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Channel: 趣味の部屋
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何もかも狂っていやがる(若杉光夫監督・日活1962年)

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 最近CSの衛星放送で、「蔵出し映画館」のコーナーの1本として放映された作品。資料によると1962年4月18日に公開されている。同時代の作品では「座頭市物語」「キューポラのある街」が同月に公開されている。
 
 監督の若杉光夫は劇団民藝所属の演出家だった。最初大映京都に入所して黒澤明監督の「羅生門」などの助監督も務めていたが、レッドパージで撮影所を追われて、民藝に入った。舞台演出の傍ら同劇団が関係した映画の監督もいくつかやっているが、これもその一つだろう。1954年に制作した「美しい人」がフィルムセンターに所蔵されているし、翌年の「石合戦」もCSで放映された。晩年には山口百恵主演の「風立ちぬ」の監督も担当している。夫人は劇団員の南風洋子だった。
 
 彼の監督作品を観た限りでは、出演者の大半が民藝の団員で占められている。本作もそうで、日活が同劇団と業務提携をしていたことも関係しているのだろう。高橋秀樹がインタビューで芝居の基本などは民藝から講師が来て教わったと云っているから、俳優の教育も担当していたようだ。そして脇役として俳優も供給、いろいろな作品で民藝のメンバーが多かったように思う。
 
 さて、映画の内容だが、社会の底辺であえぐ少年の物語で、なかなか大人たちの理解が得られない。担任の国語の教師に至っては不良生徒として彼を追い詰めたりする。不良の一歩手前までゆき、ヤクザから勧誘されるが、踏みとどまり職を見つけて働くところで終わる、といった内容。何か道徳の映画のようではある。少年役の寺田誠は新人というクレジットだが、子役としての実績が既にあり、今井正監督の「米」などにも顔を出していた。この数年後の山本薩夫監督の「証人の椅子」にも出演。演技は無難だが、不良少年にしては少し優等生的でやや違和感があったし、時々大袈裟な表情をする。これは出自が前進座の幹部俳優の子息だからかもしれない。姉は寺田路恵で今は麦人と改名して声優なんかもやっているようだ。
 
 話を元に戻すと社会派ドラマとしては学歴格差とか貧困によって教育が十分受けられないといったことがテーマのようだが、表面的で物足らない印象を持った。だが、華やかなスター映画の陰で制作されたこういう映画を日活が制作していたというのは知られていいように思う。

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