こんな映画があるとは知らなかった。1963年に起きた「吉展ちゃん誘拐事件」を再現したセミ・ドキュメンタリー作品である。封切りは1966年9月8日。
>1963年に発生、解決まで2年以上を要した稀代の誘拐事件「吉展ちゃん事件」の主任刑事の手記をもとにしたドキュメント・ドラマ。上野に近い入谷町で誘拐事件が発生した。警察は犯人を追うが、50万円の身代金を奪われてしまったうえ、4歳の子供は帰ってこない。非難を浴びた捜査陣は、143人もの刑事を動員して公開捜査へと踏み切る。(NECOチャンネル解説)
この事件のことは鮮明に覚えている。もちろん、登場人物の名前はフィクションとして変えられている他は、ほぼ刑事の手記の通りであろう。東映作品だが、主要な役は新劇畑の芸達者が占め、後は東映東京のベテランの脇役が」固めている。大スターの顔はなく、むしろそれがセミ・ドキュメンタリー的な雰囲気を出している。主人公の刑事は芦田伸介が扮しているが、当時放映中だった「七人の刑事」のイメージもある。伊福部昭の音楽も、華を添えている。
関川秀雄監督は本来こうした社会派的な作品が本領だが、この直前は風俗映画などでお茶を濁すような感じで不本意な感じではなかったのか。それが50年代に見せた本領を観た思いがする。地味ながら味わいのある映画だった。