これは東宝初のカラー作品である。国産の富士フィルムを使用した「フジカラー」である。かつては褪色が著しく観ることができないと聞かされていたが、修復して再び鑑賞できるようになったようで、まずそれを喜びたい。ただし、スタッフ・出演者のクレジット及びエンドマークは別テイクで失われているらしい。
さて、発色は残念ながらどこか人工的で不自然ではある。また話自体は都会と農村部の相違を描いたもので、差ほど新味はない。「あにいもうと」に近い内容ではある。ただし、そこに不倫とか親子・兄弟の深刻な対立はなく、ごくこじんまりしている。山本嘉次郎監督は、戦前はいろいろな作品を発表し、戦争映画の企画も結構率先して取り組んでいた。その反動か、戦後はあまりこれといった作品がない。これも会社初ということで、大御所登場となったのではあろうが、傑作というまでには至っていない。