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Channel: 趣味の部屋
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母のおもかげ(大映東京1959年)

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 名匠・清水宏監督の遺作となった作品で、ここでも得意の子供を扱った作品である。上の写真はスティルではなく、撮影風景を写したスナップである。ハティングを被った人物が清水監督だという。主人公である男の子が父親にグローブをねだるが、新しい母親にお願いするようにという場面のようである。
 
 ともに連れ合いを亡くして、子持ち同士が再婚するが、男の連れ子の男児はその女性に複雑な感情を持つ。甘えたいが、亡き実母に対して後ろめたさを感じているようで、反抗的態度を取ったりする。それを周囲の大人は気付かない。しかし、継母が学校に呼び出されて、担任の教師から本人の作文を見せられるに及んで、絶望的になって、娘を連れて家を出ようとする....。かいつまんでいうとこんな筋立てである。
 
 晩年の清水作品にはあまり期待していなかったが、これは原点に戻ったような出来である。主人公が継母のかけてある洋服におかあさんと甘えようと懸命に努力する姿は、圧巻であった。戦前の「風の中の子供」でやはり主人公の男児が警察に引っ張られていった父親を思い、一人泣くシーンを思い出した。やはり、子供を扱うとうまい監督である。それに大人たちも自然な演技をやっていて、戦前の棒読みの台詞でないところもいい。これは松竹と大映の会社のカラーの相違もあるかもしれない。監督と旧知なのは、大山健二という脇役くらいだろう。新東宝の「しいのみ学園」あたりから、こうした演技的な要素も巧みに取り入れたような観はある。主人公の毛利充宏はその「しいのみ学園」で肢体不自由児を熱演した子役だった。

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