フォルス侯爵:ヴォルフガンク・シェーネ(バリトン)
ブランシュ:アレクシア・ヴールガリドゥ(ソプラノ)
騎士フォルス:ニコライ・シューコフ(テノール)
マダム・ド・クロワシー:キャスリン・ハリーズ(アルト)
マダム・リドワーヌ:アンネ・シュヴァネヴィルムス(ソプラノ)
マザー・マリー(副修道院長):ガブリエーレ・シュナウト(メゾ・ソプラノ)
修道女コンスタンス・サンドニ:ヤーナ・ビュヒナー(ソプラノ)
ハンブルク国立歌劇場管弦楽団&合唱団
シモーネ・ヤング(指揮)
ニコラウス・レーンホフ(演出)
ライムント・バウアー(舞台装置)
アンドレア・シュミット=フッテラー(衣装)
収録時期:2008年
収録場所:ハンブルク国立歌劇場(ライヴ)
2008年ハンブルク国立歌劇場での上演をライヴ収録。指揮はブルックナーのすばらしい演奏で大人気の女性指揮者シモーネ・ヤング、演出は高名なニコラウス・レーンホフが担当。衣装デザインはケント・ナガノの『パルジファル』や、シュレーカー『烙印を押された人々』が印象的だったアンドレア・シュミット=フッテラーです。
名前ばかり有名で実際にはあまり聴かれていないオペラというのはけっこうたくさんあるものですが、この作品などはその代表格と思われるのでまず筋書きを簡単にご紹介いたします。
【あらすじ】
俗世の生活に嫌気がさした公爵令嬢ブランシュは、家族の反対を押し切って修道院に入ります。やがて政府によって一切の宗教活動が禁止され、悲嘆にくれる修道女たちは、殉教、つまり自ら命を絶つことを決意しますが、まだ新米修道女のブランシュにはそれほどの覚悟はもちろんなく、恐怖にかられて逃げ出してしまいます。
ほどなく修道女長のマリーが現れ、ブランシュに対し皆と運命を共にするように促しますが、まだ不安に怯える彼女はそれを拒みます。やがてほかの修道女たちは牢獄に囚われて死刑を宣告され、15人の修道女が次々に広場のギロチンにかけられて処刑されてゆくのですが、それを見守る群衆の中にいたブランシュは、目の前の惨劇についに宗教に殉ずる決意が固まり、自らも断頭台の上にあがってゆくというなんとも凄まじい結末です。
さらに驚くのは、これが実話に基づくストーリーだということでしょう。
【きっかけは友人の事故死】
友人の自動車事故死をきっかけに宗教に目覚め、以後、世俗音楽と宗教音楽の両方に優れた作品を書いたプーランクですが、この作品は両者を統合している点で、そうしたプーランクの流儀の頂点をきわめたものと言われます。
深くしかも透明な悲しみが独特の世界を描き出したこの傑作には、そうしたプーランクの人生の哀しみと、実際の悲劇への深い共鳴があったに違いありません。
パッケージだけを見ると、日本語字幕の表示がなく、英語字幕で観るかと字幕をクリックすると日本語とあってまず安堵した。舞台は極めてシンプルで余分なセットはない。男性の服装が1780年代には見えず、19世紀末のような感じの他は違和感もない。惜しむらくは、ヒロインのブランシュがややトウがたったようでイメージから外れる。
どうも同じ演目を執拗に追いかけるクセがあって、カウントしたらこれが3種目のソフトということになる。今回はオーストラリア出身の女流指揮者シモーネ・ヤングが指揮するということに注目した。彼女の振るブルックナーは聴いたことはないが、この歌劇場でのプフィッツナーの歌劇「パレストリーナ」の見事な指揮ぶりに感心したので、興味を惹いた。ドイツものではなく、フランスものだが、ドビュッシーやラヴェルのような肌合いではない。宗教関連なので、コラールがたくさんあって、それが厳かにきれいに鳴るのだ。
場が改まるとト書きがドイツ語で表示される。むろんこれも日本語字幕が付く。したがって筋が明確になるのはありがたいと思った。