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シモーネ・ヤングのブルックナー①

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ヤング3
【交響曲第00番】
この交響曲は、ブルックナーが30代の終わりに、作曲の師でもあるオットー・キッツラーの指導を受けたのちに書かれたものの、その師からあまり評価を得られませんでした。そのため演奏もされませんでしたが、しかしブルックナー存命中に破棄されることもなく、没後17年を経た1913年には楽譜も出版、初演もおこなわれる運びとなっていきました。
それから60年後の1973年には、ノヴァーク校訂による原典版も出版、実演ではあまり演奏されないながら、録音は次第に増えていき、シャピラ、ロジェストヴェンスキー、インバル、ティントナー、アシュケナージ、スクロヴァチェフスキ、ボッシュらによる演奏がリリースされています。
作風はメンデルスゾーンやシューマンの影響を感じさせる聴きやすいもので、部分的にのちのブルックナー・スタイルを感じさせるものがあるなど、ロマン派好きやブルックナー好きには注目度の高い作品といえるかもしれません。
面白いのは実際の演奏時間で、ボッシュの36分からロジェストヴェンスキーの51分まで、その差は実に15分もあります。シモーネ・ヤング盤は約42分。妥当なテンポ設定でじっくり楽譜情報に取り組み、各声部の巧みなコントロールと和声感の見事さで着実な成果をあげています。

【交響曲第0番】
ブルックナー40代なかばに書かれており、曲順としては第1番のあとに位置しますが、ブルックナー自身によって「0(ドイツ語でヌルテ)」とされてしまったため、習作のような扱いを受けてきました。しかし実際に聴いてみると、後に第3番や第9番にも使われた素材が数多く登場し、さらにブルックナー的な雰囲気も備わっているので、他作品と同様、覚えて慣れさえすれば、魅力ある初期交響曲として十分に楽しむことができるものと思われます。
CDもすでに20種類以上が発売されており、これまでにさまざまな指揮者とオーケストラが、それぞれの主張の込められたアプローチを展開、38分のショルティから53分を超える下野まで、演奏時間も大きく異なっていました。今回は、49分38秒というじっくり目のテンポで細部情報まで丁寧に扱っています。

【交響曲第1番】
使用楽譜は初稿ということで、ここでは1865/66年に書かれた第1稿、いわゆる「リンツ版」の最初の姿をウィリアム・キャラガンが校訂したヴァージョンが用いられています。
これは通常のノヴァークとハースによる「リンツ版」が、1877年におこなわれた改訂を含むものとなっているためで、さらに1891年に加えた大胆な改訂を反映した「ウィーン版」との比較も興味深いところとなっています。 このキャラガン校訂版の録音はこれまでティントナーによるものしかありませんでした。
【交響曲第4番】
第1稿を使用。通常親しまれている第2稿と比較すると、第3楽章スケルツォが全く別の音楽であったり、第4楽章に5連符が執拗に用いられ、ポリリズムをフル・オーケストラで処理するなど、ブルックナーのけっこうワイルドな原意のおかげで演奏困難な部分を多く含むのも特徴ですが、慣れてしまうと非常に面白い音楽であることも確か。
インバルによるテルデック盤で広く知られるようになり、近年は録音量が増える傾向にありますが、シモーネ・ヤング盤は中でも高水準なものとして注目度の高いものです。

 
 エームスというドイツのレーベルから出たシモーネ・ヤングのブルックナー全集を入手した。単独で個々に発売された折は価格もさることながら、ティントナーのブルックナーを聴いている折で、手が廻らなかったと記憶している。今や投げ売り状態のCDで彼女のブルックナーも例外ではない。逆にだからこそ入手いようと思い立った。

 大きいオーケストラを盛大に鳴らす曲は結構好きなのだが、ブルックナーはどうも疲れてしまうので、少しずつしか聴けない。それでも少しずつ聴いた中から記事にしてみようと思う。この全集は習作の2作品と何回も改訂された作品を初版を用いることが特色。

 そこでまず一番ポピュラーな第4番から聴いてみた。この作品も初版での演奏である。前半の2つの楽章は今も演奏されている構成とほぼ同じだが、楽器の鳴り方が違う。普段聴くと金管が盛大に鳴っているが、ここでは弦楽器が受け持つ部分があったりである。後半の2つは構成が異なる。全く別物かというとそうでもない。決定版に使用された素材はふんだんに出てくる。ここは決定版の方がさすがにすっきりしていると感じた。初版はインバルなんかの演奏を聴いた経験はあるものの、どこかマーラー的で好きになれなかったが、シモーネのこの演奏がブルックナーの感じが出ていたように思う。

 他に00番と0番という習作も聴いてみた。これらはどこかシューベルトの交響曲に近いような感じだった。考えてみれば、第4番初版も含めて楽器編成は初期ロマン派典型で、テューバが使われていないのである。

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