Quantcast
Channel: 趣味の部屋
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1029

山河あり(松山善三)(松竹大船1962年)

$
0
0

 山河あり

  松山善三監督の第2作にあたるもの。前作が東宝系列でのものだったが、今回は古巣の松竹での作品。師匠の木下恵介の企画ものである。スタッフはキャメラマンの楠田浩之を始め、木下組で固めているのが特色である。
 
 本作はハワイに移住して苦労する日系人の物語である。移住後は人間扱いされず、やっと安穏な生活を手に入れたと思ったら、祖国と移住先の国アメリカとが戦争状態になって、股裂き状態に苦労するという内容。ここで、気を惹くのは親子の論争である。二世たちはアメリカ市民であるが、親たちは日本への思いが強い。日本を無条件に礼賛する姿勢に反発する。また、学校では日本の「蛮行」が教えられて、自分らは肩身の狭い思いをしているということを訴えるのだ。ここで思ったのは親たちの思いは、今の日本でしきりと言われている「まともな国」を主張する内容とほぼ似ている。一方、二世たちはリベラルか、もしくは左翼的な発想に似ている。この映画の脚本は松山善三と久板栄二郎である。このシナリオの底流は久板の思いが強く反映されているような気がする。この人の脚本はかなりリベラル思考で黒澤明監督の「わが青春に悔なし」や木下恵介監督の「大曾根家の朝」などを担当している。台詞の中で、大陸で日本軍のやっていることは蛮行であることをはっきり言わせている。
 
 今日的な議論をかなり包含していて、なかなか興味ある一作と言って良いだろう。ただ、何故かなかなか上映されていないようであるのは残念である。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1029

Trending Articles