>吉川英治の同名原作をマキノ正博監督が映画化。阪妻が一人二役を演じた豪快時代劇。 三味線の名人が家宝としていた名弦「山彦」の争奪をめぐって巻き起こる、驚天動地の大騒動を描く。
この映画は1937年の夏に公開されたもので、「風雲の巻」と「怒涛の巻」の2部構成が本来の姿だが、今観られるのはその2つは再編集した総集編である。最近CSで放映された折の短いコメントを掲載したが、性格の違う役柄を阪東妻三郎が演じたことがポイントの作品。動静の違うを演じ分けが面白いが、この当時まだトーキーというものに馴染めてなく、台詞廻しもやや甲高いのが難点であり、本人もかなり悩んだと伝えられる。わざと声をつぶしてダミ声にしたりもした。
話は宝物の争奪戦ということで、時代劇にはよくあるパターンの話。展開はやや「丹下左膳」に似てなくもない。吉川英治というと「新・平家物語」や「宮本武蔵」といった大作もあるが、本来はこうした読みやすい物語を多く書いた大衆作家でもある。マキノ雅弘はこの物語が気に入ったのか、戦後1959年に東映で自らリメイクしている。主演は大川橋蔵であった。