心配なのは脳震盪である。今後の選手生命にかかわる問題でもある。米国でもアメリカン・フットボールの選手などが、この脳震盪に苦しんでいる人が多いのだ。「Concussion」という言葉が大見出しになる。感動したというが、それだけで済むかという問題をひそむエピソードではあると思う。

オラトリオ『ゲロンティアスの夢』、歌曲集『海の絵』 アンドルー・デイヴィス&BBC響、コノリー、他

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オラトリオ『ゲロンティアスの夢』、歌曲集『海の絵』 アンドルー・デイヴィス&BBC響、コノリー、他(2SACD)
エルガー:
①歌曲集『海の絵』 Op.37
② オラトリオ『ゲロンティアスの夢』 Op.38

 サラ・コノリー(メゾ・ソプラノ)
 スチュアート・スケルトン(テノール:Op.38)
 デイヴィッド・ソアー(バス:Op.38)
 BBC交響合唱団(Op.38)
 BBC交響楽団
 サー・アンドルー・デイヴィス(指揮)
 
 リチャード・ヒコックス亡きあと、その衣鉢を継いでサー・アンドルー・デイヴィスはイギリス音楽の収録に勤しんでいるが、②のオラトリオはヒコックス自身も録音しているので、厳密にはヒコックスの企画の継承ではないのかもしれないが、イギリス音楽の総本山ともいうべきエルガーの代表的な大作を録音してくれたことは、ファンとしては喜ぶべきことだと思う。
 
 このアルバムはオラトリオに先立って、管弦楽伴奏の歌曲集「海の絵」が収録されているところだ。バルビローリやマッケラスなどの名盤もあるなか、サー・アンドルーの演奏は如何にである。少しゆっくり目のテンポは心地よく耳に響く。
 
 もう一つ、このアルバムにはオラトリオの長い前奏曲の演奏会版がフィルアップされている。単独でコンサートにかけられるように最後がきっちりと終止形つけられたものである。

『シンフォニック・ユーフォニアム~協奏曲集

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収録情報
● ジョゼフ・ホロヴィッツ:ユーフォニアム協奏曲
● ウィルビー:ユーフォニアム協奏曲
● ホディノット:ユーフォニアム協奏曲『The Sunne Rising, The King Will Ride』
● ジェンキンス:ユーフォニアム協奏曲
デイヴィッド・チャールズ(ユーフォニアム)
ブラムウェル・トヴェイ指揮 BBCウェールズ・ナショナル交響楽団
デイヴィッド・チャイルズがシャンドスに登場!
英国が誇る名手によるユーフォニアム協奏曲集!

2000年にBBCヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー・コンペティションのファイナリストとしてテレビ放映された際に、マーティン・ウィルビーの世界初演を成功させ、一躍世界的ユーフォニアム奏者の仲間入りを果たした、デイヴィッド・チャイルズが吹く「ユーフォニアム協奏曲集」がシャンドスより登場!
 1972年のナショナル・ブラス・バンド・フェスティヴァルのために委嘱され、日本では日本管打楽器コンクールで常に課題曲として取り上げられ、ユーフォニアム奏者なら誰でも一度は演奏したことがあるであろうホロヴィッツのコンチェルトをはじめ、チャイルズが世界初演を成し遂げ、高速パッセージで高い技術力を要する難曲、ウィルビーのコンチェルト。ロンドン初演を成功させたホディノットの深く柔軟な音楽性が求められる知られざるコンチェルト。チャイルズのレパートリーの中でも人気が高いジェンキンスのコンチェルト。どれもユーフォニアムにとってもチャイルズにとっても重要なレパートリーを選曲。(東京エムプラス)
 
 この楽器を専門にやっている人には知られた作品だろうが、正直言って、未知への冒険であった。ただ、この楽器の持つ柔らかい音色は好きであり、こういう音は理想でもあるからだ。普段はトロンボーンを吹いてはいるが、場合によってはこの楽器に持ち替えてやることもあるからだ。
 
 だいたいが管弦楽とやることは少なく、吹奏楽やブラス・バンドで活躍する楽器ではある。たまに管弦楽曲でも「惑星」とか「ドン・キホーテ」、マーラーの交響曲第7番ではソロが割り当てられることがある。ラヴェル編曲の「展覧会の絵」のブイドロやヤナーチェクのカプリッチョもこの楽器を使うことが最近は多いようだ。
 

全日本吹奏楽コンクール課題曲参考演奏集 1991-1994

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1991年(指揮:十束尚宏 演奏:東京佼成ウインドオーケストラ)
01:A. 吹奏楽のための「斜影の遺跡」/河出智希
02:B. コーラル・ブルー〈沖縄民謡『谷茶前』の主題による交響的印象〉/真島俊夫
03:C. ロックン・マーチ/藤掛廣幸
04:D. そよ風のマーチ/松尾善雄

