この映画はウォルトンが音楽を付けているというので、興味を持った。音楽だけはいろいろな録音では知っていたが、その大元の映画がDVDになっていることを知って、さっそく観てみた。
開発者として矜持と先見性を備えたのが、この戦闘機の生みの親である。彼は過労がたたって、戦闘機が採用されるのを見届けるかのようにして亡くなってしまう。これを「風と共に去りぬ」でアシュレー役で有名なレスリー・ハワードが演じている。細面のやや神経質そうな顔が役にぴったりだった。レスリー・ハワードは監督も兼任している。そして、友人でテストパイロットに扮するのがデイヴィッド・ニーヴン。まさにジョン・ブル精神を具現化したような映画だった。それにそってウォルトンは格調高い音楽を付けている。タイトルバックはコンサート用作品では前奏曲と呼ばれるもので、フーガは工場内のあわただしい様子を描いた音楽だった。このようにどのような場面の音楽を知ると音楽そのものの理解は進む。
なお、レスリー・ハワードはポルトガルから本国へ帰還する途中、搭乗機がドイツ軍によって撃墜されて非業の死を遂げている。この映画の2年後のこと。彼の運命を暗示しているような内容ではあると思った。