原節子が亡くなって、その追悼するために上映されたりソフト化されたりして、陽の目を見る作品も多い。本作はそんな1本であろう。まず、原節子が大映の作品に出るというのはかなり珍しいのではないか。東宝争議の影響かもしれない。
さて、本作は文献でその存在を知っていたが、映画自体が現存しているかどうか、こうして主演俳優の死によって観られるというのも、何だか複雑な気持ちになる。開始早々、この作品は労働組合協議会との共同企画で、日教組が製作に絡んでいることが出てくる。この2年後に今井正監督の「山びこ学校」と同じような感じではある。また、配役のクレジットに高山栄の名前がある。子役の一人だが、どうやらテレビのマンガ「エイトマン」のエイトマン=東八郎の声を担当した人のようである。こうした発見はあるものの、少し平坦な感じがする。人間関係も図式的に見えてしまうのは残念である。