今、シューマンの交響曲第3番「ライン」の譜面を渡されていて、何回か練習にも参加したので、興味を持っている作品である。その譜面というのが普段よく使われていると思われるブライトコプフ社のではユニヴァーサル出版というウィーンの会社のもの、すなわちマーラー版である。既に録音でもシャイーがわざわざ「マーラー版」と銘打って出しているが、既存の古い指揮者はどうなのかと思って聴いてみた。そのまず手始めがブルーノ・ワルターである。
1941年にニューヨーク・フィルを振って、米コロムビアに録音したものである。この曲についてはこれ一つしかない。ナチスの迫害から逃れ、回り道した結果やっと大西洋を渡って、米国に定住しようと決めた頃のもの。年代的にはアメリカ合衆国が参戦する直前の緊迫した時代でもある。
LP時代にもまた今手許にあるCD(上の写真のもの)にも特に版についての断り書きはない。しかし、マーラーの弟子を任じるこの巨匠はどういうもので演奏しているか、今まであまり気にしていなかったのだが、耳をそばだていた。そうするとやはりマーラー版にかなり近いとわかった。殊に自分のやる楽器の動きでマーラー版の特徴の部分ははっきり聴き取れた。やはり師匠のものを採用していたのかと妙に納得したが、さらに詳しい方の解析によるとこのマエストロ独自の箇所もあるようだ。この曲は殊に金管奏者にとってはかなり難しい曲ではある。むやみに音が高かったりする。第4楽章のホルンや1stトロンボーンなどはかなり苦しそうだし、一部で音を外しているのが聴こえたりする。大学時代、プロでもしくじる大変な曲ということでかなり脅された曲でもあった。概ね、弦楽器と同じ動きをしているのだが、音量拡大装置として金管はあるのだという面もあって、いささか面白くない部分もあるのは事実だ。