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Channel: 趣味の部屋
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伊那の勘太郎(滝沢英輔監督・東宝1943年)

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 この映画の主題歌「勘太郎月夜」は何度も懐メロ番組でも取り上げられていたが、肝心の映画はそうそう観る機会はないようだ。滝沢英輔監督はこの主題歌を好まず、画面になかなか流そうしなかったので、たいへんだったとは、当時のビクター・レコードのプロデューサーの弁である。「ビクターさんの唄は上品だから」と皮肉を云っていたらしい。製作は1942年に完成して1943年1月に公開された。アメリカとの戦争も始まっていて、股旅ものは時節柄なかなか検閲が通らないから尊王の話を絡めた話になっている。
 
 残念ながら戦後のリバイバル時に「伊那節仁義」と改題された上に、30分近くカットされた再編集版しか現存していないようだ。話をつぶさに見ると「天狗党」の話である。1969年に山本薩夫監督が取り上げた内容に近い。勘太郎は「斬られの仙太」のような存在ではないか。1本刀のやくざなので、天狗党の中には裏切り者になりかねないと色眼鏡で見る侍が登場する。ただ、そこまでで山本作品の「天狗党」のように「階級闘争」みたいなシーンはないし、勘太郎が他の党員から危害を加えられるシーンもない。倒幕に役だったという映画とばかり思っていたが、天狗党の末路を知る者には決して明るいラストではなかった。何かそこに監督やシナリオライターたちの屈折した思いがあるのかな、とも思った。

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