これは宇津井健の映画デビュー映画である。この人が亡くなった折に、その一場面がニュースに使われていた。現存のプリントは「草を刈る娘」になっている。リバイバル時に変えられたそうだが、石坂洋次郎の原作と同名にしたというもの。しかし、新東宝は改題されたものが極めて多い。経営破綻後、テレビ放映用に権利を売却しただけでなく、改題したりカットしたりとあまり保存状態はよくないようだ。
宇津井健は俳優座養成所出身で、まだデビュー前に黒澤明監督の「七人の侍」に同僚の仲代達矢らと通行人の役で出たとされる。これは「七人の侍」に出たシーンの撮影が本作よりも前だったということも考えられる。
農村の青春ものだが、宇津井の師匠格の俳優座ベテラン(東野英治郎、千田是也、小沢栄、松本克平)が大勢出演していて、やや左翼独立プロ的な感じもするのだが、中川信夫監督はそつなくまとめているという印象だ。