これは黒澤プロの第一作となる作品。前作の「隠し砦の三悪人」が思わぬコストが嵩み、東宝社内で責任問題にまで発展したという。それで、黒澤明監督にも自覚してもらう意味もあって、黒澤プロ設立で映画を製作する方向になったという。これは「日本映画発達史」に書いてあったことである。
さて、娯楽時代劇から一転して、社会の不正を告発する内容の社会派的作品になった。山本薩夫監督も真っ青の内容ではある。ただ、主人公はややスーパーマン的な行動は現実離れのような気がするし、結局は不正はそのまま温存される形で終わる。何か黒澤監督は感情的に怒っている風もあって、その分説得力が削がれているのは、残念に感じる。