この録音は、子供の頃からその存在を知っていた。レコード店にあったフリーカタログでその全集のLP-BOXの宣伝を見ていたにすぎない。そのカタログには燕尾服を着て指揮のポーズを取った渡辺氏の写真なんかが載っていた。音として聴くのは、今頃になってからだ。初めてのステレオのシベリウス交響曲全集ということだ。モノラルならばイギリスのアンソニー・コリンズなんかが７曲全て録音している。
シベリウスは周知の通り、イギリス人が好む作曲家だが、渡辺氏のご母堂はフィンランド人。氏にとっては母国の音楽とも云えるものだ。聴いてみて、やや古さはあるものの、かつての日本フィルは大いに頑張った演奏ではなかろうか。盛んにテレビ・ラジオなどのメディアに登場し、学校用の鑑賞レコードなどの録音も日本コロムビアに入れていたと思う。録音は比較的慣れていたのではなかろうか。しかし、シベリウスともなると、愛着もひとしお、そういう意気込みが感じられる。彼らの良き記録である。
この度、タワーレコード独自企画として再発売。帯の定価表示は税込みで\3.675-とあるが、初出時は１万円以上もした高価なものだった。よほどの金持ちか好事家でないと手を出さない代物の印象だった。