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Channel: 趣味の部屋
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東京家族(製作委員会2013年)

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 山田洋次監督が小津安二郎監督の「東京物語」のオマージュとして製作した作品。小津作品の流れをほぼ踏襲しながら現代的な要素を取り入れている。
 
 最後に出てくる老夫婦がくらしているのは瀬戸内海に浮かぶ離れ小島。広島県内なのは「東京物語」と同じ。大崎上島というところで、実は長男が今赴任している島でもあってそういう興味もあって、上映時には見逃したののBDで鑑賞した。
 
 小津作品と異なるのは、最初から東京のシーンであり、老母は家に帰る前に東京で亡くなるというところ。小津作品で戦死した次男は鉄道務めの三男と合体したような人物に代わり、舞台芸術に従事、結婚を約束した女性がいる。オリジナルでは原節子が演じた未亡人は結婚前のうら若い女性に変じてある。その二人の出会いは東日本大震災復興ボランティアとして双方が参加して、意気投合したということになっている。また主人公が線香を上げに立ち寄る未亡人はやはり震災で老母を失くしているということも語られる。オリジナルでは職業があやふやだった主人公は元教師ということで、組合活動に熱心だったことが示されている。
 
 以上が気がついた相違だ。当然、小津作品とは全く別ものでどこか民青的な要素も感じられるのはこの監督ならではのところだ。そういえば、次男のフィアンセの蒼井優もどこか左翼系独立プロなんかに登場する人物の風情があった。
 
 やはり世代間の相違などを克明に描くのは同じだが、老母は次男の行く末に安堵して死ぬ。そうした何か希望のような要素があるのが小津作品とは異なる。小津の方は家族崩壊を予感させる暗さがあった。そこは二人の監督の資質の大いなる相違のように思った。

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