1992年(指揮:中村ユリ 演奏:東京佼成ウインドオーケストラ)
05:A. ネレイデス/田中 賢
06:B. 吹奏楽のためのフューチュリズム/阿部勇一
07:C. 吹奏楽のための「クロス・バイ マーチ」/三善 晃
08:D. ゆかいな仲間の行進曲/坂本 智

1993年(指揮:天沼裕子 演奏:東京佼成ウインドオーケストラ)
09:I. ターンブル・マーチ/川辺 真
10:II. スター・パズル・マーチ/小長谷 宗一
11:III. マーチ「潮煙」/上岡洋一
12:IV. マーチ・エイプリル・メイ/矢部政男

1994年(指揮:天沼裕子 演奏:東京佼成ウインドオーケストラ)
13:I. ベリーを摘んだらダンスにしよう/間宮芳生
14:II. パルス・モーションII/川崎美保
15:III. 饗応夫人 太宰治作『饗応夫人』のための音楽/田村文生
16:IV. 雲のコラージュ/櫛田胅之扶
 この種のアルバムは二つ目になる。コンクールの課題曲が決められて、どういうものかという音源が発表されるが、その時のものだ。あくまで参考ということで、聴いて楽しむという目的ではない録音ではある。したがって、プロの楽団といえども手探り状態で、一応指示通り演奏した類のものではある。しかし、至極真面目な演奏ではある。このアルバムを選んだのは、久しぶりに吹奏楽の世界に戻って、一般の団体で演奏した最初の年が1994年だったからだ。当時は出身高校で練習が出来た時代で、自分たちがやる課題曲と現役の高校生が演奏する曲が異なっていて、それぞれの音が入り混じっていたのを思い出す。今聴き返すと我々のやった演奏はたいへん乱暴なもので音楽的なものになっておらず、恥じ入るばかりではあった。
 
 作曲家の名前を見ると当時若手だった作曲家たちの中にあって、三善晃とか間宮芳生といった大御所も委嘱された課題曲を提供していたことがわかる。むしろ、こういう人たちが吹奏楽とも繋がっていたことを意外と思ったのと、うれしい気分にもなった記憶がある。

佐藤勝:映画音楽「皇帝のいない八月」

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映画「皇帝のいない八月」のためのオリジナル音楽集
佐藤勝指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
 
 1978年9月23日に封切られた山本薩夫監督作品「皇帝のいない八月」のために書かれた佐藤勝の音楽の、オリジナル音源である。佐藤勝は黒澤明監督作品や山本薩夫監督などの映画に音楽を提供した作曲家である。以前、佐藤勝の映画音楽集のCDが出ていたが、本作の音楽は著作権の関係か、オリジナル音源は収録されていなかった。映画を観れば聴けるこの手の音楽だが、台詞がかぶっていたりする。このCDは音楽だけを映画の筋にそって収録している。
 
 佐藤勝の音楽は早坂文雄門下ながら、あまりその影響は見られない。どこか生地の北海道を思わせる雄大さはある。本格的な管弦楽を鳴らした「皇帝のいない八月」は、リズムが面白くもっとまとまって音楽を展開してくれたらと思うところもある。中には主人公が右翼的な愛国の思いを演説するシーンのバックに流れる音楽はアルト・サックスのソロで民謡風というか演歌風の音楽が流れる。これは情緒的心情の皮肉とも取れる楽曲で、台詞なしで聴くとなかなか面白いと思った。

七人の侍の米国BD盤

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 アメリカの映像ソフトのメーカーにクライテリオンというメーカーがあって、結構有名な邦画をリリースしている。そこから出ているBDを手にしてみた。某通販では、ユーザーコメントで本家本元の東宝のBDは散々な評判で黒澤作品、ゴジラシリーズの殆どが評判はよくなく、この逆輸入盤は高評価なのである。
 
 このクライテリオンという会社はVHSやLDの時代から、定評のあるレーベルだった。主な黒澤作品の他、小林正樹監督の「怪談」や市川崑監督の「東京オリンピック」のLDなんかも店頭で見たことがあるので、日本映画に通暁しているようだ。画質は良くなっても海外版そのままだろうと思っていたが、冒頭の東宝のマークはオリジナルのものだった。VHSが海外向けマークだったのに、このBDではオリジナル(ただし東宝マークの前に向こうの配給会社のマークが入る)は嬉しかった。また、輪郭もはっきりとしていて、台詞も多少聞き取れやすくなった。早坂文雄の音楽は細部まできっちり聴こえる。手に入れて今は良かったと思っている。
 
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