山口百恵の文芸作の第5弾。全て再映画化というのが、彼女の文芸映画の特徴ではある。脚本に衣笠貞之助の名前があることから、衣笠監督が大映で山本富士子と本郷功次郎の主演で撮った「お琴と佐助」を底本にしていると思われる。残念ながら、衣笠版はこの時点で未見である。配役表を見ると春松検校役の中村伸郎が共通しているのがちょっと目を惹いた。
アイドル映画ではあるが、割と定石通りの制作姿勢のようだ。衣装も三松の協力も得て、明治時代の風景もかっちり再現している。大阪の話なのに、この作品も含めて全て東京の撮影所で撮られているのも面白い。本作はやはり日活撮影所を使用、スタッフも日活で活躍した人ばかりであり、脇役も日活のロマン・ポルノで活躍した女優などが出ている。当時の日活は自社のマークはロマン・ポルノを作る一方、こうした他社のOEM作品で一般映画を製作したいたことがわかる。
内容はちょっと考えられないくらいのSM的内容である。男は何故そこまで女のわがままを受け入れてしまうのか、多分今の若い人たちにはわからないだろう。自分自身はとてもできることではない。本作を含めて、この原作の映画化作品では、1935年の「春琴抄 お琴と佐助」(島津保次郎監督・田中絹代、高田幸吉)と1954年の「春琴物語」(伊藤大輔監督・京マチ子、花柳喜章)を観ている。今は上述したように衣笠版を観てみたいと思っている。