ソ連の国策映画でしかもスケールの大きさで有名な「ヨーロッパの解放」は長らく廃盤だったが、最近になって上のような何ともミスマッチなパッケージで再発売された。しかし、旧盤と異なり画質も向上し、4:3のレターボックスからスクーズ収録になっていて、今のハイヴィジョンテレビでも見やすくなるように改善されている。
内容は、第二次大戦をソ連が一人でドイツに打ち勝ったような描き方はやや疑問はあるが、割と客観的な部分もあって、映画的価値は大いにある。英米の首脳とスターリンの会談のシーンもあって、英米がソ連を信用していないのではないかと突き付けるところなどは迫真ですらある。もちろん裏工作は西側連合国側で真っ当なのはソ連という描き方ではある。実際はそれぞれがばかしあっているのであって、唯一ルーズベルト大統領だけが能天気という図式だったのではなかろうか。スターリンがチャーチルも含めて三人が力のあるうちは良いが、亡くなったり引退したら混迷するという台詞はまさにその後を暗示している。ルーズベルトは終戦を待たずに亡くなり、後任のトルーマンはソ連に対してかなり懐疑的な態度を取る。この映画でもヤルタ会談のシーンから既に冷戦の萌芽があることを描き込んでいるのが印象に残る。ベルリンの一番乗りの争いがこの後展開する。映画には出てこないが、極東でも同じような先陣争いがあって、それが原爆投下という現象に繋がる訳である。
正直、兵器の種類などおよそ知識がないし、ソ連軍の将校が字幕入りで登場しても、どれも同じように見えてしまう。スターリン、ヒトラー、ルーズベルト、チャーチル、ムッソリーニの他ジューコフ元帥まではわかる。一方、フィクション部分は中尉が主人公らしく、その恋人が従軍看護婦のようだが、これらはあまりどうでもよいような存在になってしまっている。要人たちのばかしあいにもっと重点を置いても良いのではと思ってしまわないでもない。