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Channel: 趣味の部屋
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雁の寺(川島雄三監督・大映京都1962年)

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 1960年代は結構、水上勉の小説を映画化したものが多かった。本作はその魁となった作品。若尾文子はこの後、「越前竹人形」(吉村公三郎監督・1963年)と「波影」(豊田四郎監督・1965年)がある。一方、東映の佐久間良子も3本ほど水上勉原作の映画に出演、「五番町夕霧楼」(田坂具隆監督・1963年)「越後つついし親不知」(今井正監督・1964年)「湖の琴」(田坂具隆監督・1966年)という具合だ。他に内田吐夢監督による「飢餓海峡」という大作や篠田正浩監督による「あかね雲」という作品がある。

 もともとは推理小説から出発した人で、本作もまだそういう雰囲気を色濃くたたえている。修行僧が住職を亡き者にするあたりがそうだ。だが、これは若い頃僧籍にあった原作者の仏教界の欺瞞を告発した作品である。以後、一貫して強い力を持つ者の偽善性とその力に泣かされる者の悲哀が通奏低音のようにして物語が展開している。70年代に入ると篠田正浩監督による「はなれ瞽女おりん」くらいしかめぼしい作品はない。1983年には「白蛇抄」が映画化されるが、話を現代に移ししかもエロを売りとする将に邪道な扱いで、自分としては唾棄すべき作品となってしまっている。

 この映画の最後に子雁の部分が修行僧により持ちさられるが、後に絵師の弟子が修復した絵にはついに子雁は修復されなかったというオチで映画は終わる。また、基本はモノクロ作品だが、タイトル部分と現代の寺のシーンはカラーとなっているという川島監督独特の表現も面白い。

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