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Channel: 趣味の部屋
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カルロス・クライバーによるマーラー:大地の歌

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● マーラー:大地の歌 [57:21]
 第1楽章:大地の哀愁に寄せる酒の歌 [08:30]
 第2楽章:秋に寂しき者 [09:02]
 第3楽章:青春について [02:55]
 第4楽章:美について [06:29]
 第5楽章:春に酔える者 [04:07]
 第6楽章:告別 [26:18]

 クリスタ・ルートヴィヒ(アルト)
 ヴァルデマール・クメント(テノール)
 ウィーン交響楽団
 カルロス・クライバー(指揮)

 録音時期:1967年6月7日
 録音場所:ウィーン、ウィーン コンツェルトハウス
 録音方式:モノラル(ライヴ)
(HMVのコメント)
この演奏会は、ウィーン芸術週間のマーラー特集の一環として企画されたもので、バーンスタインやクーベリック、マゼール、マデルナ、プレートル、アバド、ベームといった指揮者たちによって、交響曲全曲と管弦楽伴奏の歌曲が演奏されたという大規模なプロジェクトの一翼をになうものでした。
 当時のクライバーは、オペラを中心に活躍していたとはいえ、まだ知名度が低く商業録音もゼロという状態でしたが、オペラの現場ではすでに評判となっており、その実力を知っていた演出家のオットー・シェンクの薦めで、ウィーン・コンツェルトハウス協会の事務局長ペーター・ヴァイザーが、シュトゥットガルトを訪れて直接クライバーに出演を依頼したという経緯で実現したのがこのコンサートでした。オットー・シェンクさまさまです。
 指揮を引き受けたクライバーは、勉強のため、『大地の歌』のエキスパートで父の友人でもあった指揮者オットー・クレンペラーを訪ねるためチューリヒに向かいます。そこで演奏や歌手の人選についてアドバイスを受け、クレンペラーのお気に入りでもあったテノールのクメントとアルトのルートヴィヒを起用しておこなわれたのがここでの演奏ということになります。
 記録音源レベルの音質のため、ディテールの判断はつきにくいものの、全体の流れを形成する起伏の大きさや各パートの扱いを知ることは可能で、速めのテンポの中にさまざまな情報を詰め込むクライバーの凝縮度の高いスタイルと、情緒志向にならないクレンペラー的な解釈の共存した素晴らしい演奏を味わうことができます。スペシャリスト、ルートヴィヒの歌唱も万全ですし、クメントの力強く野趣に富む歌も作品にふさわしいと言えると思います。
 レパートリーを極限まで切り詰めたあろカルロス・クライバーがマーラーを振るとは、珍しい録音が出たものだというのが最初の印象だった。いささか珍品を聴く趣向かと思って、プレヤーにかけてみると、いささか録音が古くてモノラルであるのは残念だが、すっきりとした音で聴ける。いくぶん、早めで即物的なのは上のコメントにもある通りクレンペラーからのサジェスチョンがあるかもしれない。それにしても楽器の扱いなどは素晴らしく、かなりの力演だったのではないか。擁した歌手たちの素晴らしさも多分に貢献していると思う。1967年当時、クライバーはまだ無名に近い存在で、レパートリーの絞り込みの前の時期だったろう。しかし、CDの英文の解説には、二度とマーラーは取り上げなかったとあった。彼にはソリの合わないものがあったのかもしれない。ただ、死後製作されたドキュメントによると、ブルックナーなどにも結構詳しく、やろうと思えば何でもできる状態だったという。公には演奏しなくても、あらゆる曲を熟知していたというのは、本当のところだと思う。

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