CSの衛星劇場で「蔵出し映画」の1本として放映されていた。まさにレアな作品で取り上げられるまで全く知らなかった作品の一つである。主人公は田宮二郎扮する若い医者。疎開の時に世話になった村の医者が盲腸にかかり大学病院からやってきた。そこには幼馴染の医者の娘が助手としていた。杓子定規に診療するので、村人とうまくいかない。そのうちに村八分になっている母子に出会って、実は村の有力者の仕業とわかり、立ち上がる.....、こんな内容で上映時間わずか67分の中篇。
クレジットは娘役の仁木多鶴子がトップで田宮は新人との注釈がつく。この当時の実績に基づく序列かと思われる。田宮二郎という芸名がついてごく初期の作品と思われる。というのも同年始めに公開された「さようなら、今日は あなたと私の合言葉」(市川崑監督)では柴田吾郎として登場していたからだ。まだ芝居も生硬だし、一本調子の演技ではあるが、頼もしさも感じられる。内容は今は懐かしい農村の人情ものだ。戦前の日活多摩川の系譜を継ぐ大映東京ならではの映画だ。見明凡太朗、星ひかるといった旧・日活多摩川からいた俳優が出ていて余計にそう思えた。添え物の作品ではあるが、好感が持てた作品であった。