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Channel: 趣味の部屋
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花咲く家族(千葉泰樹監督・大映東京1947年)

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 1947年5月9日に公開された作品。親の云うことを従順に聞くべきという考え方の母親(瀧花久子)は、長男(若原雅夫)の嫁(折原啓子)が気に入らない。趣味もそれから作る料理も自分とは異なり、馴染めないのだ。既に長女は他家へ嫁ぐが、しきりに母親のものをねだり持っていく。次男(小林桂樹)はまだ医学生だが、卒業すると母親は自分の気に入った遠縁の娘と結婚させようとする。実はその娘を長男の嫁に考えていたことが明かされる。長男は亡夫のように医者にならず、自分の意志で気に入った女性と結婚、次男も思ったようにならない。全て自分の思惑通りにならないので家出してしまう。長女のところへ行けば、婿は案外で失望し、弟夫妻のところへ身を寄せる。亡夫の命日に墓参をしたら、一足先に長男、次男それに次女(三條美紀)が参っていて、父親が存命の時はこんな状態でなかったというのを物陰から聞いて、自分の非を悟る...。だいたいそんな物語だ。

 棚田吾郎のオリジナルシナリオを映像にしたものだが、たとえば自発性とか、女性が持っている重い荷物を代わって持ってやるといった戦後の民主主義の啓蒙もさりげなく描かれるが、本筋はよくある嫁と姑の確執である。しかも、かなり陰湿な確執で、70年も前の話なのに少しも古びていない話なのである。映画だから、何とかハッピーエンドで終えているが、難しい問題をさりげなく扱っているところにこの作品の値打ちがあるように思う。

 母親役の瀧花久子は、嫁をいびる役をやっているのは意外なキャストに自分には映った。どちらかというと理解のある女性を演じることが多かったからだ。戦前は日活多摩川のスターであり、巨匠・田坂具隆監督の夫人になった人だ。戦後は成瀬巳喜男監督の「稲妻」で上品な下宿のおかみさんとか、山本薩夫監督の「白い巨塔」では主人公を女手一つで育てる気丈な母親を演じていた。だが、ここでは聞く耳を持たない、子は親に従うのが当然とばかりの頑迷な人物に扮している。だいたいが柔和な表情の女優だから、目のふちを黒く化粧して、きついメイクアップになっている。演技力は相当なものだということを認識させられた作品だ。

 これは隠れた佳作といったところで、観てたいへん満足した。
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