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Channel: 趣味の部屋
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影武者(黒澤プロ・東宝映画1980年)

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 黒澤明監督が5年の沈黙を破って発表した時代劇。前作の「デルス・ウザーラ」はソ連での製作だったから、日本映画としては「どですかでん」以来10年ぶりの黒澤作品となる。そして、実在する武将を扱った唯一の作品でもある。学生時代最後の年に、新聞にオーディション応募の広告が大きく掲載されていたのを思い出す。我こそと思う人は向かったに違いない。また、当初主演予定の勝新太郎は監督との確執で降板、仲代達矢に代わった。しかし、明らかに勝のキャラクターを想定したようなところもあって、当初の配役だったらどうなっていたろうと思ったものだ。他に大滝秀治と黒澤作品常連の志村喬と藤原釜足がオーディションではない人たち。殊に後者の二人は最後の黒澤作品への出演となった。

 さて、アメリカ映画「トラ・トラ・トラ!」での挫折から、黒澤監督の作風は変化があったように感じる。どこか抽象的な描写があり、当初のギラギラしたものや心地よいテンポ感は影を潜めてしまっているような感じだ。「赤ひげ」までの場面転換にワイプを使用したりして、テンポを上げるようなところはない。「どですかでん」あたりはそう違和感がなかったが、本作は黒澤作品独特の緊張感がやや弛んでいるように感じてしまった。配役も素人も含むオーディション中心のものになっていて、台詞廻しもやや不満を感じてしまうのだ。晩年の黒澤作品は買わないという人も少なくないのはここらあたりが起因しているのかもしれない。

 今手許には、通常の国内盤のDVDと米国産のBDがある。後者には配給元の20世紀フォックスのロゴが出てくる。しかし、海外版ではなく、ノーカットの版であった。

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