伊藤大輔監督は、弱い者が強い者に対して抵抗するというドラマを多く手掛けている。その中で「下郎」三部作というシナリオを書いていて、その内「下郎」は戦前の作品でどうも現存していないようだが、戦後の1955年に新東宝で撮った「下郎の首」は名作の誉れが高い。そしてもう一つは映画化されなかったようだが、その代わりに発表になったのが本作。
これなどは奴さんは派遣人材ということが出てくる。参勤交代の時に口入屋から町人が派遣されるのが面白い。だが、中には侍にしてやると甘言を弄して、問題の責任をなすりつける武士もいる。ここに登場する武士たちがそうだ。そして、そういう類は21世紀の現在も日本にあるような感じがするのは残念である。
伊藤監督は中村錦之助と組むことが東映時代は多かったが、これは大川橋蔵主演。錦之助では少し強い感じがするので、少しナヨナヨとした橋蔵を選んだのだろうか。最後の大立ち回りはこの監督ならではのものと思う。
初見は蒲田商店街にあったカマタ宝塚という映画館。フィルムのコマ飛びはあまりなかったが、褪色が著しいプリントだった。今は修復したもので、観られるのはありがたい。