大川橋蔵の人気シリーズの1本。「十番勝負」に続き、1961年には第1部と第2部が続けて制作されている。しかし、この後の第3部の完結編は1年間が空いて1963年に公開されている。1961年と言えば、東宝で黒澤明監督が「用心棒」を発表して、俗にいう「三十郎ショック」を起こして、東映の時代劇の牙城が崩れかかった年であることを考えれば、この空白は関連があるのかもしれない。
橋蔵の殺陣は三船のような豪快なそれとは違う。同じ東映の錦之助とも違う。どこか危うそうで崩れそうな感じである。またどこかまだ舞踊的な感じもするから、スピーディで多少リアルな東宝あたりものとはずいぶん印象が違う。話は「剣の修行」であって、そのためには他のものは全て犠牲にしても構わないという姿勢は余裕がない。そこらあたりは中村錦之助主演の内田吐夢監督の「宮本武蔵」とも肌合いが異なる。この第2部では葵新吾の師匠である庄三郎先生が殺されてしまい、話が一つ終わったような段階である。敵役の平幹二朗はニヒルで憎々しいが、これは後の「三匹の侍」で生かされてくるような感じである。新吾は剣の大先生(大河内伝次郎)にもう少し余裕を持てと諭されるのだが、まさに未熟さそのものの剣士であることが描かれていて、面白い。