石井輝男監督の新東宝時代の刑事アクションものである。これは宇津井健が刑事に扮して、風俗営業に絡む犯罪を暴くものだ。敵役には天知茂が扮するが、当時はこうした卑劣漢の役が多かったようだ。もっと時代が下って、大映や東映の作品を経て、テレビでこの人は二枚目の役をやるようになる。また、チンピラ役で菅原文太が出演しているが、これが映画デビューということになる。その相棒役は大友純。同時期なら中川信夫監督の「東海道四谷怪談」での按摩宅悦が有名だが、こちらは戦前からのキャリアのあるベテラン。この人はNHKの「おかあさんといっしょに」に出ていたのを思い出す。視聴者の子供が書いた絵を任意に押えてそこから物語に発展するという番組だった。内容に比べ、クセのある顔がアンマッチで記憶に残っていた。
この映画は文献的には71分の長さということになっているが、今観られるのは60分弱のもののようだ。損傷の激しい部分があって、その部分はカットされてしまったとある。残念なことだが、それでも犯罪映画の魅力は減っていないのは石井監督の手腕であろう。