アメリカ映画はほぼいい保存状況にあると思っていたら、例外的な作品もあるものである。本来は132分の上映時間の作品だったものが、戦時中に再編集されて107分に短縮されカットされた部分は失われてしまったと思われていたいわくつきの作品である。オリジナルネガも損傷が激しく、オリジナルのプリントも消失したからだ。製作会社・コロムビア映画を買収したソニーがUCLAと共同で修復して音声は全て復元し、7分間映像が見つからなかった部分はスティル写真で対応した修復版がリバイバルされ、かつDVDにもなった。DVDの特典には修復の経緯が語られていて、何と戦時中にリバイバルにはルーズベルト政権の要請で反日的な冒頭の説明テロップに変更されて、改題までされていることも語られている。しかし、話は日本は全く関係ない。原作は中東が舞台だが、映画は何故か中国になっている。
理想郷というかシャングッラという言葉を紹介したような作品だが、そこは老化がストップして長生きが可能な世界でかつ犯罪もない平和な世界でもある。外界の戦争も起きそうな世界へのアンティ・テーゼというのが面白い。映画製作された当時はスペイン内乱、イタリアのエチオピア侵攻、日中戦争の勃発であり、ドイツが戦争への傾斜が強くなったきな臭い時代だった。それに反対するかのような作品ということも驚きではある。