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Channel: 趣味の部屋
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雪の喪章(三隅研次監督・大映東京1967年)

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 水芦光子の小説を映画化した作品。公開は1967年1月14日と資料にはある。旧家に嫁いだ女性の苦労の多い半生を描いたものだが、これは原作者の体験の投影のようだ。

 狭山妙子は箔製造を営む金沢の旧家へ嫁いだばかりの昭和5年(1930年)から物語は始まる。先代当主の一回忌の法要が冒頭の場面。生前は女遊びが多かったが、そしの息子(ヒロインの夫)も女中に手を出していることがわかる。実家は経営が破綻して、兄一家は東京へ去る。夫も姑も平然としているのが我慢ならず、自殺を試みるが、番頭格の職人に救われるが、夫に誤解を受けて、彼は出奔してしまう。女中は夫の子を身籠り出産、ヒロインも男子を出産する。雪の日に女中は屋根から落ちた雪崩にあい、我が子を亡くす。失望のうちに帰郷する彼女を駅まで見送るが、今度は狭山の店から出火して、姑が死亡。これまた雪の降る夜。経営は行き詰まり、夫婦は大阪に出る。夫は勤め人として仕事に出るが召集令状で出征。その最中、出奔した職人が出世して実業家として表れ、援助を申し出るが、ヒロインは断る。その直後、夫は肺病で送還され、やがて空襲が激しくなるので、かつての女中がやっている金沢の旅館に疎開する。そこでまたかつての不倫が再開するが、夫の菌がうつったのか、女中は病死、後を追うように夫も血を吐いて死ぬ。いずれも雪の降る日だった。終戦後、旅館を切り盛りするヒロインの前に再び、職人が表れてかつて狭山家にあった金屏風の返還を申し出る。息子が怪我でその旅先に行くと、その職人の声を聴く。後で、彼の死亡の報をきく。

 ざっとこんな話だ。題材的には登場人物同士がぶつかり合うのかと思ったが、ぎりぎりのところで彼らは回避しているように見える。本質的に全て善人なのである。そこがやや物足らないものを感じてしまう。ただ、三隅監督はだれずにまとめているのは職人として腕を感じる。彼は珍しく東京撮影所に乗り込んでそこのスタッフや脇役を
を京都のそれのように苦も無く動かしているように見える。音楽は池野成で、師匠の伊福部昭ばりに重たい音楽をつけている。予告編を見ると何と「白い巨塔」のテーマを流用していた。


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