セシル・B.デミル監督はこうした旧約聖書ものが多いという印象だ。古代のお話を娯楽作品に仕立てあげるのだが、その好例は「十戒」だが、これはその作品に先立つ1949年の作品。伝説の怪力無双の男サムソンと、彼を誘惑のワナに陥れる美女デリラの物語である。
この話はこの映画で知った。もう何十年も前にNHKの総合テレビで放映されて、サムソンの弱点とかが描かれていたのを思い出す。本作はカラー作品だが、その時はカラーテレビで観たのだろうか。そこらは曖昧である。ただテレビの小さな画面からも迫力は感じられた。そして、この話をオペラにした作品があることは後で知ったのである。サン=サーンスの代表的なオペラだ。ただ舞台だから、映画ほどの迫力はない。こういう大仕掛けは映画に限る。
なお、ヒロインのデリラに扮したヘディ・ラマーは、戦前のチェコ映画「春の調べ」(1932)で、全裸で野を走る女性に扮して熱演したヘディ・キースラーである。