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Channel: 趣味の部屋
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裏切者は地獄だぜ(小沢茂弘監督・東映京都1962年)

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 1962年12月23日の封切りの作品。同日では大映の川島雄三監督作品「しとやかな獣」が封切られている。本作のように旧態依然として娯楽作と実験精神旺盛な作品が隣り合わせに上映されているという状況はなかなか面白いと思った。
 
 さて、内容は実にマンガ的なものである。そして洗練とは程遠い映画ではあるが、ある種開き直りみたいなところがあって、それはそれでたいしたものだと逆に感心してしまう。主題歌「海千、山千、一騎当千....」といったちょっと人をからかうような歌が面白い。千恵蔵扮する二挺拳銃の男の「偽名」が海山千吉というのも面白い。鶴田浩二扮する男の「偽名」も「キューバのジョー」。同年起きた「キューバ危機」のもじりであろう。扮装は現代劇だが、京都の撮影所の時代劇と何ら変わらない。主人公たちは実は官憲だったりするのは、このシリーズでよくあるパターンである。タイトルに「地獄」の言葉のつく千恵蔵主演のシリーズもこれがどうやら最後の作品らしい。巷間、黒澤明監督のリアリズム時代劇や山本薩夫監督のこれまたリアルで社会性のある「忍びの者」などが出てきているにつけ、こういう内容のものは観客が観なくなったということだろう。むしろ、こうしたものはテレビの方へ継承されていったのではなかろうか。
 
 1962年から64年という時代は過渡期なのかもしれない。戦前からスターは亡くなったり、第一線を退き始めた頃と重なる。

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