1975年10月4日に公開された小林正樹監督作品。しかし、元来は1972年フジテレビ系列で8回に分けて放映されたテレビ用のドラマだった。それを200分に再編集して公開されたもの。所謂ディレクターズカット版である。死を意識した初老の会社経営者の物語である。映画の殆どがヨーロッパの風景に割かれている。そして、旅の途中で不治の病にかかっていることが発覚してしまう。以来、ずっと死と向き合うという心象風景として物語が進行していく。そして死神が登場して語りあうのである。仕事一途ということへの反省みたいな面もあって、なかなか興味深い。70年代はまだ高度成長の真っただ中なのにである。来るバブルの崩壊の後の反省を予見するような内容だ。
200分という長尺はインターヴァルがあるとはいえ、きつい。これがテレビ・ドラマだと8回に区切られるので見やすいのかもしれない。果たしてオリジナルのドラマが現存しているのだろうか、とふと思ったりもする。小林監督はテレビ用のものを好まず、映画として作ることを念頭に入れていたという。しかし、16mmでの撮影のようで、発色が今一つ冴えない。まあ寒い冬の時期というせいもあるのだが。後は加藤剛によるナレーションがやや過多という難点もある。