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Channel: 趣味の部屋
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100万人の娘たち(五所平之助・松竹大船1963年)

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 CSの衛星劇場で「蔵出し映画」のコーナーがあって、その1本として放映されていた。この作品はフィルムセンターに所蔵されているが、16mmでの所蔵とあった。どうも1963年の作品ながら、まともな形で残っていないのではと危惧していたが、この度の放映は極めて良好な状態のプリントでやってくれて、安堵したものである。
 
 宮崎県の観光バスガイドを主人公に据えたご当地ものの映画である。大船得意の「小市民映画」の系譜の作品。五所監督だから、その辺りは手馴れたものだろうが、逆をいうと新味に乏しいということであろう。日本初のトーキー作品を手がけ、戦前は才気煥発な監督だったのに、この時期になる少し古めかしい作品ばかりが並んでいるのは残念に思ってしまう。
 
 ただ、救いは登場人物に心の葛藤が描かれていることだろう。一人の男性を姉妹が慕ってしまい、悩む姿。一方は結婚にこぎつけるも病魔に襲われて亡くなってしまう。そんなところが劇的起伏があって、まだ見られる。それから女性の社会進出もまだほんの入口的な描写だが、付け加えられていて興味深い。ただし、本筋にとってつけたような印象で必ずしも成功とは言い難い。50年以上も経過してロケ地も変貌していよう。新婚旅行のメッカと言われていた時代だが、今はそんなことを言う人はいない。今は女優として活躍している野際陽子がまだアナウンサーとして活動していた姿が少し出てくる。NHKを辞めてフリーになった頃。そして、相手になっているのが藤原あき。この人の名前を出してもわからない人が多くなったが、NHKのクイズ番組の回答者として出演していた女性文化人の一人だった。オペラ歌手藤原義江の夫人だった。このシーンは第一線で女性が活躍している例としてヒロインが東京見学している時に出てくる。昭和の懐かしさは満載ではあるが、いずれも取ってつけたような印象は同じである。

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