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Channel: 趣味の部屋
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配達されない三通の手紙(松竹1979年)

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 エラリー・クインの「災厄の街」(Calamity Town)を日本に翻案して制作された野村芳太郎監督作品。松本清張ではなく、アメリカの作家の作品の映画化というのが、本作の特徴。脚本は新藤兼人監督が担当している。ミステリーとして面白さもあろうが、人間の性格からくる悲劇といったらよかろうか。
 
 地方銀行のオーナー頭取はその地の名家の主で、傲慢な権力保持者だ。それを佐分利信が扮しているから、この5年前の山本薩夫監督の「華麗なる一族」の路線である。ただし、銀行家よりもこちらは一家の長の部分のところが殆どである。原作は架空の街だが、映画では山口県の萩市となっている。そうしたところに地銀の大きなところがあるのは、ちょっと違和感はある。何故、県庁所在地にしなかったのか、と思ったりもする。
 
 さて、映画の物語の中で結婚する若い夫婦だが、男の方は何を考えているのか、わからない少しはっきりしない人物。女は世間知らずでこれもはっきり意思表示をしないタイプ。しかし、根は頑固なところのある人物である。そうしたところへ、訳ありの男の妹と称する女性が出現して、パーティの場で毒殺されてしまう。そんなような筋である。謎を解くといってもそうトリッキーな感じはせず、登場人物の心象の描写が中心となる。ただ、「砂の器」のような魅力はあまり感じられないのは、どうしたことか。

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