山田洋次監督の最新作を久しぶりに劇場で観た。原爆を素材にはしているが、戦後の日本人の姿の描写であり、直接の原爆糾弾の形にはなっていない。息子は亡霊となって現れるが、それは特別な意味があって現われたことがあとでわかる。
苦難にじっと耐える戦後の日本人たちが誠実なタッチで描かれていて、そこに感心もし感動もするがどうもその感動が大きくならない。一つには作劇がやや作為的すぎるのであろうか。結末も途中からある程度予測出来てしまうのも大きなマイナス要因だと思った。
小津監督への敬愛なのか、台詞に小津や山中の名前が出たり、息子の部屋には「淑女は何を忘れたか」のポスターが貼ってあったりする。そういうのを見るのはなかなか楽しい。