題名の通り、黄門様は脇に廻り、佐々木助三郎と渥美格之進が中心になった沢島忠監督作品である。従来に時代劇言葉ではなく、現代の口調の台詞を喋らせているのが、新しいところか。やや歌謡映画的でもあるが、当時ビクター・レコード専属の渡辺マリが1シーン歌うのみで、歌が過剰にある訳ではない。しかし、音楽の担当が何と佐藤勝なのが、東映的でない。周知のようにこの人は黒澤映画に音楽を提供した人であり、東映時代劇を吹き飛ばした「用心棒」の音楽を提供した人だ。軽いノリで渡辺マリがよく歌っていたドドンパのリズムの多用は、雰囲気を明るいものにしている。ただ、やたら大勢で乱闘するシーンが出てくるのは、少々落ち着かない。
新風を吹き込ませようとしたが、これが月形龍之介の水戸黄門の最後の映画作品になってしまった。これ以上やりようがなくなったのだろうし、飽きられてきたこともあるだろう。黄門様と若い二人が結びつくところが描かれているが、これから先展開のしようがなかったのではないか。月形の黄門様はやがてテレビに移行して、TBS系で30分番組として復活することになる。