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Channel: 趣味の部屋
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フェリックス・ワインガルトナー(1863-1942)

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 最近、ワインガルトナーが録音したEMI盤の復刻BOXが韓国のレーベルから再発された。1923年から40年あたりまでの網羅されている。1925年くらいまでのものは電気式ではなく、蝋管による収録で音は貧弱である。弦楽器はプルトを極端に減らし、特殊な楽器を使用していたのではなかろうか。管楽器は一応スコア通りかもしれない。しかし、中には妙なピッチで壊れた玩具の録音機のような音がしてとても鑑賞に堪えない代物もある。それでも楽団のクレジットはロンドン交響楽団とか書いてある。だが、1923年当時はまだ出来たばかりで創立20年も経ていない新興楽団。その当時のブラームスの第1番を聴いてみたが、弦は1プルト(2人)くらい。それも同じ楽器同士の音程も怪しいし、フルートの類も上ずって聴こえる。コンサートだとまともにいったのだろうか、と余計な心配もするほど、ひどいものだ。ワインガルトナーの解釈も多々の制約があってわからない。ディスクの収録時間に合わせてなのか、テンポは速い。今はその恐いもの聴きたさもあって、先に古いものが収録されたものを先に聴いている。同じ盤に30年代後半の録音もあって、それなんかはかなりまともな状態であるし、今も鑑賞して問題はない状態だ。そのあたりを聴くとドイツ・オーストリア系の正統な系譜を継ぐ指揮者であることがわかる。同世代のトスカニーニほど鮮烈ではないにせよ、落ち着いた演奏が楽しめる。
 
 この人は日本にも来てくれて新交響楽団(今のNHK交響楽団)を振っている。同世代の他の巨匠たちは極東まで足を延ばしてくれなかったのとは対照的だ。かれはユダヤ系で本来の活躍の場をナチスによって奪われた人だ。スイスを本拠にして、イギリスのオケとの共演が結構多い。まだ併合前にはウィーン・フィルとのベートーヴェンも録音に遺してくれているのは幸いである。件のBOXは全て聴き終えてから改めて記事にするつもりでいる。近年の作曲家の再評価も高まり、交響曲・管弦楽の全集もCDになっているという。伊福部昭らの作品を審査もかって出て日本楽壇にも大いに影響を与えた人でもある。
 
 改めて蝋管式の録音は、聴けないと思った。かなり前、NHK-FMでトスカニーニの特集で1921年のスカラ座のオケで録音されたものを聴いたが、やはり鑑賞には堪えない。トスカニーニ本人は失望してガラクタの山と云ったと伝えられている。他にニキシュ&BPOによるベートーヴェンの第5番も墓場からの音楽のようだった。そして、今ニューヨーク・フィルの175周年のBOXも出ているが、このオケが初めて録音に臨んだ1917年の録音(米コロムビア)も含まれているし、1922年頃のメンゲルベルクとの録音(米ビクター)も収録されているらしいが、多分大同小異の状況ではなかろうか。フルトヴェングラー&BPOによる1926年のベートーヴェンの第5番も怪しげな感じだった。ともかくも失望することは間違いなしであろう。

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