先日、NHK第一の「午後のマリアージュ」という番組での「オレソング」というコーナーで、この「当世銀座節」が」かかっていた。我が家にある復刻CDには3分くらいしかないのに、なんと6分も流れていた。よく聴くと上下とがあって、多分25cmSP裏表に収まっていたのではないか。後半の「下」の方はラジオで初めて聴いた。
内容は当時の風俗に通じていないと判らない言葉が多い。下の部で「東京とは恐いところ、獅子と虎とが酌に出る」という言葉があるが、前者は今でも銀座にあるビヤホール「ライオン」のこと。「虎」とは「タイガー」というカフェがあって、永井荷風の「断腸亭日乗」なんかによく登場する。
音楽は当時流行っていたフォックストロットにアレンジされている。西條八十は銀座に行く連中を大いにからかった内容である。「銀座、銀座と通うやつぁ馬鹿よ」とのっけから挑発に出る。ラジオでこれを紹介したなぎら健壱によると、晩年に至るまで西條は銀座に立ち寄り難かったとか。
佐藤千夜子の歌唱は声は立派だが、唄っている歌詞が聞き取りにくい。東北訛りがあったらしく、それも手伝っているだろうが、音楽学校出の歌手らしい発音でもあるのかもしれない。バックのオーケストラはレーベルには「日本ビクター管弦楽団」とかいういかめしい名前だが、どうも同社の「ジャズ・バンド」のメンバーが主のような感じがする。編成もピアノと数種の打楽器、ベースラインはテューバのようだ。それにヴァイオリン1、トランペット1、トロンボーン1の音は明確に聴こえる。