評判に釣られて、劇場へ行ってみた。
旧作の最初の作品同様に「ゴジラ」は寓意の象徴である。1954年は水爆による核の恐怖と自然界からの「報復」の意味合いがあったが、今回もいろいろなものに置き換えることができる。どうも製作者は危機管理のことを描こうとしたように思う。決断を迫られる首相の頼りないあり方は現在の政治の皮肉も見える。一方で淡々と仕事して任務を遂行する自衛隊は頼もしく描かれている。想定にないことばかりで法制が追いつかないことも描かれていて、多分に政治的な色合いの濃いものになっていたのは大いに興味が持てた。2時間の上映時間ながら、画面転換もてきぱきと進み、だれなかったし、旧作のように変に登場人物を懊悩させなかったことは良かったと思う。
ただ、音楽の扱いはいただけない。伊福部昭の楽曲は新たに演奏されたものかと思ったら、旧作からの転用。音質の差が歴然としていたし、何かやっつけ仕事のようであった。
出演者の中に岡本喜八監督の名前があった。故人だから写真のみの登場だが、これは何か。(上のキャスト表にはないが本篇のクレジットに記載がある。)偏屈だが有能な科学者が写真だけ登場するのだが、それを岡本監督の写真を使っていた。監督も苦笑しているのではないか。登場しないが、存在感がある役柄で先輩監督への敬意だと思った。最後にクレジットされいる野村萬斉はどこに出ていたか。何とゴジラ役だそうだ。旧来と違い着ぐるみではなく、コンピューター処理でゴジラの動きをしていたのが彼だと云う。他に小川真由美とか前田敦子といった有名な人たちが主要な役柄でないのに、出ていたりする。
冒頭の東宝マークもまず現在のものが出て、ご丁寧にもかつてのロゴに切り替わるのも旧作へのオマージュだろう。