午前十時の映画祭で上映されていたので、出かけて鑑賞した。正直あまり外国映画には詳しくなく、キネマ旬報社刊行の「アメリカ映画200」の中に掲載されていたので、その存在を知った。日本公開は1975年ということで、その当時は受験があったのと、往年の作品は専ら日本映画に集中していた頃。70年代の作品は内外を問わずあまり興味がなかったから、この映画も知らなかった。
この映画は老人とペットの猫のロードムービーということが謳われているが、そんなお気楽な内容ではないように思った。アメリカでも老後のことがやはり問題になっていると思うが、これはそれを取り上げたものと云っていい。近所の公園でいつも仲良くしていたポーランド系の友人が急死して、親族はそれこそ母国にいるかどうかというエピソードや、親子と云えども家族があってなかなか馴染めないところや同じ子供でも結婚に失敗して、父親と話していて突然泣き出す息子の話など、どこか身につまされる話が多く出てくる。妻には先立たれた元教師である主人公は猫だけが家族。住み慣れた場所を追われ、行き着くのは西海岸というもの。途中、かつて結婚まで考えた元恋人の老いぼれた姿を見るというくだりもある。1974年のアメリカの世相とともに忍び寄る高齢化に対する警鐘みたいなところのある作品とみた。