今、ディゴスティーニという出版社が東宝・新東宝による戦争映画のDVD付雑誌を発行している。この映画はそれによって、やっと初めてDVDになった作品である。内容が内容だけに、憚られていたのかもしれない。しかし、自分はこの作品を名画座の上映で観ている。ことに銀座並木座は何回も上映していたように記憶する。
夫が戦場で死亡したが、戦死ではなく軍法会議の決定で処刑されたので、恩給が出ない。それを不信に思った妻が真相を確かめるべく、関係者に聞いて廻るという内容である。内容はかなり辛いものがあって、決して愉快な作品ではない。だが、そこから自分に不都合なことを隠蔽して、弱い者に責任を転嫁して恥じない人間の業の深さがあぶり出される。こうしたことは戦場における犯罪行為なのだが、戦争という異常事態で感覚が麻痺してしまうのかと恐ろしくなる。こうしたことは敗戦国ばかりでなく、戦勝国にもあったろうと思われる。負けたから、いろいろと悪行として白日の下にさらされるケースが多かったのだろう。また、責任追及を恐れて証拠隠滅もあるから、真実がなかなかわかりづらい状況なのが、戦争中の行為なのだと思う。
深作欣二監督は本拠の東映では実録風のヤクザ映画を多く手掛けたが、他社で撮るとこうした反骨精神旺盛な作品を作る。出演者も東映作品とは異なる顔ぶれが多いから、様子も違う。「仁義なき戦い」の直前に発表した問題作だと思う。