このペキンパー作品をようやく観た。公開時に雑誌でその評論は読んだことはあるが、映画自体はこの度が初めて。ペキンパー作品に興味を覚え始めたからだ。宇宙工学関係の仕事をするアメリカの若い数学者が治安の悪い母国を離れて妻の故郷であるイギリスの片田舎に引っ越すところから始まる。だが、地元住民は一癖も二癖もある人物で中には傍若無人な酔っ払いや不良たちがのさばっている。どうも妻とはかつて関係があったようなことが示唆され、やがて騒動に発展していく。偏見や差別などが綯交ぜになって、主人公たちに襲いかかってくる。平和主義者の主人公もついに...。
治安がいいはずのイギリスの田舎町は実はとんでもない地域だったという意外性やギャング団のような犯罪集団ではないが、犯罪者との境界線にいるような不良たちが登場するというペキンパーとしては少々違った人間関係が特徴のようだ。倒れる人間をスローモーションで見せるこの監督独特の描写はここでも健在。やるかやられるかになると本来の闘争本能を丸出しにする人間の姿は凄い。また妻が輪姦されるシーンは目をそむけたくなるほど不快なシーンだが、これも最後への伏線。冒頭の何に使うわからない罠の仕掛け道具同様に最後に繋がっている。カテゴリーとしてはアメリカ映画だかが、ロケやスタジオはイギリスであるし、キャメラマンもイギリスの人を起用している。「卒業」とはまるで違うダスティン・ホフマンの演技にもうなされる。